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月光の囁き

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(1999年/日本 100分)
監督/塩田明彦 脚本/塩田明彦、西山洋一 原作/喜国雅彦 撮影/小松原茂 美術/安宅紀史 装飾/天野竜哉 音楽/本多信介 照明/石丸隆一 編集/菅野善雄
出演/水橋研二、つぐみ、草野康太、井上晴美、関野吉記、藤村知可、相沢しの、真梨邑ケイ、しみず霧子

概要とあらすじ
純粋であるが故に、歪んだ愛欲の世界に落ちていく高校生カップルの姿を描いた青春エロス。監督は、本作で長編デビューを果たした『露出狂の女』の塩田明彦。喜国雅彦による同名コミックを基に、塩田監督と「蜘蛛の瞳」の西山洋一が共同脚色。撮影を「CHAKA〈チャカ2〉」の小松原茂が担当している。主演は、「富江」の水橋研二と「HEAVENZ」のつぐみ。スーパー16ミリからのブローアップ。北綾高校の剣道部に所属する拓也と紗月は、秘かに寄せていた想いを実らせ交際を始めた。ところが、拓也には人には言えない異常な性癖があったのである…(映画.comより抜粋)



最低の変態、最高の恋愛

いやあ、こんな凄い映画があるとは知らなんだ。
最初にいっておきますが、これはもう大傑作です。
え? そんなことはとっくに知ってたって?
すっ、すみませんでしたっ!
無知な僕を踏みつけてください! できれば素足で!

塩田明彦監督作品といえば、
『カナリア(2005)』では
なにひとつ感心するところがありませんでしたが
この『月光の囁き』には、
なにひとつけなすところが見あたりません。

オープニングで、
同級生で同じ剣道部の紗月(つぐみ)に想いを寄せる拓也(水橋研二)
ふたりだけの朝練のあと、
「やっぱり剣道は距離感が大事やなあ」という一言が
すでにこの作品における不可思議な恋愛感情を
言い当てています。
拓也が紗月のロッカーを開けて
恍惚の表情でブルマの匂いを嗅ぐのはぜ〜んぜん許容範囲。
むしろあるある。
ところが、高嶺の花だと思っていた紗月のほうから拓也が告白され、
幸せ絶好調のチャリンコ二人乗り〜あなたの写真ちょーだいからの、
図書館での初キッス

とんとん拍子で恋愛がうまくいく過程は
急ぎ過ぎと感じるぎりぎり手前の絶妙な物語運びで
嫉妬で歯ぎしりしながら、もー、うらやましくてたまりません。
(いいなあ、戻りたいなあ、あの頃に……)

そのうえ、風邪をひいた拓也が自宅で寝込んでいるときに
学校を早退して見舞いに来た紗月は
「(風邪が)うつってもええねん」といいながら拓也にキスをし、
自ら服を脱いで裸になって、初合体するのです。
こんな幸せなことがほかにありますか? ありませんね!
ところが、途中で行為をやめてしまう拓也。
痛がる紗月を気遣ったように装う拓也でしたが
じつはトイレにレコーダーを仕掛け、
紗月が帰ったあとで、
紗月が放尿する音を聞きながら自慰にふけるのです。
そうです。拓也は、ド変態なのです。

拓也がド変態であることに気づいた紗月は
当然のことながら、拓也を嫌悪し、
剣道部の先輩とデートしたりするものの、
拓也に対する気持ちも断ち切れず、
徐々に拓也を罵り、いじめることに喜びを感じるようになるのですが
この紗月の心理が変化する過程が
違和感がなく(変態なのに)、じつに見事です。

前振りからあらかじめ用意された本題に入るときに
無理があったり、唐突さを感じたりすることがよくありますが、
この作品にはそのような齟齬も強引さもなく、
変態を描いているにもかかわらず、
セリフのひとつひとつが至極真っ当なのです。
紗月の指示で先輩とのデートを覗き見ていた拓也が
笑っていたことを紗月に責められると
「紗月だけが誰にも言えん本当のオレを知っとると思うと
 なんや、うれしいてなあ」

と満足そうにいう拓也に対して
紗月が「そういわれて、わたしはどうすればええの?」
と返すのも、仰るとおりだし、
「オレは紗月の犬や」という拓也に対して
「命令や! もう帰れ!」と紗月がいうと
「いやや。犬が投げたボールを取りに行くのは飼い主が喜ぶからや。
 散歩の途中で犬に帰れといっても
 犬は帰らへんやろ?」

という、犬に喩えた説得力がものすごく的確だったりするのです。
犬の気持ちがわかる拓也……
先輩とのセックスを覗かせるために
押入に閉じ込められた拓也が
「これに耐えたらオレのこと、許してくれるか?」と聞くと
紗月が「許して欲しかったとは知らんかったわ」と返すのも
まったくもって、言い得て妙なのです。

拓也は、もともとドMのド変態だったのが表面化しただけですが
紗月が拓也のドMに対応するように
ドSに変化していくさまが見どころ
です。
拓也は紗月に従属しているようにみえますが
じつはこのふたりの恋愛において
主導権を握っているのはドMの拓也のほう
端から見れば、紗月の意地悪にしかみえない行為でも
拓也はそれに喜びを感じ、
紗月も拓也を喜ばせるためにいじめているのですから
なんの問題もなく、むしろいちゃついているだけなのです。
つくづく、SMの世界は奥が深い。
間違いないのは、
拓也が誰よりも深く紗月を愛していて、
紗月は拓也の愛情に応えようとしているということです。

もっとも重要なのは、この作品が
このような変態的な性愛を茶化していないことでしょう。
少し変わってはいるけれど
あくまであるひとつの恋愛の形として
表現しているのが素晴らしいと感じました。

残念ながら、原作の漫画は読んだことがないのですが
このふたりが剣道部所属なのも原作からだそうで
剣道というスポーツが
面(=仮面)を被って行なうということ、素足だということ、
ひとたび面を取れば、汗にまみれて体臭を放つということも含めて
絶妙かつ的確な設定だと思いました。

生理的に嫌う人もいるかもしれないけれど
ちょっと冷静に考えてみると
これは、最高の恋愛映画かも知れませんよ。





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コメント

映画館で上映してる時に眼帯していくと割引きになるって企画あったんですよ。眼帯していきませんでしたが。笑
上映中に痴漢未遂にあってびっくりしました。逃げたらその人出てってしまったんですが映画面白かったのになにしに来たんだって感じでした。

原作の漫画とはかなりちがうラストですがこちらはこちらで良かったです。

2015/05/16 (土) 13:34:27 | URL | あお #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

>あおさん
コメントありがとうございます。
そんな企画があったんですね。映画観づらっ!(観るときはずすのか?)
しかもチカンですか! ハッテン場か!
お気の毒に。

2015/05/16 (土) 19:57:22 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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