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ファーナス 訣別の朝

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(原題: Out of the Furnace 2013年/アメリカ 116分)
監督/スコット・クーパー 脚本/ブラッド・インゲルスビー、スコット・クーパー 撮影/マサノブ・タカヤナギ 美術/テレーズ・デプレス 衣装/カート&バート 編集/デビッド・ローゼンブルーム 音楽/ディコン・ハインクリフェ
出演/クリスチャン・ベール、ウッディ・ハレルソン、ケイシー・アフレック、フォレスト・ウィテカー、ウィレム・デフォー、ゾーイ・サルダナ、サム・シェパード

概要とあらすじ
クリスチャン・ベールが主演、レオナルド・ディカプリオ、リドリー・スコットが製作、「クレイジー・ハート」のスコット・クーパー監督がメガホンをとったクライムドラマ。米ペンシルバニアの田舎町を舞台に、地元の犯罪組織と関わってしまった弟を助けるため、元受刑者の兄が決死の覚悟で戦いを挑む姿を描いた。溶鉱炉(ファーナス)から絶えず白い煙がのぼる鉄鋼業の町ブラドック。年老いた父親の面倒を見ながら製鉄所で働くラッセルは、貧しいながらも恋人リナと過ごす時間にささやなか幸せを見出していた。しかし、イラク戦争で心に傷を負った帰還兵の弟ロドニーが、ある事件に関わったことから、ラッセルの運命は大きく変わってしまう。(映画.comより



もやもやしてたら、終わっちゃった♥

痩せたり禿げたり太ったり、
どの状態がデフォルトなのかわからなくなってきた
クリスチャン・ベール主演作の『ファーナス 訣別の朝』は
彼だけでなく、出演陣が錚々たる顔ぶれ。
これが2作目となるスコット・クーパー監督への
期待の高さが窺えます。
ただ、主役級の俳優を揃えれば
映画が面白くなるかといえばそうとは限らないのが
難しいところです。

のっけから、ウッディ・ハレルソン得意の基地外演技
小便ちびりそうになりますが
ウッディ・ハレルソンが演じるデグロートが
まったく話の通じない男だと印象づけています。
このとき、ドライブイン・シアターで上映されていたのは
『ミッドナイト・ミートトレイン(2008)』だとか。

製鉄所で働いているラッセル(クリスチャン・ベール)
地道で真面目な男ですが
死の淵にいる父親、廃れていくのを待つだけのような
鉄鋼の街ブラドックと同様に、
明るい未来を感じさせる要素が見あたりません。

それでもこつこつと与えられた仕事を一所懸命にこなし、
可愛い彼女リナ(ゾーイ・サルダナ)までいて、
ささやかながら充実した毎日を過ごしているようです。
ラッセルの悩みの種は、弟のロドニー(ケイシー・アフレック)
イラク戦争帰還兵のロドニーは
粗暴かつ自暴自棄になってギャンブルに明け暮れ、
賭けボクシングの選手として小銭を稼いでいます。
ラッセルはロドニーに頭を悩まされながらも
愛するがゆえに突き放すことができません。

賭けボクシングの元締めをやっている
地元ヤクザのペティ(ウィレム・デフォー)
ロドニーの借金を返しに行くラッセル。
なんていいアニキなんでしょう。
カタギではないペティも
ラッセルの苦労をねぎらうくらいの人間性は持っています。
ペティに勧められたブランデーをいやいや飲み干すラッセル。

このブランデーが効いたのか、
車を運転して帰る途中で、
突然バックしながら道路に飛び出してきた車と衝突。
慌てて車内を確認すると、子供のものらしき脚が。
車がバックで飛び出してきた道は急な坂道だったので、
おそらく、子供が車に乗り込んでいたずらしていたか、
後部座席で寝込んでしまったか、
とにかくサイドブレーキをかけ忘れて車が動いてしまった、
ということなんでしょう。
このあたり、詳しくは語られませんが
ラッセルにとっては不可抗力な事故でも
おそらくブランデーが原因で飲酒運転と判断され、
乗車していた子供が死んでしまったために
ラッセルは刑務所送りになってしまいます。

これを機に、
十分な幸せとは言い難いけれど、
それなりに納得のいく人生を過ごしていたラッセルの
転落人生が始まるのかと思いきや……
どうも、ピリッとしません。
確かに、不可抗力とはいえ幼い命を奪ってしまった罪は重いし、
刑務所に入ったことで最愛のリナは離れていくし、
あんなに気遣っていた父親の死にも立ち会えませんでしたが
どうやら真っ当に刑期を終え、
ひゃっほう!と出所した途端にロドニーの車を運転し、
家の壁をペンキで塗り直し、
もとの製鉄所で働き始めるラッセルは
再起を賭けてむしろ前向きなようにも感じます。

イラク戦争帰還兵が後遺症に苦しむというのは
よく聞かれる話ですが
ロドニーは、自分の不甲斐なさを
国家や戦争に責任転嫁しているようにみえるものの
それはともかく、ロドニーは
もっと稼ぎのいい(すなわち、もっと危険な)賭けボクシングを
やらせてくれとペティに頼み込み、
自分の借金返済のためにもしぶしぶ承諾したペティは
デグロート(ウッディ・ハレルソン)にコンタクトをとります。

デグロートは
山岳地帯で暮らす凶悪な組織のボスのような存在ですが
はっきりとは示されないものの、
彼らはヒルビリーと呼ばれる人たちではないでしょうか。
ヒルビリーたちの困窮した暮らしと結束の固さは
『ウィンターズ・ボーン(2010)』で表現されているとおりで
彼らの主な生活源は覚醒剤の精製と販売なのです。

ペティとロドニーが、デグロートのもとへと向かう過程と
ラッセルと叔父のレッド(サム・シェパード)が
鹿狩りをするシーンとが
クロスカッティングで交互に映し出されます。
映像的な面白味はあるものの、
このふたつの出来事を並列でみせる意図が
どうもいまひとつピンときません。
帰還兵と鹿狩りとくれば、『ディア・ハンター(1978)』ですが
この鹿狩りのシーンは、
終盤でラッセルがライフルを持っていることの
根拠にはなっているものの、
(それとて、どこかで銃を調達してくればいいだけだし)
彼がハンターとしての腕前を披露するような銃撃戦も用意されておらず、
『ディア・ハンター』へのオマージュとしか受け取れません。

案の定というべきか、ペティとロドニーは
デグロートの裏切りによって殺されてしまいます。
ペティには貸した金があるはずなので
殺しちゃったら金を回収できないだろ、と思いましたが
ロドニーを森の中へ連れていったので
なるほど、ロドニーにはこれからも八百長をやらせて
もっと稼ごうとしているのかと納得しかけたら、
ロドニーもあっさり殺してしまいます。
このあたり、まったく得にもならない殺人を犯す
デグロートの行動原理がよくわからない
のですが
それよりも、殺される直前のペティが
ポケットからスマホをぽろりと落とした拍子に
ペティが経営するバーのバーテンじいさんへ電話がかかり、
バーテンじいさんがその通話の一部始終を録音していたから
ことのなりゆきが全てわかって、
犯人はデグロートだ!
 つーのは、
いくらなんでも、都合よすぎませんか?

ま、とにかく。
ペティとロドニーが一緒にいたのは確実で
ロドニーは帰ってこないんだから、なにかあったはず。
警察はアテにならないから、オレがやる!
というわけで、ラッセルは復讐心に火をつけるのです。

ラッセルの復讐劇を描くことがこの作品の目的ですから
ここまでは、真面目なラッセルが復讐心に火をつける根拠を
積み重ねてきたはずなのですが
どうにも溜め込んだ怒りを爆発させるカタルシスがありません。
ラッセルの人生の歯車が狂うタイミングは
交通事故と、弟ロドニーの死とのふたつある
と思いますが
先にも述べたように、出所後のラッセルは
社会復帰に前向きなのですから
交通事故はリナとの恋愛を破綻させるためにしか
機能していない
ように思います。

また、初めて警察署で事情を聞かされたときには
ラッセルはいらだちを爆発させ、
ロドニーが生きている可能性だって信じていたはずなのに
ロドニーが土の中から発見されたと聞いたときは
取り乱すこともなく大人な対応だったのも首をかしげますが
それよりも問題だと思うのは、
ラッセルのもとを去った恋人リナと
警官ウェズリー(フォレスト・ウィテカー)の扱い
ではないでしょうか。

ラッセルが刑務所に入っている間に
リナとウェズリーはつき合うようになったのですが
このふたりはラッセルに輪をかけて優等生過ぎます。
仲良く一緒に飯喰ってる場合ではないのです。
子供大好きなリナからは
「あなたは、子供の命を奪ったのよ!」と
ラッセルは徹底的に理不尽な嫌われ方をするべきでしょう。
ちなみに、もともとリナが子供を欲しがっていたことが
交通事故で子供が死んでしまう伏線になっているのですが
あまつさえリナは保母さんで、
しかもウェズリーの子供を妊娠したことが
ラッセルとの別れを決定づけるとなると、
リナは子供のことしか考えていないようにみえます。

ウェズリーも警官らしい頭の固さをみせるべきで
「オレとリナは熱い愛情で結ばれているわけじゃない」なんて
元彼のラッセルに意味不明の気遣いを見せている場合じゃないし、
そもそもリナのお腹にいる子供がそれ聞いたら絶望するよ!
ウェズリーはラッセルに対して
「お前は前科者だ。二度とリナには近づくな」
「製鉄所だってすぐに閉鎖される。お前がリナを幸せにできるのか?」
というくらいの強い態度を見せて欲しかったところ。
それでこそ、ラストシーンの
「銃を捨てろ!」というやり取り
にも
ウェズリーがラッセルを撃ってしまうかもしれない緊張感がでるはずだし、
観ているこっちは、八方ふさがりなラッセルに
もっと感情移入できたと思うのです。

映像は美しかったけど、
なんとも、もやもやする作品でした。





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