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魔女と呼ばれた少女

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(原題:Rebelle 2012年/カナダ 90分)
監督・脚本/キム・グエン
出演/ラシェル・ムワンザ、セルジュ・カニンダ、アラン・バスティアン、ラルフ・プロスペール、ミジンガ・グウィンザ

概要とあらすじ
カナダの新鋭キム・グエン監督が、アフリカ諸国にいまだ存在する少年兵の問題を背景に、生と死、現実と幻想を交錯させて描くドラマ。紛争の絶えないコンゴ民主共和国。平和な村から拉致され、反政府軍の兵士として戦わされることになった少女コモナは、死んだはずの人たちに導かれるようにして、全滅必至のゲリラ戦を生き延びた。亡霊を見ることができる力が勝利を招くと、コモナは魔女として崇められるようになるが、いずれ殺されることを悟ったコモナは、最愛の少年と逃避行に出る。2012年・第62回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞。 (映画.comより)



「平和ボケ」のありがたみを知れ

映画館で予告編を目にするまで
『魔女と呼ばれた少女』という映画について
まったく何も知りませんでした。
アフリカのどこかで、少年兵として戦う少女の物語だとわかり、
深刻な問題であることはわかるけれど
語弊を恐れずに言えば、ある種の「社会派」映画がもつ
善意を脅迫する感じ
を予想してさほど興味を覚えなかったのですが、
続く予告編で、この映画のヒロインが
亡霊に導かれて生き延びるという物語であることを知り、
「これは、観たい!」と思ったのです。

「社会派」と呼ばれるような作品は
扱われる社会問題が深刻であればあるほど表現が真顔になり、
その真剣さが観客の居心地を悪くするだけで
結果的にその問題を有効に伝えられないのではないか、
という思いを日頃から感じていた僕は
アフリカの深刻な社会問題を、亡霊に導かれる少女という
ファンタジーを通じて表現しようとするこの作品に
強く惹かれ、期待を高くしたのです。
映像の趣は全く違うけれど、僕が大好きな
スペイン内戦を背景にした『パンズ・ラビリンス』
頭をよぎったのも事実です。

『魔女と呼ばれた少女』の舞台となるのは、コンゴ民主共和国
ある年齢層の人にとっては「ザイール」という国名のほうが
なじみがあるかも知れません。
自他共に認める不勉強のため、
コンゴ民主共和国については何も知らず、
内戦続きで大変らしいねとぼんやりイメージしている程度でしたが
鑑賞後に自分なりに調べ、ネットの叡智を借りつつ
この文章を書き進める所存であります。
映画をきっかけに、その作品の世界を勉強してみようと思うのも
映画鑑賞の楽しみのひとつだもんねー、と
自分を慰めることに精を出そう。うん、そうしよう。

この作品は、幼さの残る声で語られるナレーションにのって
自分が少年兵になった経緯を
自分の子どもに語り聞かせるように構成されています。

砂浜のような場所にある集落。
のどかな雰囲気が漂うなか、母親に髪を結ってもらっている少女。
そこへ、ゆったりと流れる時間を切り裂くように
銃を持った一群が現れ、次々と集落の人間を射殺していく。
捕らえられた少女は銃を渡され、
自分の両親を撃ち殺せ、殺さないならナタで殺すと脅されます。
少女は泣きながら自分の両親を射殺。
これでおまえも兵士だと言われ、一群に連れて行かれるのです。

いきなりショッキングなシーンで始まりますが
突然の恐慌に巻き込まれた少女こそ
主人公のコモナ(ラシェル・ムワンザ)です。このとき12歳。
映画はコモナがそれから13歳、14歳になる2年間の物語です。
集落を襲った一群は反政府軍を名乗っていますが
彼らが行なっている行為はただの略奪でしかありません。
政府と反政府軍の戦いは政治的対立というより、ただの利権争いで
延々と続く戦争状態のなか、略奪やレイプが横行し、
誘拐した女性や子どもを性的奴隷にするような蛮行も
行なわれているそうです。
コンゴ民主共和国では、1990年代後半から内紛が続き、
内紛による死者の合計は600万人にも及ぶということ。

グレート・タイガー(ミジンガ・ムウィンガ)が率いる反政府軍は
コモナをはじめとする誘拐した子どもたちを引き連れて
ジャングルを進んでいきます。
重い荷物を子どもに背負わせ、
疲れて膝をつく子どもがいれば叩きつけて叱るのです。
怯えるだけだった子どもたちは、生き延びるために
反政府軍の生活に順応するほかなく、徐々に兵士としての
たくましさを身につけていきます。
やがて、「カラシニコフを親だと思え」と言われ
銃を渡されるのです。
反政府軍を名乗り、銃で殺害をくり返しているにもかかわらず
彼らの行動が呪術や占いを頼りに行なわれているあたり、
なんともやりきれない思いがします。

威張り散らして怒鳴り散らすだけの反政府軍の一行のなかで
ただ一人、コモナに優しさを見せる少年が
マジシャン(セルジュ・カニンダ)です。
浅い褐色の肌に、頭髪から睫毛まで白金という
あきらかに周囲のアフリカ人とは違う風貌のマジシャンは
「アルビノ(先天性白皮症)」 なのです。
マジシャンをみて、僕がすぐに思い出したのは
マリ出身のミュージシャン、サリフ・ケイタです。
サリフ・ケイタは「アルビノ」のおかげで、白人からはもとより
黒人からも家族からも差別を受けた経験を持ちますが
「アルビノ」とはそのような超マイノリティーなのです。

すっかり反政府軍の兵士が板につき始めたコモナは
幻覚作用のある樹液を飲んで、隊の先頭に立たされたとき、
突然木陰に姿を現した「亡霊」
「コモナ、逃げろ!」と言われるのです。
とっさに亡霊の言葉に従ったコモナは命拾いし
このことからコモナは「魔女」として
重宝がられる存在になるのです。
この「亡霊」が白塗りで(っていうと元も子もないが)
合成やCGなどが使われずに表現されているのが素晴らしいのです。
一見、安易に見える白塗りという演劇的ビジュアルが
亡霊がまさにそこに存在していることを強調し、
恐怖と親しみとを同時に感じさせるのです。

少年兵たちがカンフーをまねてじゃれたり、
テレビ番組に熱狂する姿には、その子どもらしさにほっとします。
突然、ジャン・クロード・ヴァンダムの顔が
スクリーンいっぱいになったときは虚を突かれましたが。

コモナは、反政府軍のリーダー・グレート・タイガーから
「魔女」として特別扱いされていますが
マジシャンは、グレート・タイガーが「魔女」が
役にたたなくなった途端に殺してしまうことに気づき、
コモナとマジシャンは反政府軍からの逃避行を決意するのです。
ここから映画は、一転ほほえましいラブストーリー
様相を呈してくるのですが
コモナにプロポーズしたマジシャンは、
コモナから結婚の条件として
「白い雄鳥」を見つけてほしいと言われるのです。
この地域では白い雄鳥が珍しく、めったに見かけない存在で
かぐや姫よろしく、結婚相手の心を射止めるためには
白い雄鳥を差し出すというのが言い伝えになっているようです。
マジシャンは、村人に銃を向けて
「白い雄鳥をよこせ!」と脅すものの、求婚中であることがばれて
村人からからかわれる始末。

白い雄鳥を見つけるため、お守りと引き替えに案内された場所は
なんと、アルビノばかりが集められた村
そこで、やっと白い雄鳥を手に入れたマジシャンは
めでたくコモナと夫婦になるのです。
肉屋のおじさんの家に身を寄せて
平和な新婚生活を満喫していた二人の元に
またしても反政府軍が現れ、コモナは再び拉致されるのです。
そして……

ドキュメンタリータッチとはまた違う、手持ちカメラの映像は
一定の距離感を持ちつつ、リアリティーとともに
詩的なやさしさまで感じさせるものでした。
先にも書いたように、深刻な現実を扱いながら
少女の成長を中心に追う描き方が
単に問題を提起して悲惨な現状を訴えかけるのとは別の
深い感慨を呼び起こすのです。
「白い亡霊」「アルビノ」「白い雄鳥」と
コモナは「白」に導かれていたように思います。
この作品における「白」が何を意味するのかは
難しいところですが、この作品の視線が
マイノリティー(弱者)に向けられていることは確かでしょう。

キム・グエン監督が自らコンゴ民主共和国の首都キンシャサで
ストリート・チルドレンの中から見出したラシェル・ムワンザは
アフリカ女性初のベルリン国際映画祭「銀熊賞・主演女優賞」を受賞。
現在は監督たちが組んだ彼女のための養育プログラムのもとで
現地の学校に通っているそうです。
東京では『魔女と呼ばれた少女』が上映されているのは
新宿の一館だけというのは寂しい限り。
もっと多くの人におすすめしたい作品でした。

世界中で起こる全てのことを体験し、実感することなど不可能です。
そこで重要になるのは「想像力」です。
「想像力」こそが知性であり、「想像力」なくしては
いかなる行動も起こせないのです。
映画はわれわれの想像する力の手助けをしてくれるのです。

ところで、劇中に登場する「コルタン」という黒い石は
携帯電話などのコンデンサーに不可欠なレアメタルで
われわれ日本人も全くもって無関係ではないのですが
コンゴ民主共和国では、
この「コルタン」が武装勢力の資金源となっていて、
つねに紛争の火種になっているということ。

携帯電話やスマホを見つめるたびに
コンゴ民主共和国の惨状を思い起こせなどと言うつもりはありませんが
「日本人は平和ボケでだらしがない」などと平気な顔していうボケは
自分でコルタンを掘りに行け。





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