" />

悪人に平穏なし

akuninniheionnashi.jpg



(原題:No habra paz para los malvados 2011年/スペイン 114分)
監督/エンリケ・ウルビス 脚本/エンリケ・ウルビス、ミシェル・ガスタンビデ
出演/ホセ・コロナド、フアンホ・アルテロ、ロドルフォ・サンチョ、エレナ・ミケル

概要とあらすじ
2004年3月11日にスペインの首都マドリードで起こった列車爆破事件を題材に、テロ組織の犯行計画に単身で立ち向かう中年刑事の生きざまを描いたハードボイルドサスペンス。かつては敏腕刑事として活躍していたサントスだったが、過去のある事件がきっかけで左遷され、いまは酒に溺れる日々。そしてある晩、泥酔したサントスは、酒場で揉めごとを起こした末、店内にいた3人を射殺してしまう。証拠隠滅のため、現場から立ち去った目撃者の後を追うサントスだったが、その過程で大規模な犯罪計画を練るテロ組織と接触。殺人事件の容疑者として警察から追われる一方で、刑事としてまだ残っていた最後の正義感から、たった1人でテロ組織と対じする。12年ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門を制した。(映画.comより)



わかんねえよ!

決して二枚目とは言えない無骨な顔立ち、
加齢臭がぷんぷんしそうな中年男が主人公の
ハードボイルド・サスペンスと聞いて、
これは面白いぞと踏んで、自分の映画鑑賞リストに加え、
観ると決めたからには敢えて余計な情報は入手せずに
映画館へと足を運んだのでした。

恥を忍んで告白すると
僕にはまったく話の筋がわかりませんでした!
抽象的な表現をどう理解すればいいのかわからないのではなく
まったくもって単純にストーリーが理解できないのです。
わはは。笑っている場合じゃない。
観ていてここまでストーリー展開に混乱する作品は
自分でも記憶がなく、新鮮な驚きといえばそうだけども
一体今何が行われているのかすらもわからず
終盤に近づくほど頭の中が???で埋め尽くされていくのは
なんというか、あまり心地のいいものではありません。

普段、あらすじをなぞるようなことは
できるだけ避けるようにしているのですが
物語の発端を説明するためには不可欠だと思い
オープニングからのシーンをちょっと追ってみます。

あからさまにいらついて見えるサントス(ホセ・コロナド)
どうやら酒浸りのようで、すでに泥酔。
閉店した店から追い払われ、仕方なく帰る道すがら
「クラブ レイディ」のネオンを見つけ、
もう一杯ひっかけるべく店内へと入るも、
ここもすでに閉店の準備中でカウンターにはバーテンの女が一人。
「一杯だけ飲ませろ」とごねていると
若い男が登場して険悪なムードに。
さらに、サントスは胸ポケットから警察手帳を取り出し、
それを楯に店員を脅すというところで
サントスが刑事、しかもクズ刑事であることが判明します。

そこに、まあまあと登場するのが店のオーナー
その場を取り繕うついでに、一杯おごって
サントスに取り入ろうとするのですが、
オーナーがサントスの肩に手をかけた瞬間、サントスがブチ切れ。
オーナーの頭をつかんでカウンターに叩きつけ、
続けざまに若い男に向け発砲。逃げる女の背中に一撃。
床に倒れて苦しむオーナーに2発打ち込んでとどめを刺し、
あっというまに3人を殺してしまうのです。

床に落ちた薬莢を拾い集め、証拠隠滅したあとに
監視カメラの映像を持ち帰ろうとしたところで
隠れていたもう一人の男に遭遇。取り逃がしてしまいます。
翌日、サントスは大量のゴミが投棄してある場所で
殺した若い男が持っていたホテルのカードキーを残して
すべての証拠品を処分してしまいます。
おそらくは、そのカードキーを最初の手がかりに
唯一の目撃者捜しの物語が始まるであろうと予測させるのです。

このへんまでは、ワクワクしていたんです。
どうしようもなく非道い男、しかもそれが刑事ということで
これは面白くなるに違いないと胸が高鳴ったものです。
ところが……

サントスは目撃者を見つけ出して始末するために独自で捜査し、
かたやサントスが犯人だとは知らない警察
殺人事件を捜査するうち、殺された店のオーナーが
過去にコカイン密輸の前科があり、
オーナーの交友関係を探っていると
イスラム過激派との関連が浮かび……となって
殺人事件の犯人捜しというより
巨大犯罪組織の全貌を暴くかのような様相を呈してくるのです。
次から次へと登場する関係者が
一体なにを疑われて調べられているのか、
一旦見失うともう取り返しがつかず、
あいかわらず自分の証拠隠滅のために目撃者を捜しているサントスと
警察の捜査陣がたどる道は同じなので
もはや誰を捜しているのかすらわからなくなり、
「これ誰だっけ?」「こいつ、何を疑われてるんだっけ?」
「ん?」「は?」「の?」「みょ?」

わけのわからない独り言が口をついて出てくるのです。

公式サイトのストーリー解説では
「最後の正義を胸に秘め
 ただ一人テロリストに対峙するサントスの孤独な闘い」

と、あるので、要するに、よ〜するにぃ〜
自分が侵した犯行の証拠隠滅のために
目撃者を捜していたサントスは
調べるうちにテロ組織の存在に気づき、
殺人事件の犯人として警察から追われながら
巨悪に立ち向かう……ということだと思うのですが
一体サントスはいつテロ組織の存在に気づいたのか、
そしていつ心変わりしてテロ組織を追い詰めようとしたのか
さっぱりわかりません!
観客が衝撃的な事実を突きつけられることもなく、
サントスが自分の身の安全を守ることと
テロを阻止することとの間で葛藤するシーンもないので
観客は(いや少なくとも僕は)
映画が何に向かって進んでいるのか見失うことになるのです。

たとえば、『逃亡者』のように
本当は犯人ではないサントスが警察から嫌疑をかけられ
真犯人を見つけるべく逃げながら捜査していると
テロの存在に気づき、警察に捕まってしまうと
テロを阻止できない! どうするサントス!……とかね。
はたまた、この作品どおりに
目撃者を捜していたサントスが
テロ計画を嗅ぎ回っていると勝手に勘違いしたテロ組織から
襲われて、なんだあいつらは! テロ? これは放っておけない!
と、成り行きからテロに立ち向かう……とかね。

そうしていただいたほうがよろしいのではないでしょうか、と。
ストーリーに翻弄されるのは望むところですが
ストーリーの理解に翻弄されるのは御免被りたいのです。

この作品は、
2004年3月11日にスペインの首都マドリードで起こった
列車爆破事件
を題材にしているということですが
次々に登場する人物たちが
なにやら悪いやつだというのはわかるものの
重大なテロ事件の発生が刻々と迫ってきているという
緊張感はまったく伝わらず、
ラストシーンのショッピングモールで
爆弾が仕掛けられた消化器にクローズアップしながら
普段通りに行き交う買い物客を映し出すシーンも
その直後に爆発して大惨事を引き起こす恐怖を
思わせぶりに描いているということは、
あとからこうしてストーリー解説を読んではじめてわかることで
作品を観ているときにわからないものを
思わせぶりに演出されても知らんわ! と言いたくなるのです。

実際に起きた爆破事件では
警察内部の縄張り意識や秘密主義が原因で
事件を未然に防げなかったという批判があるそうで
そういう警察批判もこの作品に盛り込まれているのですが
それならそれで、こんなアブナイおっさんを主人公にしたりせず
正面から社会派ドラマとして魅せてほしいものです。

ちなみに、監督のインタビューによると
サントスに扮するホセ・コロナドさんは
普段はやさしい人間ばかりを演じている役者さんだそうです。
あの面構えで? ホントかよ!





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。

関連記事
スポンサーサイト

コメント

全く同感です

今しがた、この映画をhulu見終えた者です。
最後のシーンまで、ストーリーを全く理解できませんでした。

とにかく、たくさん出てくる人物が似たような顔つきばかりで、
誰が何なのかさっぱりで相関関係を全く理解できませんでした。

また、主人公は最後まで目撃者を口封じするために
一人で動いていたと思ってました。

全く腑に落ちないラストだったので、ネットでどんな評判なのか知りたくなり、
色々調べたら、なんと主人公は証拠隠滅の捜査の過程で巨大なテロ計画を知り、
改心してテロを止めるために正義感を取り戻して一人テロ組織に立ち向かったとあるじゃないですか。

はっきりいって、はあ? でした。

主人公がテロに気づくシーンが一体どこにあったのか、
全くわかりませんでした。

こんなにもわかりにくい映画は久々です。
10年以上前に見たメメントという映画も時系列を細かく遡るという
特殊な手法だったので途中から理解できなくなったんですが、
それ以上に意味不明な映画でした。

主人公の内面とかを描いてないところがあっさりしてて良いとか、
ハードボイルドの傑作とか評しているサイトが多かったですが、
私は完全に置いてけぼりをくらって、それらの評価には全く与することは出来ません。

みなさん、あんな描き方で本当に相関関係を理解し、主人公の心理的な遷移とか
ストーリーを追えたんですかね?
私には全く理解できない映画で、最後まで え?は?の連続でした。

2016/02/14 (日) 01:30:44 | URL | セルフィ #- [ 編集 ]

Re: 全く同感です

セルフィさん
コメントありがとうございます。
『メメント』みたいな映画は、観客を惑わすのが演出の目的のひとつだと思いますので
難解でもいいんですけど、
これはフツーに意味がわかりませんでしたね。

> みなさん、あんな描き方で本当に相関関係を理解し、主人公の心理的な遷移とか
> ストーリーを追えたんですかね?
そういうことがまったく気にならない人がいるみたいですね。

2016/02/14 (日) 10:16:17 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ