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インヒアレント・ヴァイス

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(原題:Inherent Vice 2014年/アメリカ 149分)
監督・脚本/ポール・トーマス・アンダーソン 製作/ジョアン・セラー、ダニエル・ルピ、ポール・トーマス・アンダーソン 原作/トマス・ピンチョン 撮影/ロバート・エルスウィット 美術/デビッド・クランク 衣装/マーク・ブリッジス 編集/レスリー・ジョーンズ 音楽/ジョニー・グリーンウッド
出演/ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、キャサリン・ウォーターストーン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ、マーティン・ショート、ジェナ・マローン、ジョアンナ・ニューサム、エリック・ロバーツ、ホン・チャウ

概要とあらすじ
「ザ・マスター」のポール・トーマス・アンダーソン監督とホアキン・フェニックスが再タッグを組み、米作家トマス・ピンチョンの探偵小説「LAヴァイス」を映画化。1970年代のロサンゼルスを舞台に、ヒッピーの探偵ドックが、元恋人の依頼を受けたことから思わぬ陰謀に巻き込まれていく姿を描いた。元恋人のシャスタから、彼女が愛人をしている不動産王の悪だくみを暴いてほしいと依頼された私立探偵のドック。しかし、ドックが調査を開始すると不動産王もシャスタも姿を消してしまう。ドックはやがて、巨大な金が動く土地開発に絡んだ、国際麻薬組織の陰謀に引き寄せらていく。共演にジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ。(映画.comより



元カノへの未練と60年代への郷愁

おそらく多くの人が
「わけわからん!」と意気投合して
近くにいい店があるんだけど行かない? なんて誘いに
わらわらとついていき、違う映画の話で盛り上がるかもしれない、
『インヒアレント・ヴァイス』です。

当然(!)、僕は読んだことがありませんが
トマス・ピンチョンの原作からしてわけがわからない内容だそうで
その原作に忠実だという本作が
単純明快にわかりやすいはずなどないのです。
ポール・トーマス・アンダーソン
映画化困難といわれる原作に果敢に挑んだわけですが
そもそも物語の辻褄に無頓着なPTAが監督したのですから
なおさらです。

いつも半分ラリっている
私立探偵ドック(ホアキン・フェニックス)のもとに
おめかしした元カノ・シャスタ(キャサリン・ウォーターストーン)
突然現れ、
シャスカが愛人をしている不動産王ウルフマン(エリック・ロバーツ)
その妻&妻の愛人とのあいだで
なにやら怪しい陰謀が渦巻いているから解明して欲しい、と
依頼にきます。
渋々なのかノリノリなのかわからないけれど
ドックは調査に乗り出すのです。

ていうのはいいんだけど、
次から次へと登場人物が現れて混乱必至。
風俗店に聞き取りに行って頭をバットで殴られたドックの前に
刑事のビッグフット(ジョシュ・ブローリン)が現れ、
誤認逮捕されると、弁護士のベニチオ・デル・トロが登場。
(いや、その前にドックが電話で情報を得ていた
 化粧に四苦八苦するババアは何者?)
ドックの愛人の検事ペニー(リース・ウィザースプーン)が絡んで
さて、危険な疑惑の真相へと進んでいくのかと思いきや、
直接関係ない元シャブ中の女から電話がかかってきて、
サックスプレイヤーの旦那が死んだんだけど
死んだとは思えないから探して欲しいという依頼が……

もう、ちっとも問題の真相に近づかない、というか
なにが問題だったかもわからなくなるのです。

断片的な出来事は
どこかしら謎解きの鍵になりそうな気配を漂わせはするものの、
どんどんヒントの枝葉が広がるだけで
一向にひとつの答えに向かおうとしない
のです。
映画の最後になって絡み合ったすべての糸が解きほぐされて
なるほど、そういうことだったのか! と
膝を打つことはありません。
さらには、ナレーション(これはドックの今の彼女?)で
占いを盛り込んでくるので余計に混乱します。

正しい解釈は、
どこかの立派な人が立派にやってくれるのに期待するとして
このわけのわからない映画を僕なりに考えてみると、
すべてがドックの妄想もしくはラリってみている幻覚のような
気がします。
最初におめかししたシャスカが登場するのも
ラスト近くで行方不明だったシャスカが
かつてのようなTシャツとビキニ姿でふらっと現れるのも
ドックがソファで寝ているときでした。
ドックの頭部に登場人物たちが巣くっているような
レインボーカラーのメインビジュアル
には
これはドックの頭の中での出来事だという意味も
含まれているのではないでしょうか。

とてつもない巨大組織のような「黄金の牙」
船の名前→密輸組織→歯科医の組合と変化し、
あいまいなまま終わります。
妄想が肥大すると、どんどんメタな陰謀論へと邁進するのは
よくあることだし、
結果的に歯科医の組合だったとわかっても
入れ歯にした元シャブ中の女がオーバーラップしてきて、
なんとか因縁づけようとするのも、さもありなん。
なにしろ、登場する女性たちが
ことごとく過剰にエロい格好をしてる
んですから
これはもう、ドックの妄想が反映されていることの証しでしょう!

じゃあ、これはただの夢オチなのかといえばそうではなく、
元カノ・シャスカへの未練を捨てきれないドック
願望が投影されているような気がします。
別れた彼女への想いを捨てきれないドックは
あいつ、いまごろどうしてっかな〜
困ってるんなら助けてやるのにな〜
ヨリを戻すわけじゃないけど……と
ハッパで朦朧とした頭の中で繰り返し唱えているのではないでしょうか。
(自分のことを言っているようで、やばい……)

さらには、
マンソン・ファミリーやブラック・パンサーのエピソードが登場して
夢と希望しかないように思われていた
60年代のフラワー・ムーブメントが終わって
どんどんきな臭い方向へと進んでいくアメリカをも重ねています。
ドックがやたらと時代遅れのヒッピーだとバカにされるのは象徴的で
これより先は陰鬱な未来しか待ち受けていないと思われる70年代からの
60年代への郷愁を感じます。

元カノへの未練にしろ、60年代への郷愁にしろ
それはすでに「内在する欠陥」として存在していたものであり、
「インヒアレント・ヴァイス=避けられない危険」
必ずしや訪れるのでしょう。

ま、とはいえ
全体的にコメディ仕立てなのは間違いないので
スカした会話に笑っていればいいような気もしますが
おそらくはもっともドッカーンと笑いが起こるはずのシーンは
すべて予告編に含まれている
ので
あのシーンだなとわかっていた僕はちっとも笑えませんでした。
もっとも、僕が観たときの映画館の笑いの閾値は非常に低く、
ラスト近くでビッグ・フットがハッパを食べるシーンで
ケラケラ笑っているやつが多くいましたが
いや、もう、これは笑うとこじゃないと思うけど。

狂言回しドックを翻弄するそれぞれのエピソードや
数々のキャラクターたちは魅力的でしたが
ひとつの結末に収斂されないので(もちろん意図的に)
物語に引き込まれてカタルシスを感じる類の映画ではありません。





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