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私の男

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(2013年/日本 129分)
監督/熊切和嘉 製作/藤岡修、由里敬三、分部至郎、木村良輔、宮本直人 原作/桜庭一樹 脚本/宇治田隆史 撮影/近藤龍人 照明/藤井勇 録音/吉田憲義 美術/安宅紀史 編集/堀善介 音楽/ジム・オルーク
出演/浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤竜也、モロ師岡、河井青葉

概要とあらすじ
作家・桜庭一樹による第138回直木賞受賞作を、「海炭市叙景」「夏の終り」の熊切和嘉監督が映画化。孤児になった少女と、彼女を引き取った遠縁の男が、内に空虚を抱えながらも寄り添うようにして生きる姿を、北海道の雄大な自然を背景に描き出した。浅野忠信と二階堂ふみが主演し、共演にも高良健吾、藤竜也らが実力派が顔をそろえている。10歳で孤児となった少女・花は、遠縁の男・淳悟に引き取られる。ともに孤独な2人は北海道紋別の平穏な田舎町で暮らしていたが、ある日、流氷の上で起こった殺人事件が報じられる。そのニュースを聞いた2人は、逃げるように町を後にするが……。(映画.comより



男を狂わす淫乱サイコパス少女

『私の男」というタイトルを聞いただけで
この作品が近親相姦を描いているというのは
誰でも察しがつくはずです。
それを、ネタバレだというほどバカじゃありませんが
近親相姦に限らず、禁断の愛ってやつは
とかく映画や小説の題材にされているので
生理的な嫌悪感を抱くひとはいるとしても
題材自体はこれといった驚きを
もたらさないのではないでしょうか。
もしそうだとすれば、
その禁じられた一線を越えてしまう瞬間の
心理の移り変わりに興味が注がれると思うのですが
本作は、下世話な好奇心を意味ありげに描くことに
終始しているように感じました。

おそらくは、北海道南西沖地震によって家族を失った
幼少時の避難所でもらったペットボトルを
決して放さない
ところからして
彼女の独占欲の強さを表現しているのでしょう。
避難所を訪れた消防隊員(?)の淳吾(浅野忠信)
なぜか花を俺の娘だといい、
引き取ることにするのですが
どうも原作では、実の娘ということのようです。
遠縁の間柄なのは映画でもわかりましたが
淳吾が花をすでに見知っていたのかどうか、
はっきりしませんでした。
ま、とにかく「家族が欲しいんだ」という淳吾は
花を引き取るのです。

成長した花(二階堂ふみ)
淳吾の恋人(河井青葉)に嫌味を言って張り合うほど
オンナになっています。
この時点で、花は狂っているような言動をみせるので
これは頭のおかしい人たちの物語ですよと
宣言しているようなもの……のはずなのですが
以降は狂気というより不可解な物語が展開します。
それにしても、河井青葉さんは
いい体の、いい女ですねぇ。

淳吾が飯を食べている最中に
おそらくまだ幼い花が「キスしよ」という回想
ふたりが一線を越えてしまったきっかけとして挿入されますが
なぜ、花が淳吾への愛情を伝える手段として
親子ではあり得ない性的な行動を選択したのかは
わかりません。
そもそも花は淳吾を父親だと思っていなかったのかもしれませんが
やはり家族愛から恋愛感情へと変化する過程を
みせて欲しかったところ。

出勤前の朝飯の時に、
急にムラッとするのはよくあることですが
食パンをかじっている花にもよおす淳吾が
花のおっぱいをまさぐる
のはなかなかエロいシーンでした。
「シャツがシワになる」なんてのも、
あるあるでいいんですが
その後セックスが始まると
イメージとしてふたりの身体に血がしたたり落ちるのです。
ふたりのセックスを街の名士・大塩(藤竜也)
たまたま目撃してしまったことが
ふたりの悲劇的な末路の始まりではあるものの、
本来、ふたりの悲劇は
親子でありながら肉体関係を持ってしまったことのはずで、
肉体関係がばれたことではないはず。

どうみても初めてではないふたりのセックスで
これが悲劇の始まりのように受け取れるのは
いかがなもんでしょう。

その後、淳吾と花を引き離そうとする大塩は
花によって流氷に置き去りにされて死んでしまいますが
花を執拗に追いかける大塩の行動が
これまた理解できませんでした。
たまたま出会ったとはいえ、
大塩の立場からすれば先に話をつけるのは淳吾のはずです。
淳吾が不在という事情はあるにせよ、
やっぱり行動原理が不可解です。

また、東京へ逃げた淳吾と花の居場所を見つけた
制服警官の田岡(モロ師岡)
たったひとりで淳吾の部屋を訪れ、
大塩殺害の物的証拠である花の眼鏡を差し出して
「豚の餌だよ!」と淳吾にみせる意図が
さっぱりわかりません。
彼はなにがしたくて淳吾の部屋へやってきたのでしょうか。
すでに奥尻から東京へ逃げている淳吾が
証拠の遺留品をみせられて逆上し、
反撃に出るかもしれないことを
まったく考えてもいなかったのでしょうか。

その後、本作のある種の難解さがエスカレートします。
花は、それなりに大きい会社の受付嬢として働いていますが
逃亡犯である彼女が
こんな人目に付く仕事に就くとは思えません。
淳吾がボロボロにやさぐれているのは
殺人を犯してしまったことによる精神崩壊、
もしくは、人目をはばかる生活が
長く続いたためということなのかもしれませんが
それなら同居している花が
淳吾が散らかした部屋を片付ければいいのに
淳吾の荒みぶりはまったく意に介していないようで
すでにふたりの冷え切った関係が見て取れるものの、
では、なぜ花の心が淳吾から離れてしまったのかは
皆目見当が尽きません。

そのわりには、コンタクトレンズを外してもらったり、
あいかわらず花は淳吾に甘えているふうもあるので
どうにもふたりの関係性が把握できないのです。
淳吾がコーラ好きだというアピールには
だからどうしたとしか言いようがありません。

3年ぶりに再会した淳吾と花。
花は婚約者を引き連れています。
どう考えても淳吾と花は指名手配中のはずなのに
そんな危機感は微塵もないようです。
婚約者が注文している隙に花は淳吾の足を
テーブルの下でまさぐり、なにか言います。
blu-rayで何度繰り返し観ても
花の最後のセリフは聞き取れなかったので
もうどうでもいいですが
(パンフレットには書いてあるらしいけど、それもどうかと思うよ)
花はなぜ淳吾を見限ったのか、
見限ったにもかかわらず、
なぜこの期に及んで淳吾を誘惑するのか、
どうしても納得できません。

そもそも「家族が欲しい」と言っていた淳吾が
娘に手を出したら
家族じゃなくなることくらいわかるだろと思うし、
娘と肉体関係を持っていることに関して
ためらいを感じさせないのが不可解
です。
花が連れてくる男に対して
「お前じゃ無理だ」という淳吾はもうボロボロなので
お前も無理じゃねえかと思ってしまいます。

16mm(花の子供時代)、35mm(北海道紋別)、
デジタルカメラ(東京)と
カメラを使い分けた映像は美しく、
流氷のシーンは圧巻
だったし、
照明に対するこだわりようも素晴らしいと思いましたが
こと物語に関しては
首をかしげることなかりでした。

あたかも、愛とは? 家族とは? というような
深遠なテーマが込められている素振りなど見せずに
「男を狂わす淫乱サイコパス少女を二階堂ふみが熱演!」
てな具合に、サイコ・サスペンスとして仕上げてくれたほうが
もっとすんなり楽しめた気がします。





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