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少女は自転車にのって

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(原題: Wadjda 2012年/ サウジアラビア・ドイツ合作 97分)
監督・脚本/ハイファ・アル=マンスール 製作/ゲルハルト・マイクスナー、ローマン・ポール 音楽/マックス・リヒター 撮影/ルッツ・ライテマイヤー 編集/アンドレアス・ヴォドラシュケ
出演/ワアド・ムハンマド、リーム・アブドゥラ、スルタン・アル=アッサーフ、アブドゥルラフマン・アル=ゴハニ、アフド

概要とあらすじ
映画館の設置が法律で禁じられているサウジアラビア初の女性監督ハイファ・アル=マンスールが、同国俳優を起用し、すべて国内で撮影したサウジアラビア初の長編映画。10歳のおてんば少女ワジダは、幼なじみの少年アブドゥラと自転車競走がしたいが、母親は女の子が自転車に乗ることに反対する。そんな時、学校でコーラン暗唱コンテストが行われることになり、ワジダはその賞金で自転車を買おうと一生懸命コーランの暗唱に取り組むが……。女性がひとりで外出することや車を運転することが禁じられている同国で、ひとりの少女が女性として生きることの厳しさに直面しつつも、前向きに生きる姿を活写する。(映画.comより



わたしを捕まえて!

映画を観ることを禁じられているから
そもそも映画館がないというサウジアラビアで撮影された
『少女は自転車にのって』
中東の国々では女性は肌を見せちゃいけないとか、
とかく女性に対して戒律が厳しいというくらいの
ぼんやりした知識しかありませんでしたが
この作品を観て、サウジアラビアの女性には投票権もなく、
まともに人権も与えられていないということを知りました。
しかも、ハイファ・アル=マンスール監督がサウジアラビア人女性とくれば
さぞかし制作は困難を極めたことでしょう。
メイキングによれば
女性が屋外で男性といっしょに仕事をすることも許されないので
監督は車の中に隠れて演出の指示を出していたとか。

当然、サウジアラビアの女性が直面する問題を
訴えようとする意図はあるのですが
声高にアジるわけではなく、
表面上は、少女の普段の生活をあくまで軽やかに描き、
何気ない日常であるがゆえに浮き立つ根本的な違和感をもって
問題を提唱しているところが素晴らしいのです。
あたかも規制に対するカモフラージュのようにも受け取れますが
そもそもサウジアラビア国内で上映することはできないのですから
あくまで表現の手段として選択されたのでしょう。

そんなお国柄だから、さぞかし女性は
肩身の狭い暮らしを強いられているのだろうと思っていたのですが
普段の生活は拍子抜けするほどフツーです。
家庭の生活水準も低いようには思えません。
いかにもイケ好かない顔をした校長は厳しいけれど
主人公の少女ワジダ(ワアド・ムハンマド)はバッシュを履いて
おしゃれをし、ラジオでポップスを聴いていて
日本の女子小学生とさほど違うようにみえません。
おてんばというより、ちょっと不良っぽいワジダは
自作のミサンガを友達に売ったり、
ラブレターの運び屋をやってぼったくったり、
なかなか商魂たくましいのです。
じつは、未婚の女性が男性にラブレターを送ること自体、
厳しく禁じられているそうですが……

自転車に乗った仲良し男子の
アブダラ(アブドゥルラフマン・アル=ゴハニ)
からかわれたのをきっかけに
ワジダは自分も自転車が欲しくなります。
近所の雑貨屋に仕入れられた自転車にひとめぼれするワジダですが
その自転車が車の屋根に乗せられて運ばれてきたとき、
手前の壁で車が遮られて、まるで宙を飛んでいるかのようにみえる演出

ロマンティックで素晴らしい。
とはいえ、この国では女性が自転車に乗ることは
許されていない
のです。

自転車を買うお金がなかなか貯まらないワジダが
賞金目当てで「コーラン暗唱大会」に出場することを決意し、
コーランの勉強を始め、理解を深めていくというのが
ものすごい皮肉になっています。
イスラム教について詳しくない僕のようなものにすれば
中東の国々が女性を不等に扱うのも
イスラム教の教えによるものなのかと考えがちですが
じつは、男性にとって都合がいいようにとんでもない拡大解釈した
悪しき政策であり、悪しき慣習だということがわかります。

サウジアラビアでの女性の立場を如実に表しているのが
ワジダの母親(リーム・アブドゥラ)
どうやらワジダを生んだ後は子宝に恵まれず、
男児が欲しいワジダの父親は第二夫人を娶ろうとしています。
たまに帰ってくるだけの父親の気を引こうと懸命な母親は
男性主導の社会のなかで、もがいているようにみえます。
それでも女性は家系図に乗ることもなく、
客が来ても男性たちといっしょに食事をすることすらできません。

プレステのコーラン勉強ゲームを使った猛勉強の甲斐あって
ワジダはコーラン暗唱大会で見事優勝。
賞金の使い道を聞かれ、「自転車を買います」と嬉々として応えると
校長は「パレスチナの同胞に寄付しなさい」というのです。
つくづく腹立つビッチ校長。

悲しみに暮れて家に帰ると、
父親が第二夫人との結婚を決めたことに絶望して
屋上で黄昏れる母親が。
母親と娘は父親から見捨てられたのです。
「ドレスを着て結婚式に行けばいいのに!」というワジダに対して
「もういいのよ。お金も使っちゃったし」と
暗闇に消える母親。なんとも悲しい……
と、思いきや、パッと光がつくと
そこにはワジダが欲しがっていたあの自転車が!!
完全に意表を突かれた僕は涙腺崩壊。
母親はワジダと同じ気持ちはあるけれど
この国で生きていくために自分を押し殺していたのです。
自分の想いを娘に託すかのように
「世界で一番幸せになりなさい」という母親。
ただのプレゼントとは重みが違います。
これが泣かずにいられよか。

晴れて自分の自転車を手に入れたワジダは
念願だったアブダラとの競争に勝ち、
そのままの勢いでどこまでも走っていきそうです。
「わたしを捕まえて」

サウジアラビアの社会問題を
抜きにして語ることはできないかもしれませんが
仮にそれを考慮しなかったとしても、
見応えのある上質な作品です。





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コメント

この映画は好きです

とにかく中東における抑圧された女性たちの一筋の光を感じます。
ワシダが自転車をこいで走り去っていくところがよかったですね。
宗教的な問題には特に言及しませんが、彼女の笑顔がよかった。
それとこの類の映画がこよなく好きです。

2014/09/28 (日) 21:26:14 | URL | ミス・マープル #- [ 編集 ]

Re: この映画は好きです

>ミス・マーブルさん
コメントありがとうございます。
本当に胸がきゅんとするラストでした。
エンターテイメントとして上質な作品だと思いました。

2014/09/28 (日) 22:04:15 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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