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チチを撮りに

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(2012年/日本 74分)
監督・脚本/中野量太 プロデューサー/平形則安 撮影/平野晋吾 照明/谷本幸治 録音/島津未来介 音楽/渡邊崇
出演/柳英里紗、松原菜野花、渡辺真起子、滝藤賢一、二階堂智、小林海人

概要とあらすじ
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012で監督賞を受賞した家族ドラマ。フリーターの姉・葉月と女子高生の妹・呼春は、父親が14年前に女を作って出て行ってしまって以来、母の佐和と3人で暮らしていた。ある日、佐和から「お父さんがもうすぐ死ぬから会いに行って、ついでにその顔を写真に撮ってきてほしい」と頼まれた姉妹は、困惑しながらも、ほとんど記憶に残っていない父親に会いたい気持ちもあり、電車を乗り継ぎ父親のいる田舎町へやってくる。2人はそこで、異母兄弟の少年や叔父に出迎えられるが、すでに父は他界しており、さらに思いがけない人生の修羅場に遭遇する。(http://eiga.com/movie/77801/)



なんとも惜しい! もったいない!

なんとなーく気になって観てみた
『チチを撮りに』ですぅ。
これが劇場用長編映画初監督作となる中野量太監督
これまでに撮った短編映画の評価も高く、
この作品も映画祭で監督賞を受賞したとか。
期待の新人監督といったところでしょうか。

DVDに収録されていた
中野量太監督の前作にあたる短編映画『琥珀色のキラキラ』
『チチを撮りに』と同様に、片親の子供を主人公に
家族の繋がりのようなものを描いていて
どうやら、監督自身の生い立ちが
作品づくりに強い影響を与えているようです。

14年前に父親の浮気が原因で離婚した母親とふたりの娘
慎ましくもたくましく生活していたところに
その父親が危篤だという連絡が届き、
父親の顔も覚えていない娘たちにとって
おそらく父親との最後の対面になるであろうと考えた母親が
娘たちを遠方で暮らす父親の見舞いに行かせるという設定自体が
魅力的です。
そして、娘たちの旅の途中で父親が死んでしまい、
お見舞のはずがお弔いになってしまう展開は
サスペンスフルで惹きつけられます。

でもね……というか、だからこそ
あれやこれやの細かい部分の違和感につくづくひっかかり、
なんとも惜しい! もったいない!
と、感じてしまう作品でもありました。

母親を演じる渡辺真起子
ひとりで生きていきます感に覆われていて適役だし、
逞しい母親としてでなく、オンナの部分も併せ持っているのは
素晴らしいと感じましたが
娘の葉月を演じる柳英里紗呼春を演じる松原菜野花
演技力とそれぞれのキャラクターは
脇を固める俳優陣と比べると見劣りしてしまいました。
とくに、物語を牽引するべき姉・葉月の印象が弱く、
昼キャバで働いているというトホホな設定は面白いものの
少しボーっとした妹・呼春とのコントラストがもの足りず、
際だったものがありませんでした。
もっとケバケバしく、旅の途中にも
客へ営業メールを打ったりするシーンがあっても
よかったんじゃないかと思いました。

姉妹が旅立つ前、持ち帰りの安い寿司を囲むシーンで
父親が好きだったマグロの握りを姉妹が箸で同時につまんでしまい、
「縁起が悪い」という伏線は気が利いていたと思うのですが、
父親の見舞いに行って、写真を撮ってきてほしいという母親が
新品のデジカメを購入して渡していたのには
首をかしげてしまいます。
それでなくても、裕福とはいえない生活をしている家族なんだから
携帯の写メで十分なはずだし、
わざわざデジカメを新規購入する意図がわかりません。
どうせなら「写ルンです」にしてほしかった。

また、おにぎりがひとつのキーアイテムになっていますが、
おにぎりが持つ意味が希薄で
最初に登場したときは姉妹の食生活が窺えたものの、
父親の実家で出会った幼い弟と姉妹が並んで食べるおにぎりは
いったい誰が握ったものなのか、あいまいです。
一番がっかりしたのは、
父親の訃報を聞いて慌てて喪服に着替えた母親が
電車(汽車というべき?)で父親の実家に向かう途中で
姉・葉月が遺産相続を突っぱねたことをメールで知り、
安心した母親は職場に欠勤取りやめの電話をして引き返すシーン
そそくさとバッグからおにぎりを取り出して
その場に立ったままおにぎりにかじりつくのですが
あれは、すぐ後ろの座席にドサッと座り込んで
おにぎりをゆっくり食べてほしかったと思いました。
それならば、おそらくはおにぎりというアイテムに込められたであろう
「安心」をさらに表現できたと思うのです。
(おにぎりに込められているのが「鎮静」であれば、
 母親のシーンは納得がいくものの、
 逆に姉妹たちのシーンのおにぎりが持つ意味が
 あやふやになってしまいます)

父親の死を巡る旅から帰ってきた姉妹は
仕事中の母親と合流します。
仕事終わりで、姉妹が待ついつもの河川敷に駆けつけた母親が
喪服姿なのに、姉妹がそのことに一切触れないのは
さっぱりわかりませんが
そんなことより、ラストでびっくり。
あれ、必要か?


『チチを撮りに』の「チチ」がカタカナになっているのは
「乳(ちち)」とかけているそうで
序盤でなぜか姉妹がおっぱいをさわる演出は面白かったものの、
ダジャレ以上の効果はなく、
「乳(ちち)」=母性とひっかけた意図もあいまいです。
それなら、父親の実家には身重の女性(いじきたない)がいるのだから
出産したばかりという設定にして、
赤ちゃんがおっぱいを吸うシーンを見せられたほうが
いろんなものを感じとることが出来たように思います。

父親は最後まで顔を見せないほうがよかったんじゃないかとか、
ほかにもいろいろありますが
もっと観客を突き放して(=観客の知性を信頼して)
余裕を持った作品づくりをしていただけるなら
中野量太監督の今後の作品に期待してみたい、
そんな作品でした。





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