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荒野の千鳥足

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(原題: Wake in Fright 1971年/ オーストラリア・アメリカ合作 109分)
監督/テッド・コッチェフ 原作/ケネス・クック 脚本/エバン・ジョーンズ 撮影/ブライアン・ウェスト 編集/アンソニー・バックレイ 音楽/ジョン・スコット
出演/ドナルド・プレザンス、ゲイリー・ボンド、チップス・ラファティ、シルビア・ケイ、ジャック・トンプソン、ピーター・ウィットル、アル・トーマス

概要とあらすじ
「ランボー」のテッド・コッチェフ監督&「ハロウィン」のドナルド・プレザンス主演で1971年に製作された作品。オーストラリアの灼熱の砂漠地帯を舞台に、バイオレンス描写を織り交ぜながら、ビール、博打、狩猟によって破滅へと駆り立てられる男を描く。都会のシドニーから何もない田舎町へ単身赴任でやってきた小学校教師のジョン・グラントは、クリスマス休暇で恋人に会うためシドニーに帰る途中、とある町に一泊することになる。町の住民たちのもてなしでビールを浴びるように飲んだジョンは、狂乱のギャンブルやカンガルー狩りの興奮にも魅了され、そのまま町に1週間滞在することになるが……。71年・第24回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、2009年の同映画祭ではレストア版が上映された。日本では、製作から40年以上を経た14年に劇場初公開が実現。(映画.comより



酒がのめるのめるぞ〜 酒がのめるぞ〜

長年行方不明だったプリントが発見され、
43年の時を経て日本劇場初公開となった
『荒野の千鳥足』
21:00スタートのレイトショーのみの上映でしたが
座席は8割方埋まっておりました。
スクリーンの正面ではないけれど、
十分満足な位置に陣取って落ち着いて観ていると
上映が始まってから遅れて入ってきたやつが
目の前の座席にごそごそと座りやがったのです。
しかもそいつの頭がでかい!!
いや、首から上が背もたれよりはみ出しているということは
座高が異常に高いのか!?
とにかく、スクリーンが半分しか見えない!
仕方なく、身体をよじりながら鑑賞するハメになりました。
身体がでかいのは仕方がないけど
自分はでかくて邪魔なんだってことは自覚して
ちっちゃくなって座ってほしいもんです。

それはさておき。
マーティン・スコセッシ監督をして
「すさまじいほどに不快な映画」と言わしめたこの作品。
何とも言えぬ狂気に満ちあふれています。

オープニングで、
360°パンするカメラが映し出すのは
どこまで行っても何にもない荒野。

地平線が途切れることなく続く景色は果てしなく広大なのに
どこにも行けない閉ざされた空間の孤独を
逆説的にあぶり出します。

そんな荒涼とした場所に不満を持つ
小学校教師のジョン(ゲイリー・ボンド)
クリスマス休暇でシドニーにいる恋人に会うのを
心待ちにしています。
クリスマスといっても、そこはオーストラリア。
雪が舞うどころか、砂埃が舞い、脂汗がまとわりつきます。
ややこしい水着を着た恋人とビーチで戯れるのを夢想しながら
シドニーへと向かう列車に揺られるジョンは
途中のヤバという街で一泊することに。

パブで声をかけてきた保安官ジョック(チップス・ラファティ)
親切なのはいいけれど、
次から次へとビールを勧めてくるのです。
まあまあもう一杯というのを断り切れずに飲んでいるうちに
ジョンもメーターが上がってきます。
(↑この言い方、やっぱ死語?)
パブの奥の部屋にある賭場を覗くと
コインの裏表を賭けの対象にするという、
どシンプルな博打
に男たちが狂乱しています。
ジョンも試しにと賭けてみると、なんと大当たり。
飛び跳ねながらホテルの部屋まで帰ったまではよかったものの、
荷物の中にあった教科書をじっと見つめるうち、
「たった一回の賭けで1000ドルか……」
稼ぎの少ない教師生活がバカバカしくなり、
全財産を握りしめて賭場に戻ってしまうのです。

これがすべての運の尽き。
ご多分に漏れず、ギャンブルでもっとも肝心な
やめ時を逸したジョンは一文無しになってしまいます。
身動きが取れなくなったジョンに
またしても声をかけてくる男が現れ、
ビールをおごってもらったジョンは
やっぱり酔いに任せて上機嫌になるのです。

3人の男たちが加わり、
乱痴気騒ぎは加速度を増して
延々とビールを飲み続けるジョン。
やたらと「ヤバは初めてか?」と聞いてくるヤバの男たちは
バカバカしい遊びに興じ、
勧めた酒を断られるのを嫌うものの
悪意を持ってジョンを陥れようとしていいるわけではなく、
むしろ親切で世話好き
だともいえます。
酔いが醒めたときには、これではいかんと
正気を取り戻したジョンが
勧められるがままにまたしてもビールをあおると
ヤバの男たちと同じように酔いに任せて狂乱する姿は
現実(シラフ)からの逃避にほかなりません。

深夜のカンガルー狩りに出かけた彼らがみせる
異常な高揚感は
次々と殺されるカンガルーの映像とあいまって
生理的な不快感に溢れています。
エンドロールで注釈が示されますが
カンガルーは撮影のために殺されたのではなく、
ハンターが撮影した映像なのだとか。

なんとしてもこの街から抜け出して
恋人が待つシドニーへ向かおうとするジョンでしたが
すでに魔のループに囚われており、
図らずも、またヤバへと戻ってきてしまいます。
ジョンはついに自殺を試みるも未遂に終わり、
死んでこの世から逃避することすら許されません。

絶望的な現実から抜け出そうとして
もがけばもがくほど事態が悪化するなら
絶望に慣れるほうがまし、とでもいうようなこの作品は
いわずもがな僕たちの現実を鏡のように映し出し、
だからこそ、いや〜な気分になるのです。





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