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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

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(原題: Nebraska 2013年/アメリカ 115分)
監督/アレクサンダー・ペイン 脚本/ボブ・ネルソン 撮影/フェドン・パパマイケル 美術/デニス・ワシントン 衣装/ウェンディ・チャック 編集/ケビン・テント 音楽/マーク・オートン
出演/ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク、アンジェラ・マキューアン

概要とあらすじ
「ファミリー・ツリー」「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン監督が、頑固者の父親と、そんな父とは距離を置いて生きてきた息子が、旅を通して心を通わせる姿をモノクロームの映像で描いたロードムービー。モンタナ州に暮らす大酒飲みで頑固な老人ウディのもとに、100万ドルを贈呈するという明らかに胡散臭い手紙が届く。すっかり信じ込んでしまったウディは、妻や周囲の声にも耳を貸さず、歩いてでも賞金をもらいにいくと言って聞かない。そんな父を見かねた息子のデイビッドは、無駄骨と分かりつつも父を車に乗せてネブラスカ州を目指すが、途中で立ち寄ったウディの故郷で両親の意外な過去を知る。ウディを演じた主演のブルース・ダーンが、2013年・第66回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。(映画.comより



目的ではなく、過程が人生

老人が旅をするロードムービーといえば
デビッド・リンチ監督『ストレイト・ストーリー(1999)』がありますが
ロードムービーでは旅の道程そのものが人生の象徴となり、
死を身近に感じている老人が旅をすることには
自分の人生を清算する意味合いが強いように思われます。
加えて、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』では
年老いた父親の旅に息子が同行することで
人生を重ねた老人の個人史を辿る物語に留まらず、
親子史もしくは家族史とでもいうような人生賛歌になっています。
正直に告白すると、
いかにもハートウォーミングそうだという先入観から眉に唾し、
アレクサンダー・ペイン監督の過去作は観ていないので
僕にとってこれが初ペインとなるのです。

「100万ドルの懸賞に当選しました」というインチキDMを見て
遠い街まで100万ドルを受け取りに行くと言い始めた
父親ウディ(ブルース・ダーン)
脚の悪いウディを演じたブルース・ダーンは
まさによぼよぼ、鼻毛もわっさわさ生えたまんまで
本当にこういうじじいなんだろうなと思えるなりきりぶりです。
無口でいかにも頑固そうなウディは
ボケ始めているようにもみえますが
本当にインチキDMを信じていたのかは定かではありません。
インチキだとわかっているけれど、
とにかくなにか行動を起こしたいと考えていたようにもみえるし、
もちろん本当にボケているようにもみえるのです。

オーディオ専門店の雇われ店長をしている
ウディの息子デイビッド(ウィル・フォーテ)
ニュースキャスターの兄ロス(ボブ・オデンカーク)と比べても
いまいち冴えない男です。
こう言っちゃ悪いけど、美しいとは言い難い
でっぷり太った恋人からは三行半を突きつけられ、
それでも復縁を迫った挙げ句に、たまにならセックスさせてくれるかと
頼むあたり、やっぱりどうしようもなく冴えない。
そんな冴えないデイビッドだからこそ
父親ウディにシンパシーを感じ、
無益な旅に同行することにしたのではないでしょうか。
そうでなくとも、年老いた親に特別なことはなにもしてやれないけれど
一緒に過ごす時間を増やしたいという思いは
十二分に理解できます。
デイビッドに扮するウィル・フォーテは
いかにも気弱そうで優しい顔立ちですが
サタデーナイトライブに出演するコメディアンだそうで
しかもすぐに裸になる江頭2:50みたいな芸風なんだとか。

ウディとデイビッドのネブラスカ州を目指す旅は
コメディ要素満載で、
酔っぱらって線路で転んだウディの入れ歯を探しに行くシーンでの
この親子のくだらない嘘の付き合いが最高です。
ウディがボケているかどうかは微妙ですが
耳が遠いのは間違いなく、
デイビッドが何か言うと、ウディは必ず「あん?」と聞き返し、
もう一度同じことを声量を上げて言わないと伝わらないというのは
老人あるある
でしょう。
仕方ないと判っていても結構いらついちゃうんですよ、あれ。

旅の過程で、
デイビッドが知らなかったウディの過去が少しずつ判明します。
誰しも人生の紆余曲折を経て現在に至るわけですが
本人に聞いてもわからないか、話さないことは山ほどあるでしょう。
また、両親の話を聞いてみたいと思うような年齢になった頃には
すでに両親は他界しているということもあるでしょう。

ウディの家族が眠る墓地を訪ねるシーン
デイビッドの名前が
2歳で亡くなったウディの弟に由来することがわかり、
セリフでは何も語らずともデイビッドに託された
ウディの愛情が伝わります。
途中から同行したウディの妻ケイト(ジューン・スキッブ)
墓標を見ながら家族の歴史を説明する間に
一瞬映されたウディの物憂げな表情からは
インチキDMに端を発するこの旅の目的が
じつはウディが自分の過去と再会することだったのではないかとさえ
思えてきます。

ウディの妻ケイトは、いつもガミガミと口うるさく、
何に対しても明け透けで、
墓標にまたがってスカートをめくるようなビッチばあさんなのですが
ウディが100万ドルを手に入れると知って集まった親戚が
しつこく無心するのを見かねて
「Go Fuck Yourself !!(くたばっちまえ!)」と叫ぶのが痛快です。
ケイトと、無口で人を信用しやすいウディの夫婦は
絶妙な(極端な?)バランスで成り立っているのでしょう。
人にはそれぞれ役目ってもんがあるんですな。

当然、目的地に到着しても100万ドルは手に入らず、
ウディとデイビッドは帰途につくのですが
ウディが欲しがっていたトラックとコンプレッサを
デイビッドがプレゼントするという粋な計らい。

トラックの運転を代わってもらったウディ(無免許)が
旧い知り合いの前を通り過ぎるシーンは
まさに夢を実現させた男の凱旋
といったところ。
ひとしきり英雄気分を味わったウディが
再びデイビッドと運転を交代するラストシーンは
文字通り世代交代であり、
親から子へと引き継がれる人生を象徴しているかのようでした。

ネブラスカ州生まれのアレクサンダー・ペイン監督は
小津安二郎の大ファンだそうで、
全編モノクロの世界観は「OZU」の影響かもしれません。
なんにもない場所の代名詞といわれるネブラスカ州の
広大な自然も見どころです。

もらえるはずもない100万ドルを目指す旅に
意味も価値もないといわれればその通りですが
有名になっても、大金持ちになっても
死んでしまえばすべて水泡に帰するのですから
なにかを目指して旅することそのものが人生であって
結果的になにも手に入らなかったとしても
その人の人生を貶める根拠にはならないのではないでしょうか。





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