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野いちご

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(原題:Smultronstallet 1967年/スウェーデン 89分)
監督・脚本/イングマール・ベルイマン 撮影/グンナール・フィッシャー 音楽/エリック・ノードグレーン
出演/ビクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン、グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、ビビ・アンデショーン、グンネル・リンドブロム

概要とあらすじ
スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが、ひとりの老人の1日を通して人生のむなしさや孤独をつづり、ベルリン国際映画祭金熊賞をはじめ数々の映画賞に輝いた傑作ドラマ。名誉博士号を授与されることになった老教授が車で授与式場へと向かう道のりを、老教授の回想や悪夢を織り交ぜながら描いていく。老教授を演じるのはサイレント期の名監督として知られるビクトル・シェストレムで、本作が遺作となった。2013年、デジタルリマスター版でリバイバル公開。(映画.comより



人生の最後に訪れる孤独という罰

アンドレイ・タルコフスキーが
オールタイム・ベストの一本として挙げたといわれる
『野いちご』
イングマール・ベルイマン監督作のなかでも
かなり接しやすい作品なのではないでしょうか。

78歳になる医者であり科学者の
イーサク(ビクトル・シェストレム)
自他共に認める偏屈者。
人付き合いなど疎ましいだけと考えているイーサクは
情よりも理屈を優先して生きてきました。
彼の言動は決して間違っているわけではないのですが、
他者に対する配慮に欠け、
いけ好かない人間だと思われています。

それでも医者および科学者としてのイーサクは
長年の功績を讃えられ、
ルンド大学で名誉博士号を授与されることになっています。
その授賞式に旅立つ前の晩に
イーサクは奇妙な夢を見るのです。

人気のない街、針のない時計、のっぺらぼうの男、
霊柩車に積まれた棺から聞こえてくる赤ん坊の泣き声、
そして、蓋の開いた棺から出てくるのは年老いた自分。

なにもかもが死をイメージしています。
嫌な予感を感じたイーサクは
急遽、授賞式に飛行機で向かう予定を取りやめ、
車で移動すると言い始めます。
授賞式にはイーサクの息子、
エーヴァルド(グンナール・ビョルンストランド)
出迎えに来ることになっていましたが
イーサクの家に滞在していたエーヴァルドの妻、
マリアン(イングリッド・チューリン)が同行することになり、
現実と幻想の入り交じった、
イーサクの人生を振り返るロードムービー
始まるのです。

マリアンは義理の父親であるイーサクに
一定の敬意は示しながらも、
彼の冷淡さを好きになれないと打ち明けます。
マリアンは、授賞式へと向かう旅(=人生)のなかでの
擬似的なイーサクの妻の役割ではないでしょうか。
途中、イーサクがかつて過ごした屋敷に立ち寄って、
野いちごを見つけた
ことから
イーサクの回想はより深く具体的になります。
その回想の中では、
かつて婚約していたサーラ(ビビ・アンデショーン)
チャラいイーサクの弟の色気に惹かれていくさまが
描かれます。
耳が遠い父親や双子の姉妹などのキャラクターが
面白いアクセントに。

我に返ったイーサクの目の前にいたのは
サーラと名乗る見知らぬ少女(ビビ・アンデショーン=二役)。
いわずもがな、かつての恋人サーラの分身です。
イーサクの車に同乗することになったサーラは
ふたりの男を連れていて、
この若い3人組は、イーサクの過去を投影しつつ、
未来の希望を象徴する存在です。
ふたりの男はサーラを取り合っていて、
かたや信仰に篤い男と、かたや神を信じないリアリスト
神の存在についての議論を戦わせます。
この3人組の初々しさは
時計の針がなくなってしまう前の希望に満ちあふれていて
対照的なふたりの男の間で心を揺らす女学生サーラは
無自覚に人生の岐路に立たされているのです。

交通事故を引き起こし、イーサクの車に同乗した
険悪な関係の夫婦は、嫌な人生の末路を象徴するような存在で
すぐに降ろされてしまいます。

再びイーサクが見た夢では、
かつての恋人サーラから鏡を突きつけられて
醜く年老いた自分を自覚せよ
と迫られ、
「有罪の罪」を問われる裁判にかけられて、
医者としての経歴を否定されます。
先立った妻が他の男と情事に耽る現場の記憶を見せられ、
「孤独」という罰を受ける
のです。

96歳になってもなお健康で裕福でありながら、
「死も遠ざかる」ほど家族が寄りつかない母親のもとを訪れると
「孤独」はより痛切になり、
マリアンから妊娠している事実を聞くと
マリアンの妊娠を快く思わない息子エーヴァルドが
自分の性格を受け継いで孤独な人生を歩まんとしていることに
思い至り、憂慮するのです。

人と関わるということはいいことばかりではなく、
むしろめんどくさいことのほうが多いのですが
それでもやっぱり、一人では生きられないのが人間。
たとえ地位や名誉があっても
人間として愛されていない人間には
孤独という罰が待ち構えていることを教えてくれます。

ことあるごとに、
人間関係をばっさばっさ切ってきた僕にとって
非常に耳が痛い、切実な作品でした。







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