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三姉妹 雲南の子

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(原題: Three Sisters 2012年/ フランス・香港合作 153分)
監督/ワン・ビン 製作/シルビー・ファグエ、マオ・ホイ 撮影/ホアン・ウェンハイ、リー・ペイフォン、ワン・ビン 編集/アダム・カービー、ワン・ビン

概要とあらすじ
「無言歌」のワン・ビン監督が、中国・雲南地方、標高3200メートルの高地にある貧しい村に暮らす幼い3人姉妹の生活に密着したドキュメンタリー。中国国内で最貧困と言われる雲南地方の山間の村に暮らす10歳の英英(インイン)、6歳の珍珍(チェンチェン)、4歳の粉粉(フェンフェン)の幼い3姉妹は、母親が家を出、父親は出稼ぎに行ってしまったため、長女が下の子の面倒を見ながら、家畜の世話や畑仕事に一日を費やし、子どもたちだけで暮らしている。貧しく厳しい環境の中、たくましく生きていく少女たちの姿をとらえた。第69回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀賞受賞。(映画.comより



無口さゆえの饒舌

最近では、
買い物目当てでツアーを組んで我が国にやって来る中国人たちが
ニュースで取り上げられたりしているのはご存じの通り。
映画の世界でも、アメリカ映画でありながら
中国資本に頼っていて実質的には中国映画なんじゃないの?
というような作品も多くみられます。
いまや、世界経済は中国を無視することなどできない状況で、
その急速な発展ぶりはめざましいものがありますが
どうやらそれは中国のごく一部の人たちの間で
起きていることのようですな。

『三姉妹 雲南の子』
そんな中国の経済発展とは全く無縁に暮らす人々の記録です。
中国で最も貧しいと言われる雲南省の山中の村に住む三姉妹、
10歳の英英(インイン)、6歳の珍珍(チェンチェン)、
4歳の粉粉(フェンフェン)
を中心にして映画は進んでいきます。

状況を説明するナレーションなどが一切入らないため、
暗い家の中で食事の支度をする幼い三姉妹が置かれている状況は
すぐには理解できませんが、
どうやら親がおらず、子どもたちだけで生活しているようです。
髪が短くて、ほとんど男の子にしかみえない年下の二人は
年相応にふざけたり、ぐずったりしていますが
いつも張りつめたような表情をしている長女の英英
二人の妹たちの母親役を担っているということは、すぐにわかります。
食事は、近隣の親戚に世話をしてもらっているようですが
あまり歓迎されているようすはありません。
三姉妹はさまざまな家業の手伝いをさせられています。

三姉妹と、この村に住む人々の暮らしは
貧しさを通り越して、原始的ですらあります。
標高3200メートルという土地のため、穀物も育たず、
ジャガイモだけが唯一の食糧とのこと。
三姉妹はまともに風呂にも入れず、
ずっと同じ服を着ていてシラミがわいたりしているのですが
おそらく、服を着替えていないというよりも、
ずっと脱いでいないようにみえます。

やがて、三姉妹の父親が出稼ぎから一時帰宅して
彼女たちの母親がこの土地の生活に耐えきれずに
逃げてしまった
ことがわかります。
それでも、カメラを回しているスタッフが
「お父さんや、お母さんのことはどう思う?」
なんて、子供に聞いたりしないのです。
観客はあくまで観察者として映像を見つめるほかないのですが
子どもたちの表情は雄弁で
とくに長女の英英はあれほど無表情だったにもかかわらず
父の姿を見て笑顔をみせていました。

父親は37歳。まだまだ何でもできる年齢ですが
彼とて現状が精一杯なのでしょう。
三姉妹の祖父に「子供に服と靴を買ってやれ」といわれても
「まだ着られるよ」と渋ったりしています。
父親は幼い下の二人を連れて再び出稼ぎ先へ戻ることを告げ、
長女・英英が村にひとり残されることになるのですが
「わたしは大丈夫」といってみせる英英。
彼女の複雑な心中は、いわずもがな。

とうとう、ひとりになった英英。
あいかわらず無表情で硬い顔つきをしているけれど
暗い家の中、一人で食事をする(といってもジャガイモをかじる)姿は
あまりにも過酷です。
それでも英英は、学校の勉強は好きなようで
熱心に宿題をしているのですが
すると祖父の声がかかり、
「勉強なんかして。もし羊を盗まれたらどうやって暮らす?」
と言われ、羊の後を追うはめになるのです。
確かに、目の前の生活は重要ですが、
これでは未来がありません。
せっかく英英が知識欲と向上心を持っても、
この村の現実の前では、勉強は無駄でしかないのです。

村の収穫を祝う宴が催され、
働き盛りの年頃の男たちも集まってきますが
基本的にこの村には子供と年寄りしかいないのです。
ここでやっと、中国におけるこの村の有り様がわかります。
以下、公式サイトより引用します。

 雲南では、高地に暮らす村民の貧困を解決するため、
 低地への全村移住政策が推し進められ、
 本作が撮影された洗羊塘村もすでに全村移住が決まっている。
 だが、どこへいつ移住するのか、村民もまだ知らされていないという。
 本作は、政治的なメッセージを発する映画ではないが、
 急激な経済的繁栄に沸く中国に、
 これほどの格差が存在するという事実には驚かざるをえない。
 また、今もなお“ひとりっこ政策”が続いている中国にあって、
 三姉妹というタイトルに
 すでに中国社会が現在抱える問題を感じる観客も多いだろう。


この宴の最中に登場する、携帯電話とゲーム機が放つ
電子的な光と音の猥雑さが異常なほど違和感を放っていました。

先述したように、説明的なナレーションのない作品ですが
長女の咳、風の音、家畜の鳴き声などの音が常に響き、
なにかを訴えようというあからさまなメッセージを打ち出すわけでなく、
ただあるがままの時間を切り取ったようなこの作品は
その無口さゆえに、饒舌でした。





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