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ミスター・ノーバディ

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(原題:Mr. Nobody 2009年/フランス・ドイツ・ベルギー・カナダ合作 137分)
監督・脚本/ジャコ・バン・ドルマル 製作/フィリップ・ゴドー 撮影/クリストフ・ボーカルヌ 美術/シルヴィー・オリヴィエ 衣装/ウラ・ゴーテ 編集/マティアス・ヴェレス 、スーザン・シプトン 音楽/ピエール・ヴァン・ドルマル
出演/ジャレッド・レト、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファン、リス・エバンス、ナターシャ・リトル、トビー・レグボ、ジュノー・テンプル

概要とあらすじ
「トト・ザ・ヒーロー」「八日目」で知られるベルギーのジャコ・バン・ドルマル監督が、人生の選択によって生じるさまざまな可能性を、複数のパラレルワールドで描くファンタジードラマ。2092年、科学技術の進歩により不死が実現した世界で、唯一命に限りのある118歳のニモは、死を目前にして過去を回想する。最初の選択は、9歳だったニモが別れた両親のどちらについていくかで始まった……。主演は「レクイエム・フォー・ドリーム」のジャレッド・レト。(映画.comより



役に立たない「たられば」と「そもそも論」

パラレル・ワールドを題材にした映画は数あれど、
これほどまでに細分化したパラレル・ワールドを
片っ端から表現しようと試みた作品はないかもしれない
『ミスター・ノーバディ』

「ハトの迷信行動」に始まって
「バタフライ効果」「超ひも理論」「エントロピー理論」ときて
最後は「ビッグクランチ(宇宙大収縮)」で幕を閉じる本作は
難解というより面倒くさい作品です。
人生における分岐のバリエーションを
可能な限り再現した脚本と演出には驚かざるを得ず、
それぞれのシーンがガンガンに交錯するのに
さほど物語の流れを見失わない編集は
素晴らしいとしかいいようがありません。

でも……いけ好かない。
監督・脚本のジャコ・バン・ドルマルの発想や
完成までに10年の歳月を費やしたという苦労には
敬意を惜しまないけれど
人生を達観したかのような、まるで神のような視点が
気に入らないのです。

人類が不老不死を手に入れた未来で
死ぬことができる最後の人間となった
118歳のミスター・ノーバディ(ジャレッド・レト)
自分の人生を振り返ります。
不老不死の世界では、タバコも肉食もセックスも禁じられていて
死の恐怖が取り除かれた代わりに
面白くも何ともない世界だと揶揄し、
やがて訪れる死までの限られた時間の中で
さまざまな選択を重ねること
こそが
人生の醍醐味だといわんとしていると仮定すれば、
それならなぜ、人生における分岐のバリエーションを
逐一描いてみようとしたのでしょうか。
僕には、監督が
最良のシナリオを選択することを放棄したように
思えてしまうのです。

ミスター・ノーバディ≒ニモの人生の重要な分岐は
ほぼほぼ恋愛で占められていますが
赤い服のアンナ、青い服のエリース、黄色い服のジーンのうち、
アンナと結ばれる結末だけがニモの望むハッピーエンド
それ以外は全部バッドエンドというのも
面クリするまでなんどもリセットしているようで
だからどうしたという気になります。
ジャーナリストに「一体あなたの人生の真実とは何だったのか」
と聞かれたミスター・ノーバディは
「私の生きたどの人生も真実だ。どの道も正しい道だった」
と語りますが、
それならなぜ、アンナと結ばれる結末だけを
ハッピーエンドとして描くのでしょうか。

さらに分岐は、両親の出会いから先祖にまで至り、
ついには精子が卵子にたどり着くかどうかにまで遡ります。
まあ、そうだけど。そうかもしれないけど。
なんの役にも立たない「そもそも論」とは
このことでしょ。
ティッシュにくるまれたアイツらのことに思いを馳せるのが
たとえ一興だったとしても
だからどうしたという話なのではないでしょうか。

最後には、
「ビッグクランチ(宇宙大収縮)」によって時間が逆行し、
彼にとってもっとも大事な人生の分岐点である
両親との別れのシーンへと立ち返るのです。
ミスター・ノーバディ≒ニモは
あの場面から人生をやり直すつもりでしょうか。
ずるいよね。

ニモ=「Nemo」はラテン語で「Nobody」だそうで、
ニモがミスター・ノーバディの妄想の中で生きているのか、
ミスター・ノーバディがニモの妄想なのか、
はたまたその両方なのか、はっきりしませんが
そんな謎解きはどうでもよく、
人生の「綾」を鼻で笑ってるような感じがして
どうにもいけ好かないのですよ。

人生の「たられば」は考えても仕方がないからこそ
選択によって導かれた現実に価値を見いだすべきで
もしもあのとき○○だったらなんていう妄想はいくらでもするし、
後悔もするけれど、
それ以上のものではなく
選んだ人生だけが自分の人生なのではないでしょうか。

ま、ファンタジーなのはわかっているつもりですが
○○論を多用して講釈を垂れる高慢ちきな態度が
たとえ論理的に正しくても、好きになれません。
主人公が安いジーパンを買ったせいで、
工場をクビになった男がゆで卵を作ったときの蒸気が……
という、
風が吹けば桶屋が儲かるみたいなエピソードにいたっては
鼻白むだけで、そんなこというなら、
高いジーパンを買ったときバージョンもやれよと思うし、
主人公のたった1着のジーンズ選びが、
メーカーの工場閉鎖にまで影響を及ぼしていると考える発想には
傲慢さすら感じます。

やっぱりね、
いつまでも死なない人生だったとしても
何度でもやり直せる人生だったとしても
どっちも頑張って生きようなんて気にはならないだろうし、
どっちもつまんないやね。





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