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天才スピヴェット

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(原題: L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet 21013年/ フランス・カナダ合作 105分)
監督/ジャン=ピエール・ジュネ 原作/ライフ・ラーセン 脚本/ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン 撮影/トマス・ハードマイアー 美術/アリーヌ・ボネット 衣装/マデリーン・フォンテーヌ 編集/エルベ・シュネイ
出演/カイル・キャトレット、ヘレナ・ボナム・カーター、ジュディ・デイビス、カラム・キース・レニー、ニーアム・ウィルソン、ジェイコブ・デイビーズ、ドミニク・ピノン

概要とあらすじ
「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督が自身初の3D映画として、ラルフ・ラーセンの冒険小説「T・S・スピヴェット君 傑作集」(早川書房刊)を映画化。気持ちがバラバラになってしまった家族を元に戻そうと奮闘する、天才少年の葛藤や成長を描いた。米モンタナに暮らす10歳の少年スピヴェットは、天才的な頭脳の持ち主。しかし、時代遅れなカウボーイの父と昆虫の研究に夢中な母、アイドルになりたい姉という家族に、その才能を理解してもらえない。さらに弟が突然死んでしまったことで、家族は皆、心にぽっかりと穴が開いていた。そんなある日、スミソニアン学術協会から権威ある科学賞がスピヴェットに授与されることになる。家族に内緒で家出をし、数々の困難を乗り越えて授賞式に出席したスピヴェットは、受賞スピーチである重大な真実を明かそうとするが……。(映画.comより



飛び出す! 大人は判ってくれない

ジャン=ピエール・ジュネ監督の初3D作品
『天才スピヴェット』
3D恐怖症の僕は今回もやっぱり2D鑑賞です。
残念、といえば残念なのですが
3Dがトラウマになる前から
暗くてぼんやりするだけの3D映画には疑問を持っておりました。
(IMAXとかはいいらしいけど……ね)
何度目かのブームを迎えている3Dですが
これからもどんどん増え続けるんでしょうか……
やだなぁ。

それでも、
ああこれは3Dの効果を狙って撮られてるなというカットが
随所にあったことはわかりました。
しかもこの作品の3Dの使い方は、
立体的に見せるもしくは遠近感を出して仮想現実感を与えるという
従来の3D効果を狙ったものではなく、
現実感よりもむしろ違和感を感じる3Dの効果を逆手にとって
脳内に思い描く妄想や、いわゆる「共感覚」を表現するために
用いられていると感じました。
これなら、ジャン=ピエール・ジュネ監督の
これまでの作風を考えればぴったりきます。
では、その独特な3Dの使い方はいかほどのものなのかは、
しつこいようですが2D鑑賞なのでわからないものの、
この作品が「飛び出す絵本」で始まり、
「ビューマスター」で終わる
ことを思えば
ジュネ監督が自分流の3Dの遊び方を示したと
考えてもいいのではないでしょうか。

さりとて、それでもやっぱり
観客席に向かって尖ったものを向けるとかの
従来どおりの3D効果を狙ったカットもそれなりに多くあり、
とっくに食傷気味な3D演出にはがっかりでした。
そういう「3Dアトラクション」的な演出
いまさら驚き喜ぶ客はいるんでしょうか。(子供とかか?)
そんなのは、ネズミの国の「キャプテンEO」
終わってるでしょ。(古すぎ?)

さて、肝心の物語はというと
『天才スピヴェット』というからには
天才的な知能を持った10歳の少年、
スピヴェットくん(カイル・キャトレット)
驚くべき発想と活躍を描いているかと思いきや、
そこはさほど重要ではありません。
いやいや、もちろんスピヴェットの才能の素晴らしさは
描かれているものの、
(半)永久磁気装置なんて説明を聞いても
なんだか凄すぎて凄さが理解できないし、
スピヴェットが天才的頭脳で大人を打ち負かすわけでもありません。
この作品は、あくまで家族を描いた物語であり、
少年が自分の居場所を求める旅を巡る物語なのです。
そこには自己実現へ向けての通過儀礼だけではなく、
二卵性双生児の弟の死に対する罪悪感も上乗せされています。
スピヴェットの天才的頭脳とは、
子供が考えていることを見くびって「子供扱い」し、
まともに取り合おうとしない大人たちに対するアンチテーゼ

象徴のように思います。

貨物列車に忍び込んで家出をするなんて
想像するだけでもワクワクしますが
トラブルに巻き込まれたり、ホームシックになったりしながらも
折々で登場する気のいい大人たちに助けられたスピヴェットは
(最初に登場する放浪者風のおっさんが
 コンテナの扉をガチャン!と閉めたときには
 「いたずら」されるんじゃないかと嫌な想像をしたけれど)
自らの研究を表彰されるべく、
ワシントンD.C.のスミソニアン博物館へとたどり着きます。

見せ場の受賞スピーチは、ジョークを交える余裕も見せ、
3つめのエピソードとして語る弟の事故にまつわる告白
彼を親のような気持ちで観ている観客の涙腺を刺激します。
正直に言うと、なぜいまその話を?
と思わなかったわけではありませんが
キュンときたのは本当です。
じつはそのスピーチを母親(ヘレナ・ボナム・カーター)
聞いていたというのも、納得のベタさ。

妄想で登場する弟がスピヴェットに忠告したように
ここからが大変で
自分を認めてくれる居場所を見つけた=大人になったと思ったら
そこは魑魅魍魎の世界だったのです。
公式サイトのインタビューから想像するに
どうやらジュネ監督のハリウッドに対する
苦い思い出と怒りが反映されているようす。
さらに、天才科学者ならぬ天才子役カイル・キャトレットくんを
キャスティングしたときに
彼のエージェントの間でいざこざもあったようで
そのことも投影されているというのは考えすぎでしょうか。

どうでもいいことですが、
クソみたいなTV番組中に母親と和解したスピヴェットが
母親に抱きついたときの脚の巻きつけ方
『崖の上のポニョ』で
宗助に飛びついたポニョの脚の巻きつけ方と同じでした。
さすが、童心を忘れないハヤオ。

この作品は、広大で美しい自然も見どころでしたが
なんと、舞台となるアメリカでは1カットも撮影していないのだとか。
ジャン=ピエール・ジュネ監督の
ハリウッド(アメリカ)に対する怨念は相当深いとみた。





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コメント

3Dには3Dの魅力、特にこの映画にはそれが詰まっています。あなたと他の客の考え方を一緒にしないで。少なくとも私はこの物語は3Dで見た方がなお魅力的であり、がっかりするところはありませんでしたよ。

2015/07/16 (木) 23:51:35 | URL | #- [ 編集 ]

Re: 名無しさん

> あなたと他の客の考え方を一緒にしないで。
↑なんのことを言ってるのかと思ったら、もしかして「いまさら驚き喜ぶ客はいるんでしょうか。」の部分?
「驚き喜ぶ客」がいたってことか? へー。そりゃご自由に。
ところで、「いまさら驚き喜ぶ客など一人としているはずがありません!」とでも書いてあったのならともかく、
「いるんでしょうか?」という疑問を持っただけで考え方を一緒にしていると言われてもね。
そもそも他の客の考えなどに興味がありません。

>少なくとも私はこの物語は3Dで見た方がなお魅力的であり、がっかりするところはありませんでしたよ。
↑知りませんよそんなこと。
あなたの感想を考慮したうえで、自分の感想を書けとでも?
「あなたと僕の考え方を一緒にしないで!!」

2015/07/17 (金) 17:48:01 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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