" />

メビウス

moebius.jpg



(原題:Moebius 2013年/韓国 83分)
監督・製作・脚本・撮影・編集/キム・ギドク
出演/チョ・ジェヒョン、ソ・ヨンジュ、イ・ウヌ

概要とあらすじ
「嘆きのピエタ」でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した鬼才キム・ギドクの監督作で、その狂気に満ちた過激すぎる内容から韓国で上映制限がかけられた問題作。韓国のとある上流家庭。夫の不倫に嫉妬心を燃えあがらせた妻は、夫の性器を切り落とそうとするが失敗し、自分の息子に矛先を変える。妻は夫と息子を残して家を飛びだし、性器を失った息子は生きる自信さえもなくしてしまう。息子への罪悪感に苦しむ父は、ある方法で解決策を見出し、息子と新たな関係を築いていく。ところがそこへ、行方をくらましていた妻が帰ってきて……。全編にわたってセリフを排し、「笑う」「泣く」「叫ぶ」の3つの感情要素だけで、人間の欲望や家族についての壮絶なドラマを描いていく。夫役に「悪い男」のチョ・ジェヒョン。(映画.comより



永遠に繰り返されるチ○コ争奪戦!

僕が説明的なセリフの多い映画が嫌いな理由のひとつは
「お前らはセリフで説明してやんなきゃわかんないだろ?」
バカにされているように感じるからです。
ま、セリフで説明されないとわからないバカな観客が
相当数ほんとにいるから面倒なのですが
受け手の知性をみくびった表現は劣化の一途を辿り、
劣化した表現は、さらに劣化した受け手を産むのです。

それにひきかえ……ていうわけじゃないけれど、
キム・ギドク監督『メビウス』は、なんと無言劇
呻き声や泣き声以外のセリフは一切ありません。
もともとキム・ギドク監督作品はセリフが少ないのですが
今作は言語的思考をより一層排除したかったのかもしれません。
言葉を発しないことがあきらかに不自然なシーンが多く、
まるでパントマイムをみているようです。
良心的に解釈すれば、無声映画への原点回帰ともとれます。
それは、セリフがないということに留まらず
観客が普段はとくに意識せずに受け入れている
モンタージュという映画の原始的な手法の有効性を際だたせます。
編集によって繫がれたカットとカットの相対的な関係によって
物語を見失うことはありません。
そのかわりというべきか、映画は物語の時間軸に忠実に進行します。
(さすがに無言劇で時間軸をずらされたら混乱するかも)

物語は、まさにキム・ギドク節というべき肉弾愛憎劇。
父(チョ・ジェヒョン)の浮気に堪忍袋の尾が切れた母(イ・ウヌ)
父の虚勢を試みるも失敗。それじゃあってことで
息子(ソ・ヨンジュ)のムスコを切断します。
朝っぱらからワインを飲んでやさぐれているようすからすると
母はかなり精神的に病んでいるもよう。
だからって、息子のチ○コを切っちゃうことないだろ!
と、思わないではありませんが
父の浮気は性欲=チ○コがあるからで、
やがて大人の男になった愛する息子が性欲に翻弄されないように
邪悪なものを切り取ってしまおうと考えたのでしょう。
その発想は『愛のコリーダ(1976)』の阿部定と似ているようで
性欲の悪しきループを断ち切ろうとする点において
微妙に違います。
もちろん、いびつな発想なのですが
この母親の発想がこの作品のテーマの基盤になっています。
性欲の、新たな生命を産み出す神聖な側面と邪悪な側面は
表裏一体となってループしている
というのが
タイトルの「メビウス」が意味するところでしょう。

当然、マ○コあってのチ○コなわけですが
マ○コは隠喩として表現されることはあっても
なかなか具体的な扱い方はされないのではないでしょうか。
命を吹き込む御神木であり、卑しい欲望のシンボルとして
やっぱりチ○コのあの造形は表現にうってつけなのです。

83分という短い上映時間のせいか、物語はトントンと進みます。
息子のチ○コを切った母は失踪。
あ、その前に母は切り取った息子のチ○コを食べちゃいました。
父は息子を抱きかかえて病院に駆け込みます。
息子が入院せず、翌朝に帰宅するのは早すぎないかとか、
小便するのもままならなくなった息子が
便座に座ってすればいいものを、
あいかわらず立ちションしてズボンを濡らしているのはなんでだよとか、
首をかしげる部分はあるけれど
とにかく、自分の浮気のせいでチ○コを切られた息子に責任を感じた父は
自分のチ○コを息子に移植する決意をするものの、
移植の成功例はまだないらしいことをググって知ります。

父の浮気相手の女は、
突然父の態度が冷たくなったことに腹を立てているものの、
息子(チ○コなし)が女のもとを訪れると
おっぱいを見せて息子を誘惑します。
母と女を一人二役で演じるのはイ・ウヌですが
メイクと髪型でまったく印象が変わるから恐ろしいものです。
(でも、おっぱいは同じ♡)
経営しているのか雇われているのかわからないけれど、
この女がいるのが、いかにも流行ってなさそうな食料品店なのが絶妙で、
女が着ている丈が短いワンピと同様に、隙だらけなのです。
もちろんそれは、女が誘惑を意図した隙でもあります。

いじめっ子たちに襲われていた息子を助けてくれたあんちゃんグループは
一見頼りがいがありそうだったものの、
店の女をレイプし、息子もいやいやながら荷担してしまいます。
レイプは、チ○コの邪悪な暴力的側面の象徴でしょう。
息子はチ○コがないので、実際にはレイプをしていないのですが
犯行グループの一員として逮捕・拘留されることになり、
チ○コのなくなった息子が小便しづらくなっただけでなく、
性欲をも満たせなくなったことを悟った父は
やっぱりググって発見した、
自傷行為による性欲の解消を息子に勧めるのです。
んな、アホな!
息子のためにすでに自分のチ○コを切り取っていた父は
ひとまず、自分の足の甲を石でゴリゴリやって
「これならイケる!」と試してみる
のですが、
これがもう、見ているだけで身をよじるほどいかにも痛そう。
あれでほんとに気持ちよくなるかなあ?
(絶対に試してみたくないけど)
とにかく、これで息子は父を見直して親子仲が回復します。

出所した息子が女のもとへ向かうと
女は息子を受け入れ、石でゴリゴリどころか
ナイフで肩をグリグリして息子に快感を与え
息子と女との不思議な関係が生まれていきます。
息子より遅れて出所した主犯格のあんちゃんが
女に誘惑されるがままに女の店へ行ってチ○コを切られ、
切断されたチ○コを息子と奪い合いながらのたうちまわり、
挙げ句の果てにチ○コがトラックに踏みつぶされるシーン

完全にコメディで、笑ってしまいましたが
チ○コがなくなるということが(少なくとも男にとって)
手足がなくなる、もしくは眼や耳が使えなくなるということとは
まったく別の特別な喪失感があるように感じました。

これまたググって、アメリカでチ○コの移植が成功したことを知り、
ついに父のチ○コが息子に移植されます。
そこへ失踪していた母が戻ってくるのです。
息子にチ○コがあって、父にチ○コがないことに驚く母。
(↑なんなんでしょうか、この文章は)
そこで母というより女に目覚めた(蘇った?)母は
『嘆きのピエタ』と同様に
眠りながら欲情する息子を手コキしてやるのです。
その事実を知った父は、母を抱いて取り戻そうとするのですが
なんせチ○コがないので、手の甲を石でゴリゴリします。
その愛用の石が枕元にあったのが、可笑しくも悲しい。

それでも、父のチ○コがついた愛する息子に欲情を抑えきれない母は
口紅を差し、裸になって息子を誘惑するのです。
今度は、父の堪忍袋の尾が切れて
冒頭のシーンと同じく仏像のなかに隠されていたナイフを取り出し、
(ていうか、息子のチ○コを切ったときの血がついたまま
 もとにあった場所に戻すかね? つーか、そもそもあれは護身用なの?)
それ、もともとオレのじゃん? やっぱ、俺のチ○コ返せー!
とばかりに、息子のチ○コを切り取ろうとする
のでした。
えーっと、この人たち、経験からは何も学ばないようです。
ここも完全にコメディでしょう。

難を逃れた息子はあいかわらず眠りながら欲情し、
夢精している間に、
父は母を殺し、自らも銃で自殺します。
眼を覚ました息子は父と母が階段で死んでいるのを発見するのですが、
いや、銃声で目が覚めるだろ。
その直前、一人称的な映像に変わるのですが
これは意図がよく分かりませんでした。
画面の端に見切れていた黒い影はなに?
ま、とにかく、全部こいつが悪いんだ!とばかりに
自分のチ○コを銃で撃つ息子。
なにかを悟ったらしい息子は
仏具店の前でひとつの仏像に懐中電灯の光を当てて、
カメラ目線でニンマリするのでした。

牧師を目指していたこともあるキム・ギドク監督は
キリスト教をよくモチーフにしますが、今回はどうやら仏教のようです。
『春夏秋冬そして春』『悪い男』『サマリア』などから一貫する
欲望と執着、性的な倫理観と本能との軋轢
描いているように思えました。
こういうと、なんだかとっても深遠なことを描いているように聞こえますが
イヤらしいことするなっていうけど、
自分たちだってイヤらしいことして子供作ったんだろ!
という、
「王様は裸だ」的な、わりと子供じみた着眼点を
(もちろんそれは稚拙ではなく、あいかわらず重要なんだけども)
素直かつ執拗に繰り返しているな、といった印象です。

あいかわらず、作りの粗さは気にはなるんだけど
やっぱり観ちゃうよな、ていうキム・ギドク作品でした。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ