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マーサ、あるいはマーシー・メイ

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(原題:Martha Marcy May Marlene 2011年/アメリカ 102分)
監督・脚本/ショーン・ダーキン
出演/エリザベス・オルセン、ジョン・ホークス、サラ・ポールソン、ヒュー・ダンシー

概要とあらすじ
メアリー=ケイト&アシュレー・オルセン姉妹を姉に持つ若手女優、エリザベス・オルセンが主演し、カンヌ映画祭やサンダンス映画祭で高い評価を受けたサスペンス。カルト集団から脱走し、マインドコントロールから逃れようともがく若い女性の2週間を描いた。孤独で愛に飢えていた少女マーサは、山の上にあるカルト集団に入信し、マーシー・メイという新しい名前で生きることになる。それから2年後、マーサは1人で集団を脱出し、姉夫婦の別荘に身を寄せるが、マーシー・メイとして生きた2年間の記憶に苦しめられる。監督は本作が長編デビューとなるショーン・ダーキン。(映画.comより)



M&M&M&M

図らずも、『レッド・ライト』に続き2日連続で
エリザベス・オルセンに拝顔の栄に浴することになったのですが
彼女が人気シットコム「フルハウス」の
アシュレイとメアリー=ケイトのオルセン姉妹の末っ子だといわれても
なんのことやらさっぱりわからず、ググってみたところ
セレブと称される二人の姉とは違い、
なにやら熱心に演技の勉強を重ねた末に長編映画デビューを飾ったのが
この『マーサ、あるいはマーシー・メイ』ということのようです。

映画出演3作目となる『レッド・ライト』では
出演シーンが少なかったものの、
かわいらしくてちょっと色気もある存在感でしたが
デビュー作でこの作品のようなややこしい役柄を演じるとは
ふてぶてしいというか、末恐ろしい演技力で
すでに今後も出演作が目白押しというのも納得なのです。

監督のショーン・ダーキンにとっても
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』は
長編デビュー作となるようですが、エリザベス・オルセンと同様に
すっかり堂に入った演出だったと言えるのではないでしょうか。

『レッド・ライト』ばかりを引き合いに出して恐縮ですが、
なんせ昨日観たばっかりなので大目に見ていただくとして
『レッド・ライト』が「謎解き」を大々的に謳っているわりには
ストーリーを追いかけてさえいれば
自ずから謎が解けていく作品だったのに対して
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』は
できる限り物語の発端や経緯の説明を省き、
謎そのものすら提示せず、観客は謎の解答より先に
謎の存在から探し当てねばならないという
徹底的に隠匿された表現に貫かれていました。

自身の監督デビュー作で、サスペンスとくれば
ちょっと流行の細かいカット割りを入れてみたりなんかして
少しでも観客にワオと言わせたくなっても
致し方ないと思うのですが
このように静かでじとっとした長回しによる撮影と
客観的な映像をごろんと観客の前に差し出すだけのような
抑制された演出方法を採用するには
なかなかの自制心が必要なのではないでしょうか。

マーサ(エリザベス・オルセン)が所属していたカルト集団は
宗教集団というよりも、ヒッピーのコミューンといった感じで
自給自足を標榜しているのが共産主義的と言えなくもないのですが
フリーセックスを実践しているわりには
食事は男女別々というのも、それらしくするために
とってつけられたルールのように見受けられて、
一貫した教義のようなものは語られることはありません。
そもそも、集団のリーダーたるパトリック(ジョン・ホークス)が
とりとめのないメッセージのような言葉を発することはあるにせよ
なぜ集団を構成する仲間たちを惹きつけているのかは
全く説明されることはありません。
このような事実関係は、もったいぶって隠されているのか
それとも必要がないから端折られているのか
どちらにせよ意図的であることは明白なのですが
一般的な人間(カルト集団に魅力を感じない人間)にとっては
カルト集団の思想や動機などは理解不能なのですから
それを説明したところで意味がないということなのでしょうか。
いや、むしろ「わからない」ということを
説明しないことで説明した、と言えるのかもしれません。

意図的に隠されたわけではないのに
カルト集団を脱走したマーサがあっさり見つかったにも拘わらず
集団に連れ戻されずに「好きにするがいいさ」と
放置されたシーンは不可解ですが、
それはさておき、僕が興味深かったのは
おそらくは集団の強盗殺人事件を契機に脱走を決意したマーサが
姉のルーシー(サラ・ポールソン)に助けを求め、共に暮らすうちに
集団のマインドコントロールから徐々に回復していくのではなく
ルーシーとの生活の時間が経つにつれて
逆に集団内でのマインドコントロールが
吐き気をもよおすように強度を増して蘇ってくる
ところです。
ショーン・ダーキン監督は
友人の体験談を元にこの脚本を書いたそうで、
その体験談が反映されているのかどうかは想像の域を出ませんが
暴力や脅迫によってコントロールされた秩序が
どのようにして人にまとわりつくかを表現していたのは
新鮮な驚きでした。
殴られた痛みよりも、殴られるかもしれないという恐怖心のほうが
心を操るには効果的ということなのでしょうか。

姉夫婦との生活する現実のシーンと
コミューンでの生活を描写するマーサの記憶のシーンが
交差するように入れ替わる手法は
若干しつこいようにも思いましたが、
たとえば、現実のマーサが湖に飛び込むと
飛び込んだ先が記憶の中のシーンになっているというように
ほとんどのシーンの入れ替えは
マーサの行動をきっかけとされていることから
この編集そのものがマーサの思考の変移を表現していると思います。

ところどころに不穏な歪みを見せながらも
静かに進行していた物語は
猫を銃で撃ち殺すシーンからぐんと加速し始めます。
カルト集団とはいえ、
フリーセックスを楽しんだりしているうちは
眉をひそめる人がいたとしても
当人同士が了解しているのであれば
他人が文句をいう筋合いではありませんが
パトリックが「猫を撃たないなら仲間を撃て」
マーサに詰め寄るこのシーンで集団の異常性が明らかになります。
このシーンでも、猫が画面に映されることはありません。

コミューン生活のなごりによる奇行をみせていたマーサは
徐々に言葉=思考にもコミューンでの洗脳が
フラッシュバックするようになります。
このマーサの人格の変移がスムーズかつ突発的なので
マーサ本来の人格が破綻しているように見えるあたりは
素晴らしい演技&演出です。
姉夫婦はマーサの過去2年間の真実を知らされていないのですから
居候の身分で「模範的な生き方じゃない」などと怒鳴られ
わざわざ呼び止めて真顔で「ダメな母親になる」なんて言われたら
困惑し、憤るのも当然ですわな。

マーサが湖の対岸に発見したパトリックの姿は現実か幻か、
ついに入院するほかなくなったマーサが
姉夫婦の車に乗り、病院へと向かうラストシーン。
後部座席で車に揺られるマーサだけを捉えた長回しが
否が応にも不安を煽っていたかと思うと、唐突なエンドクレジット
このラストシーンで起こることは
あとから何度考えても僕には状況がよくわかりませんでした。
いろんな含みを持たせるだけ持たせておいて
テープが切れたかのような終わり方は
久しく体験していなかった感覚で心地よいものでした。

カルト集団による洗脳を題材にしてはいるものの
カルト集団は便宜上の設定でしかなく、
もっと根本的な人間の人格や思想にアプローチした
作品ではないかと深読みもしたくなるのです。
時折見せるシンメトリーの構図
カメラの移動で観客の視線を促す画づくりも楽しめました。
ショーン・ダーキン監督には乞うご期待ってなところでしょうか。

それにしても、エリザベス・オルセンは
角度や照明によって顔の印象が全く変わりますね。
もともとそういう顔なんだから演技ではありませんが
マーサ役にはぴったりだったわけです。

食事は夜の一度だけというコミューンで、2年間生活したわりには
エリザベスがぽっちゃり小肥りなのは大目に見よう。
デビュー作で全裸になり、フリーセックスをし、
おねしょまでしたんだから。
許す。





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コメント

質問で恐縮です。

マーサ、あるいはマーシー・メイをWOWOWで見ました。
素敵なレビューも読ませて頂きました。

共感出来る事が多く、一点質問させて頂けませんでしょうか。

ラストのシーンですが、その前に車の窓壊してますし(修理には日数かかる、割れたまま移動するような夫ではない)、最後泳ぎに行った際、カルト側の人がいた、以上から自分はまた集団に戻ったのではと思ってこれでオチかなと思いエンドロールが流れて違和感はありませんでした。

映画見た人は最後に病院に向かったと思うのが一般的なようですが解釈としてどう思われますでしょうか。

突然のコメントにて恐縮です。

宜しくお願い致します。

2014/04/14 (月) 13:48:47 | URL | はじめまして #- [ 編集 ]

Re: 質問で恐縮です。

> はじめましてさん
こちらこそはじめまして。コメントありがとうございます。
一年前に一度観たきりなので、正確なことをいう資格が僕にはありませんが
少なくとも、夫婦の車が病院に向かおうとしていたのは間違いないと思いますよ。
湖に現れた教祖の姿は、強迫観念に駆られるマーサがみた幻だと思っていますが
とくにラストは、現実と幻の区別がつかないように作られていますよね。
集団の追跡におびえるマーサの強迫観念は、どんどん増幅していくので
もしかしたら後をつけてくる車ごとマーサがみている幻、なんてこともあるかもしれません。
すんなり集団に戻ったとは考えづらいような気がしますが。。。
わざとあいまいにしていますから、いろんな印象があって当然だし、それでいいんじゃないでしょうか。
記憶がおぼろげでバッチリと応えられず、スミマセン!

2014/04/14 (月) 18:37:02 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

ご返信ありがとうございます。

一年前に一度見たきりの記憶としては良く覚えていらっしゃいますね。僕には考えられないです(笑)
病院に行ったのかな~。マーサが車の窓を壊してたから他の車で行ったのだろうか。悩ましい!すっかり監督の思うツボにハマってます☆

この映画って主演の演技と集団生活での"役割を探す"という演出が非常にリアリティが高く感じ、自分は好きな映画で思わず気になってコメントしてしまいました。
ご返信ありがとうございます。

基本的に映画は映画館で見ないので最新のトピックとはどうしてもタイムラグが生まれますが、また気になった映画があった際は意見をお聞かせください♪

2014/04/15 (火) 13:08:11 | URL | はじめまして #- [ 編集 ]

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