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ホーリー・マウンテン

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(原題: The Holy Mountain 1973年/アメリカ 114分)
監督・脚本・音楽/アレハンドロ・ホドロフスキー 製作/アレン・クライン 撮影/ラファエル・コルキディ
出演/アレハンドロ・ホドロフスキー、ホラシオ・サリナス、ラモナ・サンダース、アリエル・ドンバール、ホアン・フェラーラ、アドリアナ・ペイジ

概要とあらすじ
「聖なる山」をめざす9人の男女の姿を描く。製作はアレン・クライン、監督・脚本・音楽・出演は「エル・トポ」のアレハンドロ・ホドロフスキー、撮影はラファエル・コルキディが担当。出演はほかにホラシオ・サリナスなど。砂漠で磔にされている盗賊(ホラシオ・サリナス)が、裸の子供たちに石を投げつけられた後、自らの力で十字架から降り立ち、腕のない小人と共に町へ向かった。喧騒の町で盗賊は捕えられ、石膏で作られたキリスト像が積み重ねられている鏡の間に閉じ込められる。やがてそこから脱出した彼は、高い塔のてっぺんにたどりつき、そこで練金術師(アレハンドロ・ホドロフスキー)と出会った……(映画.comより抜粋



金はうんこで、うんこは金!

若い頃、ヘンな映画ばかり観ていました。
今でもたいして変わっていませんが、
とくに若い頃に観る映画はヘンであることが前提で
とにかく刺激を与えてくれるものを欲していたのかもしれません。
なかでも、とりわけヘンだったのが
『ホーリー・マウンテン』
生意気なだけの童貞小僧にこの作品を理解などできるはずもなく、
ただ、すげえすげえとはしゃいでいたのを覚えています。
そして、長い年月を経たのちに再び観てみれば……
こんな映画を喜んで観ているからお前はモテないのだと
昔の自分に説教してやりたい気分です。

とはいえ、理解なんてできなくて当然。
ほぼ全編にわたって、イメージの洪水に溺れているようです。
ひとつひとつにどんな意味があるかを理解しながら
鑑賞するのは至難の業でしょう。
これでもかとばかりに引用、隠喩、転換そして宗教的イメージ
小刻みに連続して登場します。
さらにそのなかには、悪ふざけやジョークも入り交じっています。
あらかじめ言っておきますが、
細々としたディティールの全てが
必ずなにかを象徴していることに間違いありません。
ただ、いい加減にデタラメをやっているのだとすれば、
これほどまでに豊穣で多彩なイメージを発想することはできません。
必ずや、ホドロフスキーの頭の中では
論理的整合性がとれたうえで、表現の飛躍を行なっているのです。
これは映像を用いた詩なのです。
ひとつひとつをじっくりと考察すれば意図が判明するはずですが
そんな猶予を与えないほどの量とスピードで圧倒するので
こちらとしては身を委ねるほかないのです。

マリリン・モンローのような二人の女性が全裸にされ、
髪を刈り上げて丸坊主になる冒頭のシーンで宣言されているように
この作品は、虚飾にまみれた世界を嘲い、
本当に価値あるものはなにかを問いただす物語
であり、
その後語られるさまざまなエピソードは
冒頭シーンのバリエーションにすぎず、
それはラストシーンまで終始一貫しています。

顔いっぱいにたかる蠅、手のひらに咲く花、
タロットカードを背負った手足のない男、
トラックで運ばれる大量の子供の死体、
死体の胸から飛び立つ鳥、
磔にされた羊、トカゲとカエルの戦争……
これでもかとばかりに登場する象徴的イメージの多くは
タロットカードの意匠によるところが大きいのではないでしょうか。
ホドロフスキーでさえ、
最初は意味がわからなかったというタロットカードは、
一枚でも多くの意味を持ち、
さらにそれが連なることで別の意味を生んでいくそうなので
タロットカードの世界に魅了されたホドロフスキーが
このような発想をするのは必然なのでしょう。

それでも、わかりやすいところは
あからさまにわかりやすいのもホドロフスキー印で
「キリストの大安売り」と書かれた看板がある店の奥で
複製されたキリストのレプリカに埋もれるキリストそっくりの盗賊の姿は
偶像崇拝に対する痛烈な批判でしょう。
いかすポップなファッションの娼婦たちが登場して
チンパンジーを連れた女はキリスト風盗賊に心惹かれているようですが
(これはマグダラのマリアかな?)
娼婦たちの中でもひとりだけ幼い少女に眼をつけた老人が
自らの義眼を外して渡すシーン

さっぱりわからないからスルーすることにして、
とてつもなく高くそびえ立つ塔の中でキリスト盗賊を待ち受けていたのが
錬金術師ホドロフスキー御大
うんこを金に変えてしまうほどの能力があるのです。
これは、君たちが有り難がっているのはもともとうんこだよ、と
言わんばかりだし、
あるインタビューで「アートとはなにか?」と聞かれたホドロフスキーは
「アートとは光るうんこだ!」と言ったそうで
決して矛盾ではない、逆転の論理が垣間見えます。

錬金術師ホドロフスキーのもとに集まった人間たちは
それぞれに物欲、肉欲、支配欲などなどにまみれた人間たちです。
彼らは不老不死という欲の最たるものを手に入れようとしています。
彼らの経歴を紹介するシーンでは
ラブ・マシーン(出産までする!)やミッキー・マウス、
子供をおもちゃで洗脳する女社長や
マッチョな男の睾丸コレクションなどなどが登場します。
睾丸を集めるということは、自分以外の人間の血を絶やすということで
……みたいなことを考え始めるとキリがないのです。

ま、とにかく。
われわれ日本人が富士山を敬うように
世界中に存在する山岳信仰になぞらえて
ホドロフスキーに従われた一行は
「ホーリー・マウンテン」の山頂を目指すのです。
断崖絶壁でのマンズリとかあるけれど、気にしないことにして
ついに山頂へたどり着いた一行。
不老不死の秘密が明かされるのかと思いきや、
突然カメラ目線になったホドロフスキーが
「カメラ、引いてくれ!」というと
そのシーンを撮影するスタッフが写り込み、
「これは映画だ! これも虚像だ!」という
驚きのメタ構造でシ・エンド。
なんとまあ、あっけにとられる終わり方ではありますが
虚像が蔓延する世界の真実を暴露しようとするこの作品も
ひとつの虚像に過ぎない
と舌を出すのは
真っ当な自己批評性だと思います。
観客がここまで観てきたものは、
高尚な芸術でも何でもなく、うんこなのだと。
でも、うんこをバカにすんなよ、と。

どういうタイミングで収録されたのかわかりませんが
DVDの特典映像でタロットカードについて解説するホドロフスキーが
「現実のダンス」という言葉を使っていたのは驚きました。
ずーっと、繫がっているのね。





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