" />

ビッグ・アイズ

ill398.jpg



(原題:Big Eyes 2014年/アメリカ 106分)
監督/ティム・バートン 製作/リネット・ハウエル、スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー、ティム・バートン 脚本/スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー 撮影/ブリュノ・デルボネル 美術/リック・ハインリクス 衣装/コリーン・アトウッド 編集/JC・ボンド 音楽/ダニー・エルフマン
出演/エイミー・アダムス、クリストフ・ワルツ、ダニー・ヒューストン、ジョン・ポリト、クリステン・リッター、ジェイソン・シュワルツマン、テレンス・スタンプ、ジェームズ・サイトウ、デラニー・レイジェーン、マデリン・アーサージェーン

概要とあらすじ
「アリス・イン・ワンダーランド」「チャーリーとチョコレート工場」のティム・バートン監督が、1960年代アメリカのポップアート界で人気を博した「ビッグ・アイズ」シリーズをめぐり、実在の画家マーガレット&ウォルター・キーン夫妻の間に起こった出来事を描いたドラマ。悲しげで大きな目をした子どもを描いたウォルター・キーンの「ビッグ・アイズ」シリーズは、ハリウッド女優たちにも愛され、世界中で大ブームになる。作者のウォルターも美術界の寵児として脚光を浴びるが、実はその絵はウォルターの妻マーガレットが描いていたものだった。絵は飛ぶように売れていくが、内気な性格のマーガレットは、自分の感情を表すことができる唯一の手段である「ビッグ・アイズ」を守るため、真実を公表することを決意する。マーガレット役に「アメリカン・ハッスル」「魔法にかけられて」のエイミー・アダムス、ウォルター役に「イングロリアス・バスターズ」のクリストフ・ワルツ。(映画.comより



事実の再現が孕む価値観の危うさ

あたりまえのことですが
事実をもとにした映画というのは
いくら荒唐無稽な物語であっても
本当にそうだったんだから仕方がないという
抗いがたい強度を持っています。
およそ10年にわたるペテンを描いた
『ビッグ・アイズ』
事実に裏打ちされた驚きに満ちています。

そもそも、絵を描こうなんてひとは
社会とのコミュニケーションが苦手です。
だからこそ自分の思いを作品に込めるのですが
マーガレット・キーン(エイミー・アダムス)の場合は
1950年代のアメリカで
女性が自立して社会的な地位を得ることが困難だという
前提が存在します。
しかも、幼い娘を連れて夫の元から逃げ出し、
経済的に困窮しているうえに
娘の親権まで危ういという絶好(最悪?)のタイミング
不動産業を営み(のはず)、絵画の心得もある(はず)の
ウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)
満面の笑みをたたえて現れれば、
頼りにしてしまうのは致し方ないことでしょう。

芸術家気質で自分をうまく売り込めないマーガレットと
いつも調子がよくて人たらしのウォルターは
本来なら絶妙な組合せだったはずです。
ウォルターがマーガレットのマネージャーとして振る舞っていれば
これほど力強いパートナーはいなかったでしょう。

ところが、ウォルターは
マーガレットが描いた「ビッグ・アイズ」を
自分の作品だと偽って宣伝してしまうのです。
ウォルターの理屈だと、
絵を描いた本人が目の前にいたほうが買い手が喜ぶから
ということになりますが
金銭欲だけならまだしも、
虚栄心まで旺盛だった
のがウォルターの犯した過ちの原因です。

この物語の悲劇のヒロインは、紛れもなくマーガレットです。
本当は自分の作品をウォルターの作品だとして
もてはやされるのは、やはり耐え難いことでしょう。
彼女は作品の著作権や名誉以前に
アイデンティティをウォルターに搾取されたのですが
ウォルターが騙したのはマーガレットだけではなく、
むしろ「ビッグ・アイズ」とその作者であるウォルターを
賞賛した多くのファンたち
です。
彼らファンたちは、「ビッグ・アイズ」に魅力を感じたから
人気を博したはずですが
なかには人気があるからという理由で
「ビッグ・アイズ」を求めた人も
少なからずいるだろうし、
やがては、ウォルター・キーンの作品だからという理由で
評価を高くした人も含まれるはず
です。

もしそうだとするなら
そもそも美術作品の価値とはなんなのかということを
考えざるを得ません。
作品そのものに魅力を感じているならば
本当の作者が誰であろうと関係ないはずですが
なかなかそこまで自分の直感のみに従って作品を評価することは難しく、
作り手の側からすれば、
作品の評価はすなわち自分に対する評価でもあるわけで
表面上の物語とは別に
美術作品に接するときの非常に難しい価値観の問題にも
触れているのではないでしょうか。

そこで重要になってくるのが
「好き嫌い」とは別の客観的な判断を示唆する評論家の存在ですが
この作品に登場する評論家は
「ビッグ・アイズ」を大衆的で稚拙だと言い放ちます。
評論家の論拠は明確に表現されていませんが、
おそらくあの評論家は
旧態然とした権威主義的な芸術観の象徴でしょう。
僕なんぞは、芸術は威張った途端に終わりだと思っているのですが
そのような権威主義的かつサロン的な芸術の価値観に抗って
登場したのが、アンディー・ウォーホルを代表とする
1960年代のポップ・アートであることを考えれば
オープニングで象徴的に登場する印刷機と裏腹に
オリジナル原画の価値に重きを置く本編の物語は
ポップ・アートの黎明期であることを裏付けます。
もちろん、ポップ・アートに対するその後の反動もあり、
時代は繰り返すのですが。

ネタバレもクソもなく、
事実をもとにしている以上、
やがてマーガレットが真実を訴えて
反撃に出るのは承知の上なので、
さんざん自我を蹂躙されたマーガレットが反撃に転じるときは
キターーー!!と思いたかった
のですが
マーガレットがハワイのラジオ局で初めて真実を語るシーンは
思いのほかやんわりと展開したので
ちょっぴり拍子抜けではありました。

まあ、それにしても
ウォルターを演じるクリストフ・ヴァルツの
怪演
といったら。
『おとなのけんか』以上に嫌なやつを
嬉々として演じています。
最後の法廷シーンなどはクリストフ・ヴァルツの独演会のようで
実際に「ビッグ・アイズ」を描いてみろといわれて、
全く絵が描けないウォルターが
ずーっともじもじした挙げ句に思いついたのが
「肩が痛くて……絵筆が持てない…」って、
……子供の言い訳かっ!

なにしろ「ビッグ・アイズ」そのものがキモカワなので
ティム・バートン独自の世界観というのは
それほど表立っていませんでしたが
事実の再現の裏側に含まれる多くの問題定義を
感じ取れる作品でした。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ