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ザ・シャウト さまよえる幻響

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(原題: The Shout 1978年/イギリス 86分)
監督/イエジー・スコリモフスキ 製作/ジェレミー・トーマス 原作/ロバート・グレイブズ 脚本/マイケル・オースティン、イエジー・スコリモフスキ 撮影/マイク・モロイ 美術/サイモン・ホランド 編集/バリー・ビンズ 音楽/アンソニー・バンクス、マイケル・ラザフォード、ルパート・ハイン
出演/アラン・ベイツ、スザンナ・ヨーク、ジョン・ハート、ティム・カリー

概要とあらすじ
ポーランドの奇才イエジー・スコリモフスキ監督が1978年に手がけた異色のサスペンススリラー。叫び声で人を殺すことのできる男に人生を狂わされていく夫婦の運命を、現実と幻想を織りまぜた特異な構成で描き、第31回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した。精神病院で開催されるクリケット大会のスコアラーを任されたロバートは、そこで出会ったクロスリーという男から奇妙な回想話を聞かされる。妻とふたりで暮らす音楽家アンソニーは、教会からの帰り道に謎の男クロスリーに出会う。クロスリーはなぜかアンソニーの自宅に押しかけ、かつて自分の子どもを殺したこと、そしてオーストラリア先住民から叫び声で人を殺す能力を授けられたことを夫妻に打ちあける。出演は「ローズ」のアラン・ベイツ、「ひとりぼっちの青春」のスザンナ・ヨーク、「エレファント・マン」のジョン・ハート。(映画.comより



それ以上近づくと叫ぶぞ!

作品ごとに異なるアプローチをみせる
イエジー・スコリモフスキ監督の映画は
つかみどころがないけれど、
独特のシニカルな視点が魅力です。

『ザ・シャウト さまよえる幻響』
叫び声で人を殺せる男が主人公の超能力ものみたいなお話。
よく考えると、
「それ以上近づくと叫ぶぞ!」というのが脅しになるのですから
防ぐのは難しそうだし、ちょっと滑稽でもあります。
そんなシーン、ないけど。

冒頭で、慌てたようすの女性が病院に駆けつけ、
死体に被せられた布を剥がすシーンから始まったかと思うと
すぐに、海軍の元帥の格好をした男
砂漠(じつは砂丘)をくねくね歩いてきてカメラに近づくと
また次のシーンでは、クリケット大会が行なわれている精神病院へと
シャッフルしたかのように舞台が移り変わり、
当然ながら、なにが始まろうとしているのかわからず混乱します。
この作品は時間軸をずらすだけでなく、
意図的に事実関係を曖昧にしているのです。

クリケットの作法をよく知らないのですが
移動式の小屋に入ったふたりのスコアラーのうち、
語学が堪能だというクロスリー(アラン・ベイツ)
自分の過去を回想する形で物語が始まります。
砂丘で日光浴をしているらしきアンソニー(ジョン・ハート)
レイチェル(スザンナ・ヨーク)
砂の中からとがった骨を見つけたり、
レイチェルのサンダルの金具がなくなっていたりと、
不穏な出来事の前触れが示されるのですが
この時点でクロスリーは、まだアンソニーたちと出会っていないので
すでにクロスリーの視点で語られているわけではありません。

アンソニーは教会でオルガンを弾いたりしているミュージシャンですが
自宅のスタジオでは、
さまざまな音をサンプリングしてはエフェクトをかけて聞いているものの、
曲を作っているとは言いがたいようす。
アンソニーがミュージシャンで、音を収集していることは
クロスリーが叫び声で人を殺せることと深く関連しているはずで、
集めた音を閉じ込めては歪めているアンソニーと
ひとの生命を脅かすほどの影響力を及ぼすクロスリーの叫び声が
対照的に描かれている、はずですが……わかりません!

なぜアンソニーに目をつけたのかわかりませんが
クロスリーは、難癖をつけて
アンソニーとレイチェルの夫婦が住む家に入り込みます。
ずうずうしいわ、態度はでかいわで
ホントにクロスリーにはイライラするのですが
黒ずくめのクロスリーは明らかに邪悪な存在。
夫婦の生活は狂い始めます。

3人が食事をしながらの会話で、
クロスリーはオーストラリアで18年間暮らし、
子供を殺した
ことを打ち明けます。
一方、苦笑いをしながら場を取り繕うアンソニーでしたが
なぜかレイチェルは、自分たち夫婦に子供が出来ないという
立ち入ったことを告白するのです。
クロスリーの子殺しと併せると
もしかしたらレイチェルには中絶の過去があるのかもしれない、
なんて想像してみたりします。
また、アンソニーに色目を使う女性が登場するので
アンソニーがその女性と浮気中の可能性もあります。

早朝に砂丘へ連れ出されたアンソニーは
耳栓をして、クロスリーの「叫び声」を目の当たりにします。
バタバタと倒れる羊飼いと羊たち。
どうやら距離が遠いと叫び声の影響は薄まるようす。

やがてクロスリーは、レイチェルを寝取ってしまい、
アンソニーが疎外されるようになります。
アンソニーのスタジオには、
フランシス・ベーコンの絵画の切り抜きが張ってあるのですが
情事の後のレイチェルがベッドから降りたとき、
一瞬だけ画面がモノクロになって
フランシス・ベーコンの絵画、
「Paralytic child walking on all fours (from Muybridge)」
(四つん這いで歩く中風患者の子供(マイブリッジより))と
同じポーズを取るのです。
マイブリッジは映画やアニメの原型といわれる連続写真を撮った人。
ほら、みなさん、もうおわかりですね?
……わかったら、教えてください。

魂が石に乗り移ることに気づいていたアンソニーは
砂丘へと急ぎ、
なぜその石なのかはわからないけれど、ひとつの石を砕くと、
クロスリーは「魂が4つに砕けた」と、のたうち回るのです。
すると、突如現れた警察によって
子殺しの容疑で逮捕されるクロスリー。

クロスリーの回想録はこれで終わり、
再びクリケット大会が行なわれている精神病院へ。
雨が強く降り始め、クロスリーが暴れ始めると
スコアラーの小屋を落雷が襲い、クロスリーは死んでしまいます。
そして、冒頭のシーンが繰り返され、
慌てて駆けつけたレイチェルが布を剥がすと
そこにはクロスリーが横たわっているのです。

なんとも奇妙な物語ですが
クロスリーが語る回想が真実だとは限りません。
アンソニーはクリケット大会に選手として参加していて、
医師だとも患者だとも受けとれるし、
どうやらレイチェルは看護婦のようなので、
身近にいる人物を配役して創作したクロスリーの妄想だと
考えることも出来そうです。

真実はクロスリーに聞いてみないと、わかりませんな。
(余計にわからなくなるかも)





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