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シェフ 三ツ星フードトラック始めました

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(原題:Chef 2014年/アメリカ 115分)
監督・脚本/ジョン・ファブロー 製作/ジョン・ファブロー、セルゲイ・ベスパロフ 撮影/クレイマー・モーゲンソー 美術/デニス・ピッツィーニ 衣装/ローラ・ジーン・シャノン 編集/ロバート・レイトン 音楽監修/マシュー・スクレイヤー
出演/ジョン・ファブロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマン、オリバー・プラット、ボビー・カナベイル、ロバート・ダウニー・Jr.、エイミー・セダリス、エムジェイ・アンソニー

概要とあらすじ
「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演の4役を務め、フードトラックの移動販売をはじめた一流レストランの元総料理長のアメリカ横断の旅を描いたハートフルコメディ。ロサンゼルスの有名レストランで総料理長を務めるカールは、口うるさいオーナーや自分の料理を酷評する評論家とケンカして店を辞めてしまう。心配する元妻イネスの提案で、息子パーシーを連れて故郷のマイアミを訪れたカールは、そこで食べたキューバサンドイッチの美味しさに驚き、フードトラックでサンドイッチの移動販売をすることを思いつく。カールはイネスやパーシー、仲間たちの協力を得て、マイアミからニューオリンズ、ロサンゼルスへと旅を続けていく。「3人のエンジェル」のジョン・レグイザモが主人公の友人役を、「マチェーテ・キルズ」のソフィア・ベルガラが元妻役を好演。ロバート・ダウニー・Jr.、スカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマンら豪華ハリウッドスターも顔を出している。(映画.comより



これはいわば……自己実現ポルノ?

料理をいかにも美味しそうに、
いわゆる「シズル感」を強調した表現を
「フード・ポルノ」というそうですが
だとすれば、『二郎は鮨の夢を見る(2011)』を
「すきやばし二郎の着エロ」だと感じた
のは
間違いではなかったようです。

そんな『二郎は鮨の夢を見る』のような
フード・ポルノを目指したという
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』に登場する料理は
どれもいかにも美味しそう。空腹で観るのは危険です。

一流レストランのシェフからフードトラックを始めて成功した、
本作でアドバイザーも務めているロイ・チョイの実体験を
モデルにしていますが
ジョン・ファブロー監督の実体験も反映されているようで、
それは、クリエーターあるあるともいうべき
さまざまな対立です。

ひとつは、
一流シェフ、カール(ジョン・ファブロー)
レストランのオーナー(ダスティン・ホフマン)との対立。
デフォルメされているものの、
金を出しているのはオレなんだから、
オレのいうとおりのメニューにしろというオーナーのような人間は
現実に山ほどいます。
世の中、とかく金を払っているほうが偉いことになっています
金だけあっても、ものを作る人間がいないと話になりません。

社会の末端でグラフィック・デザインなんて仕事をしている僕も
「金を払うほうの人間」によって
日常的に仕事の質を台無しにされているので
カールの気持ちが痛いほどわかります。
バカなクライアントは
「商売なんだから、売れなきゃだめなんだよ」
あたかも殺し文句のように言い放ちますが
クライアントのいうとおりにして売れたためしはないし、
彼らは何が売れるのかのデータもノウハウも持ち合わせず、
既に売れているもののコピーを量産させるだけなのです。
(はっ! いかん! これは愚痴だ)
とにかく、料理が専門ではないオーナーが
料理に口を出しては対等な関係は保てません。
(オーナーは雇い主なんだから
 対等なわけねえだろという人がいるかもしれませんが
 従業員は労働(技能)の対価として賃金を受け取っているので対等です)

本来なら、お互いがそれぞれの専門とする立場から
建設的な折衝に務めるのが理想的ですが
カールのほうも
まるで芸術家が作品づくりを探求しているような態度を見せ、
やはり少し勘違いしている感は否めません。
高圧的なオーナーに向かって
「じゃあ、自分で作ってみろ!」といいますが、これは禁句。
それをいっちゃあ、おしまいなのです。
気持ちはわかるけど。

もうひとつは、グルメ評論家との対立
評論家の酷評に対してカールは
「こっちだって、傷つくんだ!(字幕)」といっていますが
それは仕方ありませんね。
なにかを表現すれば、必ずや批評の対象になるのです。
ただ、グルメ評論家が
かつては評価していたカールの料理に不満を感じても
カールの腕前以外の原因を一切疑わず、
料理を芸術品として捉えてレストラン経営に考えを及ぼさずに
料理のすべてをシェフの表現の現れのように論じているのでは
評論とはいえず、ただの感想でしかありません。
(このブログのようにね)

このような、ものづくりと商売との葛藤が
(例えば三谷幸喜『みんなのいえ(2001)』のように)
どのように描かれるのかに期待していたのですが
それはカールがレストランをクビになるまでの話で
フードトラックを始めてからのカールは
あまりにも順風満帆。


ま、クビになる前から
恋人がスカーレット・ヨハンソンなんだから
一体どんな不満があるんだよ!
って話ですが
(最近のスカジョでは、本作が一番色っぽかった!)
カールの元妻イネス(ソフィア・ベルガラ)
『マチェーテ・キルズ』マシンガン・ブラをぶっ放していたとは
思えない良妻っぷりで
カールの独立を応援し、根回しまでしてくれます。
カールを「ボス」と呼ぶ弟分マーティン(ジョン・レグイザモ)
最強のパートナーだし、
息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)
父親カールの仕事に対する尊敬を失わないし、
フードトラックはあれよあれよというまに繁盛します。
これはいわば……「自己実現ポルノ」?

いやいや、そのうちもう一回くらい
カールが壁にぶち当たるときがくるだろう、
例えば、料理の評判が良くてバンバン売れるけど
材料費が高すぎて商売として成り立ってないとか、
ウチのシマで勝手に商売するんじゃねえってマフィアが登場するとか、
なんか問題が起きるはずだと思っていたのですが、
最後はグルメ評論家がスポンサーになるとまで言い出して
ハッピーエンドへまっしぐらでした。

息子のパーシーの存在は
家族の再生という、物語の別の側面を担っていて、
パーシーに料理を指南することが
観客への料理の説明にもなっていたと思いますが
最も重要なのはパーシーが操るTwitterをメインとした
SNSの役割
でしょう。
ツイートする文字を合成して表現するのは
どっかでみたような気がしますが
いい評判も悪い評判も、あっという間に広まってしまうのが
まさに現代を表しているものの、
あっという間に古くさくなる可能性も十分にあるでしょう。

また、本作は音楽のセンスが最高
その土地に合わせた選曲が魅力的です。
ジョン・ファブローが
見事な包丁捌きを見せるオープニングで流れていたのは
名曲「IKO IKO」のカヴァーで、
ワイルドマグノリアスの「BROTHER JOHN IS GONE」
なぜかサントラには収録されていないのですが
ワイルドマグノリアスは毎日がマルディグラみたいな
ニューオリンズのバンド。
すなわち、クビになる前から
カールの心はニューオリンズへと向いていたのじゃ!

ストーリー展開は思いのほか軽かったけど
お楽しみポイントがいっぱい詰まった作品です。





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