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千年の愉楽

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(2011年/日本 118分)
監督/若松孝二 原作/中上健次 脚本/井出真理 撮影/辻智彦、満若勇咲 照明/大久保礼司 美術/増本知尋 編集/坂本久美子
出演/寺島しのぶ、佐野史郎、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太、原田麻由、井浦新

概要とあらすじ
紀州出身の作家・中上健次が故郷を舞台につづった同名小説を、「キャタピラー」「海燕ホテル・ブルー」の若松孝二監督が映画化した人間ドラマ。紀州の路地で産婆を営むオリュウノオバは、高貴で不吉な血を持って生まれ、女たちに愉楽を与えながら命を燃やし尽くして散っていく男たちの誕生から死までを見つめ続けてきた。年老いて今際のきわをさまようオリュウの脳裏に、そんな男たちの儚くも激しい生きざまがよみがえる。2012年9月開催の第69回ベネチア国際映画祭でオリゾンティ部門に出品。同年10月、若松監督は交通事故で他界。本作が遺作となった。(映画.comより



滅びるよりは 産んで増やせよ

『千年の愉楽』
若松孝二監督の遺作となってしまいました。
近年、さらに輝きを増すように精力的に作品を発表していただけに
残念でなりません。
この作品は観なければならないと思いつつ、
なぜか気後れしてなかなか手を出せませんでしたが
気がつけば、はや2年の月日が過ぎようとしているので
思い切って観てみることにしたのです。

原作の中上健次「路地」と呼ぶ
被差別部落を舞台にしたこの作品は
自らの出生=血に囚われている男たちの物語です。
劇中で語られる「中本の血」というのは
遺伝によって人格が受け継がれていくという意味ではなく、
自分が生まれた状況によって生き方を決定づけられてしまう
被差別部落出身者の呪いのようなものではないでしょうか。

登場する男たちは、女ったらしやヤクザもので
彼らが非業の死を遂げるのは自業自得のように見えますが
この作品ではあえて彼らの行動を表面的に描くに留めて、
その裏に隠された彼らの鬱屈が前面に出ないようにしています。
その証拠に、「中本の血」を受け継ぐ男たちが
直接的に差別を受けるような描写は登場しませんが
彼らが「中本の血」の呪いをぬぐい去ろうととしても
周囲がそれを許さず、無力感を感じた彼らは自暴自棄になり、
結局自らの父や祖父と同じように
破滅の道を選んでしまうのでしょう。

集落のほとんどの子供を取り上げた産婆の
オリュウノオバ(寺島しのぶ)
死の床で自らの人生を振り返るように語られる物語は
半蔵(高良健吾)、三好(高岡蒼佑)、達男(染谷将太)
3人の若い男のエピソードに分かれています。
彼らはそれぞれに「中本の血」の呪縛に苦しんでいて
半蔵にいたっては我が子の顔を見ても恐れをなして逃げるほどですが
3人に共通するのは、みな美しい顔をした色男だということ。
被差別部落出身の彼らは
卑しい人間だと差別されているのにもかかわらず、
むしろだからこそ、その美しさが危うい魅力となって輝き、
女たちを惹きつけてしまうのです。

オリュウノオバは、3人の男たちがいくら蛮行を働いても
まるで聖母のような寛容さで優しく見守っています。
彼女が自身の子供を2歳で亡くしていることが
自分が取り上げたすべての赤ん坊を
自分の子供のように愛しているのでしょう。

ところが、
3人の男たちに母性を示しながらも常に一定の距離を保ち、
彼らのために手を合わせて祈ってやるだけだったオリュウノオバは
上半身裸になった達男の背中ににじむ汗を見て
欲情を抑えることができない
のです。
それまで、誰からも慕われる世話好きなおばちゃんとして
描かれていたオリュウノオバも
男に抱かれたくて仕方のないほかの女たちと同様に
女性の肉欲を併せ持っていたのです。

オリュウノオバがただのいい人ではなく、
聖俗入り交じった存在であることが
理性や倫理や社会的規範の範疇を超えた
根源的な男女の営みのあり方を見せつけ、
その動物的ともいえる欲望の発露こそが、
いわれのない差別に対抗する手段
のようにも思えました。

ロケ地の三重県尾鷲市須賀利
折り重なるように家々がひしめき合っている集落が
日々の営みの生命力を感じさせるとともに
行き場のない閉塞感も漂わせています。
エンドロールで流れる歌が
この作品の全てを端的に物語っていました。

 猿の如くに 狩られても
 女は孕み 子は生まれ
 路地から人が 溢れ出す
 父(テテ)なしだろが 阿保だろが
 あの世よりは この現世(うつしよ)へ
 滅びるよりは 産んで増やせよ
 子を産むことこそバンバイ(万歳)よ






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