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哀しみのベラドンナ

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(1973年/日本 89分)
監督/山本暎一 脚本/福田善之、山本暎一 原作/ジュール・ミシュレ 製作/渡辺忠美 作画監督/杉井ギサブロー 美術/深井国 音楽/佐藤允彦 編曲/川口真 ナレーション/中山千夏
出演(声)/長山藍子、仲代達矢、伊藤孝雄、高橋昌也、しめぎしがこ、米倉斉加年

概要とあらすじ
「千夜一夜物語」「クレオパトラ」に続く虫プロ=ヘラルド映画提携のアニメラマ第三作目。フランスの歴史家ジュール・ミシュレの『魔女』を原作に、ローマ教会によって迫害された“魔女”と呼ばれた特異な女たちが、実は暗黒からの人間の解放を最初に謡った女だという視点で描いた長編アニメーション。脚本は福田善之、監督は脚本も執筆している「クレオパトラ」の山本暎一がそれぞれ担当。(映画.comより



これぞ大人のためのアニメ

『千夜一夜物語』『クレオパトラ』に続く
「アニメラマ」シリーズ3作目の『哀しみのベラドンナ』
正直に言うと、ほんとはこの作品だけを観たかったのですが
わりと律儀な性格なもので
前2作もおさえておかねばと立て続けに観たのですが
期待していたほどの感動も興奮も味わえませんでした。
幾ばくかの不安を抱えながら、さてお目当ての
『哀しみのベラドンナ』を観てみると、
これがもう、ぶっとんだ大傑作でした。

「アニメラマ」シリーズ3作目とはいうものの、
虫プロダクションの経営状態に問題もあり、
企画の成り立ちから前2作とは違うようで
全く違う新しいアプローチによって制作されています。
山本暎一監督によれば、
ビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン(1968)』
触発されて発想したとのこと。
ちなみに、手塚治虫はノータッチだそうで
『クレオパトラ』を観たものからすれば
失礼ながら、ちょっとほっとしました。

キャラクター・デザインを担当した
深井国による耽美的なイラストの世界観を前面に押し出した作風は
乙女チックで退廃的なイメージで覆われています。
イラストの静止画がイメージとして流れるオープニングでは
歌の歌詞で設定の説明するという演出がとられ、ちょっと斬新。

愛し合うジャンとジャンヌはめでたく祝言を挙げるものの
貧乏なために、暴君たる領主に貢ぎ物を捧げることができず
その替わりにと、ジャンヌは大勢の男たちによって輪姦されます。
真っ二つに引き裂かれたジャンヌの股間から
赤いコウモリが飛び立つ場面
は最初のショッキングなシーンです。

横もしくは縦に長い静止画をカメラが移動して映し出す演出が多く、
どうやら、現実的なシーンは静止画で、
心象風景を描いたシーンは動画で表現するというコンセプトがあったようですが
いくら静止画のイラストが素晴らしくても
これではアニメーションというよりスライドショーか紙芝居だし、
これがずっと続くのは嫌だなあと思っていましたが
中盤からグリングリンにアニメートします。

非道い目に合いながらも、愛するジャンに仕えようとする
健気なジャンヌでしたが、
ジャンは落ち込んで拗ねていたかと思えば、
金が入ると調子に乗って威張ってみたりと、甲斐性のない男で
基本的になんの役にも立ちません。
ジャンヌが犯され、
自分も左手首を切り落とされても反撃する度胸もなく、
何度でも領主にだまされるバカなのです。
なんでこんな男にジャンヌが惚れたのか不思議でなりません。

心が満たされないジャンヌを誘惑する小さい悪魔
見るからにちんこの形をしていて
「私が小さいのは君のせいだよ。君次第で大きくなれる」
ジャンヌの手の中に包まれた悪魔は身体を上下させるのです。
これがなにを意味するか、わかりますね?
ずっとジャンヌを翻弄する悪魔は
物語が進むに従ってどんどん巨大化していきます。

終始セックスのイメージに溢れ、
とくに陰茎と挿入行為を描写したカットはいたるところに登場します。
後半になるとジャンヌはずっと全裸で、
ただしゃべっているときでさえ豪快に開脚していたりします。
それでも下品さを感じさせないのは
やはり深井国によるイラストの美しさによるところが
大きいのではないでしょうか。
後半に進むに従ってイメージ描写に割かれるカットが多くなり、
画風も表現手法も多種多様で
抽象的な表現から、民衆の身体が解け合いながらループするシーン
果てにはグラスペインティングまで登場します。
「めくるめく」という言葉がぴったりな
たたみ掛けるように連続する映像の素晴らしさは
鑑賞して確かめていただくほかありません。

悪魔に身体を弄ばれることで
特別な力を身につけたジャンヌは
黒死病に見舞われた民衆を救い、
徐々に領主よりも民衆の信頼を得るようになると、
それをよく思わない領主はジャンヌを火刑に。
ところがその非道な仕打ちが民衆の怒りに火をつけ、
ジャンヌの魂が乗り移ったかのような民衆は蜂起するのです。
やがては、それがフランス革命へと繋がり、
ウジェーヌ・ドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」のカットで
ラストを迎えます。

大人のためのアニメーションを作らんとする
「アニメラマ」という企画の成り立ちからは
逸脱したかのようなこの作品ですが
3作目にしてやっと本来の意味での
大人のためのアニメーションが実現したのではないでしょうか。
終始、大量の性描写に溢れているものの、
前2作のサービスとしてのエロと比較して、
この作品におけるそれは必然であり、
表現に対する意欲とエネルギーに満ちあふれています。

このような作品が一般化するとは思えませんが
だからといって、これを不要なものだとするならば
世の中は本当に「こども」ばかりになってしまいますよ。

*参考にしたサイト「WEBアニメスタイル」
http://www.style.fm/as/13_special/mini_060116.shtml





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