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オフサイド・ガールズ

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(原題: Offside 2006年/イラン 92分)
監督/ジャファル・パナヒ 脚本/ジャファル・パナヒ、ジャドメヘル・ラスティン 撮影/ハマムード・カラリ 音楽/コロシュ・ボゾルグプール 美術/イラジュ・ラミンファル
出演/シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ、M・キェラバディ、イダ・サデギ、ゴルナズ・ファルマニ、マフナズ・ザビヒ、ナザニン・セディクジャザデ

概要とあらすじ
女性のサッカー観戦が法律で禁止されているイランを舞台に、男装してスタジアムに潜り込んだ少女たちの姿をユーモラスに綴るハートフル・ストーリー。ドイツ・ワールドカップへの出場を賭けた大事な試合に忍び込もうとした1人の少女。入り口であえなく兵士に見つかってしまった彼女は、同じように捕らえられた少女たちと一緒にスタジアム内に勾留されるが……。監督は「チャドルと生きる」のジャファル・パナヒ。(映画.comより



無意味な規制にオフサイド・トラップ

観たいなあと思いながら時が過ぎ、
観たいなあと思っていたことすら忘れていた
『オフサイド・ガールズ』のことを思い出したのは
『少女は自転車に乗って』を観ていたときでした。
かたやサウジアラビア、こちらはイランのお話ですが
ともに中東の国に生きる女性を題材にした映画です。
とはいえ、中東の中でもイランは特別なようでして
以下、公式サイトより引用。

 よく誤解している人も多いがイランはアラブ系の国ではない。
 アラブ人とは主にアラビア半島から周辺に進出し
 アラビア語を母語としている人々をさす。
 これに対し、イランはペルシャ文明発祥の地であり
 母語はペルシャ語である。このあたりややこしいのだが、
 いずれもイスラム教を国教にしながら、
 イランでは多数派のスンニ派ではなく、
 少数派のシーア派を国教としている。
 このシーア派を国教としているのは世界でイランだけ、
 つまり中東では唯一宗教の異なる国でもある。


……ね?(なにが、ね?だよ)

2006年ワールドカップドイツ大会といえば
中田英寿が旅人になる前の最後の大会ですが
そのドイツ大会出場を賭けた2005年6月のアジア予選、
イラン vs バーレーン
の試合会場へと向かうバスから
映画は始まります。

女性のスポーツ観戦が禁じられているイランにも
サッカーが大好きな女の子たちはいて
彼女たちは男になりすまし、
スタジアムにもぐり込もうとしている
のです。
バスの中ですでに大騒ぎの男性サポーターに混じって
ひとりぽつねんと座席に座っているのは男装した少女。
男性たちも彼女が少女だとわかっていながら
気づいていないふうを装っているのが
すでに人々の微妙な感情を表しています。
彼らは女性にもサッカーを見せてやればいいじゃないかと
内心は思っている
のです。
男たちのうちのひとりは、その少女に向かって
「オレは君の味方だよ。オレが守ってやるよ」
なんてことを言います。
当然、このふたりが
物語の中心になっていくんだろうと思っていたのですが
少女に声をかけた男性はその後登場することはありません。
少女のほうも特別なヒロインというわけでもないのです。

ダフ屋にぼったくられながらもチケットを手に入れた少女は
びくびくしつつ入場ゲートに向かうも
案の定女性だとバレて逮捕され、
スタジアム外にゲージで囲まれた場所に一時拘留されてしまいます。
そこはスタジアムに入場しようとして逮捕された女性が
集められる場所
なのです。
スタジアムの歓声だけが聞こえてくるその場所が
じれったさを倍増します。
それを表現するためか、この作品には
終盤の小さなテレビ画面を除いて、試合のようすが一切登場しません。

逮捕された女性たちの中には
軍服を着込んで兵隊になりすました強者までいますが
男装していなくても男みたいな口の立つ女性が
逮捕者たちの中心的存在になります。
(彼女たちには役名はありません)
そんな彼女たちが連行されるまで見張っているのは
警備員ではなく、兵隊たちというのもお国柄か。
その兵隊たちのリーダー役の兵隊(なんと実年齢20歳!)は
いかにも高圧的で話の通じない男でしたが
やがてそのリーダーも任期明け間近で面倒を起こしたくなく、
中間管理職的な辛い立場にあることがわかってきます。

口の立つ女性がリーダーに詰め寄り、
なぜ女性は試合を見れないのかと聞くと
リーダーはスタジアムでは汚い言葉が飛び交うからだと答えます。
じゃあ、悪いのは汚い言葉を吐く奴だよなと返されると
うるさいだまれと、逆上してしまうリーダー。
別の兵隊は隙間から試合を覗き見て
逮捕された女性たちのために実況中継をしてやります。
そこで出てくる選手の名前が
マハダビキア、アジシ、カリミ、ダエイ
サッカー好きならなじみのある懐かしい名前。
実況している兵隊も試合の行方に興奮気味です。

兵隊たちはそれが仕事だから女性の観戦を取り締まっているものの、
本当はサッカー観戦を楽しみたいだけなのです。
それは逮捕された女性たちも同じこと。
それじゃあ、一体誰が何のために
こんな理不尽な規制を強いているのか?

市民は誰もそんなことは望んでいないのです。
……ということを、声高にアジるわけではなく
あくまでエンターテイメントとして物語を語りながら
誰しも感じ取れるように表現しているのが本当に素晴らしいのですが
虐げられているはずの女性たちが
イラン代表が得点をあげたのを知って
イラン万歳! と飛び跳ねるのをみると
母国に対する愛情はあるわけで、一筋縄ではいきません。

ついに逮捕者たちを搬送するバスが現れ、
試合の途中で連行されることになった女性たちでしたが
バスのなかでも、せめてラジオを聞かせろと
うるさいうるさい。
それに応えてリーダーは
車外にあるアンテナを電波が入るように手で押さえてやったり、
途中でジュースを買ってやったり、
いたれりつくせりなのです。
ついにイラン代表が勝利を収め、
ワールドカップ出場が決定すると、そりゃあもうみんな大騒ぎさ。
兵隊も逮捕者も関係ありません。
みんなで花火を打ち上げ、爆竹を鳴らして勝利を祝うのです。

この作品は、実際の試合当日に撮影されたそうなので
イラン代表のワールドカップ出場決定で盛り上がる人々が溢れ、
エンターテイメントとして、ちょっぴりビターだけれど
多幸感溢れるエンディングになっているのですが
もし、イランがこの試合で負けていたら、
この作品の結末は違うものになり、
軽やかに伝えようとしていたメッセージが
陰鬱なものになったでしょう。
それはジャファル・パナヒ監督の意図ではなかったはずで
いや、ほんとに、勝ってよかったね。

ジャファル・パナヒ監督には
10分に一度は何かしらのハプニングを起こすという計算があったそうで
深刻な社会問題をエンターテイメントとして表現することで
より一層深く観客の心に訴える演出は見事の一言です。





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