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夢と狂気の王国

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(2013年/日本 118分)
監督・脚本・撮影・編集/砂田麻美 プロデューサー/川上量生 音楽/高木正勝
出演/宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、庵野秀明、宮崎吾朗、西村義明、奥田誠治

概要とあらすじ
「エンディングノート」で数々の映画賞を受賞した砂田麻美監督が、スタジオジブリの内幕に迫ったドキュメンタリー。「風立ちぬ」を最後に長編映画の製作から引退を表明した宮崎駿監督、宮崎監督の盟友でともに切磋琢磨してきた高畑勲監督、2人の巨匠の間で奔走する鈴木敏夫プロデューサーというスタジオジブリの核となる3人を中心に、数十年におよぶ長い時間の中で、いかにして夢を生み出してきたのか、3人の抱える愛憎や創作現場としてのスタジオジブリの実態を描き出した。「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴの会長で、2011年からスタジオジブリでプロデューサー見習いとしても働く川上量生が初プロデュースを務めた。(映画.comより



「狂気」は見えぬまま

『風立ちぬ』公開後に引退宣言をした宮崎駿。
ずいぶん時間が経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。
そろそろ映画を作りたくて
うずうずし始めているんじゃないでしょうか。

撮影・編集と、ほぼすべてを1人でこなした砂田麻美監督
『誰も知らない』などの是枝裕和監督の弟子筋に当たる人で
評価の高い処女作の『エンディングノート』
自分が見苦しいほど泣いてしまうのが怖くてまだ観ていません。

『夢と狂気の王国』
『風立ちぬ』制作中の宮崎駿に密着したドキュメントです。
ジブリのドキュメンタリーはテレビ放送などで数多く作られていますが
うがった見方をすれば
ジブリは作品のみならず、その制作過程も
コンテンツビジネスとなりうる存在だということを
自覚しているということです。
いわずもがな、それはジブリというアニメ制作会社に対する興味ではなく、
宮崎駿というひとりの才人に対する興味です。

『夢と狂気の王国』と名づけれられているものの
残念ながらこの作品から「狂気」はさほど感じられません。
この作品の宮崎駿は、ちょっと偏屈な好々爺の印象です。
どうしても思い起こさずにいられないのは
DVDで発売されている
『「もののけ姫」はこうして生まれた。(1997)』でしょう。
約6時間40分にも及ぶ本編は
その量そのものが狂気の沙汰ですが
このなかでみられるのは、
ぶつくさと悲観的なことを言うことこそ変わらないものの、
アシタカの動きを自ら演じてみせたり、
鉛筆を持つ手がいうことを聞かず針治療を受けたり、
ほかのアニメーターが書いた原画を
人格否定しながら書き直す宮崎駿の姿です。
そこには、確かに「狂気」と呼ぶべき
表現者の作品に対する執念
が写り込んでいました。

そこまで食い込んだ描写はないものの、
面白いのは、声優を決める会議中に
主人公の堀越二郎役に庵野秀明を思いつくシーンです。
これは妙案を思いついたと喜ぶ宮崎の笑顔を見ながら
唖然としているスタッフ(?)の表情が痛快です。
また、宮崎の息子であり監督の宮崎吾朗が
企画会議中に弱みを見せるシーン

父・宮崎が自分の作りたいものを作ったら
あとはお任せしますという態度をとるのと対照的です。

ごくごく個人的なことを言わせてもらえば
宮崎が久石譲に曲のイメージを伝えるシーンを見て
鼻くそみたいな仕事をしているデザイナーとしては
これが本当の打合せだよなあとため息が出ました。
作曲家に対して、「ここ半音上げてみて」とか
「ここで転調してみて。いいか悪いかは聞いてから考える」とか
いわないでしょ?
これがプロ同士の仕事のやり方ですよ。
僕のような下っ端の仕事では
デザインの知識も素養もないド素人がほとんどすべてのデザインを指示し、
うんこを食べながらおいしいおいしいと言っているのです。

はっ! 無意識に愚痴をこぼしてしまった……
ま、とにかくこの作品を観て改めて思うのは
ジブリ=宮崎駿だということです。
もちろん、会社としてのジブリを支えているのは
鈴木敏夫プロデューサーでしょう。
宮崎の「狂気」をビジネスに変えているのは彼です。
さりとて、鈴木プロデューサーも
世間一般でいうところのビジネスライクな人間ではなく、
面白そうなほうにしか興味を示さない人間であることは明らかで
だからこそこのふたりは気が合うのでしょう。

宮崎駿が引退表明を覆す可能性は
十二分にあると信じていますが
宮崎駿の創作活動をマネジメントするのが
ジブリという会社であるとするならば
ジブリがこれ以上発展することはないでしょう。
それは心臓を失った会社という生命体が辿る当然の帰結です。

創作のアイデアというものは個人の発想からしか生まれません。
素晴らしい発想というのは
マーケティング・リサーチなどもってのほか、
複数の人間による話し合いからは絶対に生まれません。
これだけは断言できます。
だからこそ、創作というものは孤独なのです。
あとはその個人の発想に
スタッフや観客を含めて賛同するものがいるかどうかだけです。

強烈な個性を持った宮崎駿がいなくなれば
ジブリは自然と消滅するでしょう。
宮崎駿よりもさらにやっかいな高畑勲はどうなることやら。

それでも、自分がいいと思うことをやって
世間にもそれなりに評価されて、飯も食えたんだ。
いいじゃん、それで。
ありがとうございました。楽しかったです。





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