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フォックスキャッチャー

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(原題:Foxcatcher 2014年/アメリカ 136分)
監督/ベネット・ミラー 製作/ミーガン・エリソン、ベネット・ミラー、ジョン・キリク、アンソニー・ブレグマン 脚本/E・マックス・フライ、ダン・ファターマン 撮影/グレッグ・フレイザー 美術/ジェス・ゴンコール 衣装/カシア・ワリッカ=メイモン 編集/スチュアート・レビ、コナー・オニール、ジェイ・キャシディ 音楽/ロブ・シモンセン
出演/スティーブ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、バネッサ・レッドグレーブ、シエナ・ミラー、アンソニー・マイケル・ホール、ガイ・ボイド、デイブ・ベネット

概要とあらすじ
「マネーボール」「カポーティ」のベネット・ミラー監督が、1996年にアメリカで起こったデュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンによるレスリング五輪金メダリスト射殺事件を映画化し、2014年・第67回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したサスペンスドラマ。ロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手マーク・シュルツは、デュポン財閥の御曹司ジョンから、ソウルオリンピックでのメダル獲得を目指すレスリングチーム「フォックスキャッチャー」に誘われる。同じく金メダリストの兄デイブへのコンプレックスから抜けだすことを願っていたマークは、最高のトレーニング環境を用意してくれるという絶好のチャンスに飛びつくが、デュポンのエキセントリックな行動に振り回されるようになっていく。やがてデイブもチームに加入することになり、そこから3人の運命は思わぬ方向へと転がっていく。「40歳の童貞男」のスティーブ・カレルがコメディ演技を封印し、心に闇を抱える財閥御曹司役をシリアスに怪演。メダリスト兄弟の兄をマーク・ラファロ、弟をチャニング・テイタムが演じた。(映画.comより



友達はいくらで買えるのか。

実録ものを得意とするベネット・ミラー監督
『フォックスキャッチャー』
これまた実話に基づくお話。
やがて訪れる悲劇に至るまでの道のりを
関わった人間たちの心理的な変化に重点を置いて
じっくりと辿っていきます。

レスリング選手、マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)
ロサンゼルスオリンピックの金メダリストでありながら
まともな食事も摂れない貧窮した生活を送っています。
オリンピックの選手って、
大会中は国の威信をかけた代表のように
期待と重責を背負わされるけれど
大会が終わってしまえば、たとえ金メダリストであっても
ちっとも優遇されないのは、どうなんでしょう。
(家を建ててもらえたりする国もあるようですが)
小学校に講演に行ったマークが受ける冷遇をみれば
彼の置かれた状況がわかります。

マークの兄、デイブ(マーク・ラファロ)
コーチ兼選手で金メダリスト。
幼いころに両親が離婚したシュルツ兄妹は
兄デイブが弟マークの父親代わりを務めながら
支え合って生きてきたのです。
ふたりっきりのジムで
お互いの身体を無言でストレッチし合うシーン

なんとも不思議でホモセクシャルな雰囲気が漂います。
マーク・ラファロは、キーラ・ナイトレイと共演した
『はじまりのうた』
色っぽいダメ男を演じていましたが
(ほんとにアメリカではセクシーな俳優だといわれているらしい)
本作では、ハゲ頭のひげ面
とても同一人物とは思えない変貌ぶりです。
チャニング・テイタムは、いつもより少し元気がないものの、
いつものチャニング・テイタムです。
もちろん褒めてます。
彼以外にこの役は考えられないでしょう。
レスリング選手らしく、ちゃんと耳が餃子になってました。
あれは間違いなく、水餃子です。
(どうでもいいか)

突然、マークに電話をかけてくるのが
デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポン(スティーブ・カレル)
生活のすべてを援助するから
うちのチーム「フォックスキャッチャー」に加入しないかと
持ちかけてくるのです。
ジョン・デュポンを演じるスティーブ・カレルが
これまた、いままでの出演作とは打ってかわって
別人のようです。

いつも他人を斜め下に見下ろすように
青っちろい顔をもたげています。
繰り返しますが、
チャニング・テイタムは、いつものチャニング・テイタムです。

高額な給料と充実したトレーニング施設に
マークが飛びつくのは当然でしょう。
ジョンの豪邸にマークが車で到着したとき、
画面が一瞬ぐにゃりと歪み
、不安をかき立てますが
マークがジョンの誘いを受け入れるまでの間、
オープニング以降、一切劇判が流れない演出が
嫌が応にも緊張感を煽るのです。

ジョンが、母親に対する愛憎から
人間性をこじらせた
のは明らかです。
母親はジョンの承認欲求を
ことごとく否定してきたのですが、
ジョンにトラウマを植え付けたのは
子供の頃、友達だと思っていた相手が
母親によって金で雇われて友達を演じていた
と知ったときで、
同じことが、シニアのレスリング大会に出場したジョンの
対戦相手でも繰り返されます。
ジョンが大好きなレスリングも
「下品だ」とひと言で否定する母親が
珍しく「フォックスキャッチャー」のジムを訪れると、
ジョンはわざわざ母親が見やすいように選手たちをどかせ、
レスリングのコーチングをして
アピールするのですが
母親は白けた様子で引き揚げてしまうのです。

徐々にジョンを慕いはじめたマークが
パーティーに出席するために自家用ヘリで移動するとき、
ジョンがマークにコカインを勧めるのは
アスリートに理解のあるマークの行動としては不可解ですが
あれは友情を確かめるための儀式なのかもしれません。
筋肉バカのマークにスピーチを指南するジョンが
「鳥類学者、収集家、愛国主義者。」と連呼するシーンは
静かな狂気を感じさせます。

ジョンがいつもウイスキー(ブランデー?)を飲んでいたのは
彼がアル中だからですが、
誰かから命を狙われているという強い強迫観念も持っていたようで
自宅にM113装甲車を取り寄せ、
機関銃が付いていないと文句を言う
のは
そのためでしょうか。

当初は誘いを断っていたデイブが
「フォックスキャッチャー」に加わると、
今度はマークが不満を募らせるように。
マークは、自分が常に兄デイブの陰に隠れて
正当な評価を受けていないと感じ、
ジョンの心がデイブに移ってしまったという嫉妬も重なって
自暴自棄になっていきます。
マークもまた、ジョンと同じように
承認欲求への渇望に苦しんでいたのです。

境遇が正反対のふたりが映し鏡のように共鳴し合うさまが
本作を複雑なものにしています。

最終的に、ジョンは自我を暴発させてしまいますが、
本来、ジョンは友達が欲しかっただけなのではないでしょうか。
ところが彼は愛情や友情というものを知らずに
育ってしまいました。
前半で、デイブがジョンの誘いを断ったことについて
こんな会話がありました。

 マーク「家族との暮らしがあるからデイブは来られないって」
 ジョン「いくら(金が)欲しいって?」
 マーク「そういうことじゃないんだ」
 ジョン「そういうこととは?」

ジョンには、金以外に人の心を動かすものがあることを
理解できないのです。
ジョンは事件を引き起こした加害者ですが
どんどんジョンが不憫に思えてくるのです。

実在するマーク・シュルツ氏は
本作に対して大きな不満を持っているようなので
描かれていることがすべて真実かどうかはわかりません。
しかし、事件の真相を解明するのが
本作の目的ではないのは確かでしょう。

貧乏も嫌だけど、大金持ちも……嫌だねぇ。





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