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シンプルメン

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(原題: Simple Men 1992年/アメリカ 106分)
監督・脚本/ハル・ハートリー 撮影/マイケル・アラン・スピラー 美術/ダニエル・オウレット 衣装/アレクサンドラ・ウェルカー 編集/スティーブ・ハミルトン 音楽/ネッド・ライフル
出演/ロバート・バーク、ウィリアム・セイジ、カレン・サイラス、エリナ・レーベンソン、マーティン・ドノバン、ジョン・マッケイ

概要とあらすじ
「アンビリーバブル・トゥルース」「トラスト・ミー」で高い評価を受けたニューヨーク・インディペンデント映画界の気鋭ハル・ハートリー監督が、父探しの旅に出た兄弟と2人の女性が織り成すドラマを描いたロードムービー。恋人に裏切られて逃亡中の泥棒ビルと、その弟で内気な大学生デニス。2人の父は、かつて伝説的な野球選手でありながら、現在はテロリストとして逮捕され刑務所にいた。兄弟は父に面会に行くが、父は刑務所から脱走していた。父を探す旅に出た彼らは、その途中でケイトとエリナという2人の女性に出会う。日本初公開は1992年(フランス映画社配給)。2014年、ハートリー監督作品4本を集めた特集上映で再公開。(映画.comより



束縛のDon't Move 安らぎのDon't Move

DVDに収録されていた
ハル・ハートリー監督のインタビューによれば
『シンプルメン』
前作『トラスト・ミー(1990)』の続編という位置づけだそうな。
それなのに、『トラスト・ミー』を観ていない僕は
完全に観る順番を間違えているのですが……
ま、仕方がない。
とにかく、『トラスト・ミー』で
女性を崇高に描きすぎたと考えたハル・ハートリー監督は
『シンプルメン』で男性の視線を描いて
バランスを取ろうとしたもよう。

目隠しをされた警備員が苛立っている女に
「Don't Move(動くな)」と脅されているシーンから
唐突に始まるオープニングが気持ちいい。
当然、一体なんのことやらさっぱりなのですが
なんだなんだとあわあわするのが楽しいのです。
この作品では、シーンが変わって新たな展開が始まるときは
いつも唐突で、既になにかが起きているので
観ているこっちは、監督の思惑通りにまんまと混乱します。
それでも必死に頭を働かせて理解しようとはせず、
突然放り込まれた予想外の展開に身を任せていると
やがて誰の目にもそれがなんだったのか、
自然と理解できるようになっているのが素晴らしいのです。
これを「事後承諾演出」と名づけようぞ。名づけて進ぜよう。
間違いなくもっと適切な専門用語があるはずだけど
知らないので、そういうことにしておこうぞ。

ビル(ロバート・バーク)を主犯とする3人組の強盗団が
コンピュータを盗んだことはあとになってわかるのですが
ビルは、恋人であり強盗仲間の女性から突然三行半を突きつけられ、
もうひとりの仲間の男からも裏切られるのです。
そして、警備員の男からマリア像のペンダント
譲り受ける(≒奪い取る)のですが
この時点で、男性にとっての女性が理不尽かつ不可解であり、
慈愛に満ちた聖母でもあるという矛盾した存在
として
宣言されているように思えます。

またしても唐突にビルの弟デニス(ウィリアム・セイジ)が登場し、
かつては大リーグ屈指の名遊撃手と謳われたものの、
'68年の国防省爆破犯として服役していた父
に面会に訪れると
病気を患って病院に送られた後で、
その病院へ行ってみると父は病院から脱走したことがわかります。
母から渡された写真の裏に書いてあった電話番号を頼りに
ビルとデニスの父親探しの旅が始まるのです。

なけなしの金をはたいてバスに乗り、たどり着いた先で出会う
バイクと格闘している男や、謎めいた鼻ピアスの少女
警官と取っ組み合いをする尼さんなど、
魅力的なキャラクターが登場しますが
偶然に道ばたでケイト(カレン・サイラス)
エリナ(エリナ・レーベンソン)と知り合ってからが
物語の中心です。
ここでも、エリナが唐突に倒れ込んで痙攣を始めるのを
画面いっぱいに俯瞰で捉えた映像が導入です。

ケイトはやっぱりワケありの魅力的な独身女性で
ビルはすぐにケイトに魅了されます。
エリナは小生意気な少女といった雰囲気で
とくにデニスに冷たく当たるのですが
じつはエリナは、ビルとデニスの70歳を超える父親の
愛人だったのです。

含みを持たせたセリフの応酬によって
それぞれが警戒心を抱きながら、徐々に打ち解け合っていきます。
この作品の最大の魅力はなんといっても
エリナを中心としたダンスシーン。
楽しくも愛おしいシーンですが
エリナ+男ふたりの組合せは
ゴダール『はなればなれに(1964)』のダンスシーン
思い起こさせます。
エリナの前髪が短いボブとボーダーシャツは
アンナ・カリーナのようにも見えます。

オフビートな掛け合いが続いていくようでいて
しっかりサスペンスフルな仕掛けののち、
ついに父親が登場。
自分は国防省爆破犯じゃないといい、
デニスから、じゃあなんで逃げてるのかと聞かれると
「楽しいから」と応えるのです。
アナーキズムの本(←よく見えなかった)を片手に
演説をぶる父親にエリナはメロメロなようす。

自分勝手で女たらしの父親は
周囲に(とくに母親とビルに)迷惑をかけるけれど
冒険するかのように毎日を自由奔放に生きていて
常に非日常を追い求める姿が周囲を魅了するのでしょう。
とくに大学の哲学科を中退したデニスにとって
父親探しの旅は平凡な日常からの失踪=冒険なのです。
おそらく父親に対して怨みを持っているビルは
犯罪に手を染め、一見自由に生きているように見えるものの、
母親をほったらかし、日常からの逃走を続ける父親とは違い、
ケイトとの出会いに安らぎを求め始めます。

警官に囲まれたビルがケイトの胸に頭を預け、
それを優しく受け止めるケイトはまさにマリアのようです。
そして、警官から「Don't Move」と声がかかり
オープニングとの皮肉な円環を成すのです。





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コメント

ハルハートリーの映画良いですよね。それにしてもエリナレーヴェンソンのイラストが可愛いすぎてびっくりしました。。

2016/04/05 (火) 21:16:54 | URL | あ #YsDeiiog [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> ありがとうございます!

2016/04/06 (水) 10:09:02 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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