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チャイニーズ・ブッキーを殺した男

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(原題: THE KILLING OF A CHINESE BOOKIE 1976年/アメリカ 135分)
監督・脚本/ジョン・カサヴェテス 撮影/フレデリック・エルムス 、 マイク・フェリス 美術/フェドン・パパマイケル 音楽/ボー・ハーウッド 録音/ボー・ハーウッド 編集/トム・コーンウェル
出演/ベン・ギャザラ、ティモシー・アゴリア・ケリー、シーモア・カッセル、アジジ・ジョハリ、メーダ・ロバーツ、アリス・フリードランド、アル・ルーバン

概要とあらすじ
マフィアに借金の返済を迫られ、その肩替わりに暗黒街のボスを殺すことを請け負う羽目になるクラブ・オーナーの姿を描くフィルム・ノワール的な感覚の作品。監督・脚本は「フェイシズ」のジョン・カサヴェテス。製作は「オープニング・ナイト」のアル・ルーバン、撮影はフレデリック・エルムスとマイク・フェリス、音楽は「ラヴ・ストリームス」のボー・ハーウッドが担当。主演は「華麗なる相続人」のベン・ギャザラ。撮影はロサンジェルスの本物のナイトクラブを改装して短期間で行われ、ストリッパー役にはサンセット大通りの実際のストリッパーやプレイボーイのカヴァー・ガールらが集められ、当時デイヴィッド・ボウイの恋人だった黒人モデルのアジジ・ジョハリも出演している。(MovieWalkerより



幸せな人間とは、気楽になれた人間だ

『ゴッド・ファーザー』の大ヒットで
流行したマフィアものに便乗してつくられたそうな、
ジョン・カサヴェテス監督のフィルム・ノアール
『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』
マフィア同士の抗争、ファミリーの絆などなど
マフィアものでおなじみの設定があるっちゃあるけど
どっからどうみてもカサヴェテス流の映像と物語です。

ぶっきらぼうさがカッコいいオープニング・タイトルから、
タクシーから降りてきた男がカフェの席に着いて、
姿の見えない待ち合わせの相手と会話するシーンの長回しで始まります。
その後、トイレで札束を数える待ち合わせの相手。
トイレから出てくると、「これでお前も一国一城の主だな」
車から降りてきた男にいうと
「お前はクズだ。二度と会わない」と返す男。
この時点では、状況がさっぱりわかりません。
カフェを出た男はバーで酒をあおり、へべれけになりながら、
けばけばしい外壁のショーパブへたどり着くまでの
バーの喧噪やタクシーの運転手との無駄話など
ストリート感あふれる手持ちカメラの映像が
これぞカサヴェテスといった感じです。

まったく説明を排除したシーンが続くなか、
やがて、その男コズモ・ヴィテリ(ベン・ギャザラ)
ショーパブのオーナーで、
冒頭のシーンで借金を返し終えたのだとわかります。
やっと店が完全に自分のものとなり、
晴れて「一国一城の主」になったのですな。
コズモは店のオーナーとしてだけではなく、
ショーの演出にも関わり、美しいストリッパーたちを愛し、
また彼女たちからも慕われているようにみえます。
楽屋でいまいちパッとしないジョークを披露するコズモの態度から
彼の人の良さが伝わります。

客としてやってきたモート(シーモア・カッセル)にすっかりおだてられ、
さらに上機嫌になったコズモは、
借金完済のお祝いにストリッパーたちを引き連れて
モートが経営するカジノへ出かけます。
女性たち一人ひとりにコサージュをプレゼントする
コズモがかわいい。

ところが、楽しいお祝いになるはずのパーティで、
なんとコズモがポーカーで大負け。
またまたどえらい借金を抱えることになるのです。
もう、ほんと、なにやってんだよ! コズモ! なのです。

コズモは失意のどん底、のはずですが
帰るその脚で、ダンサー志望のカフェの店員に手を出しかけたり、
意外と緊張感はなさそうに見えます。
やけっぱちになっているのかもしれませんが。
ミスター・ソフィスティケーション(脚本家メーダ・ロバーツ)と名乗る
道化役をMCにしたグズグズなお色気コントが長々と映し出され、
コズモの置かれた危機的な状況を忘れそうになります。

とはいえ、金を貸したほうが忘れるわけもなく、
モートとその一味が店にやってきて、
借金の取立かと思いきや、借金はチャラにしてやるから
中国人のノミ屋「チャイニーズ・ブッキー」を殺せと言われるのです。
一度は断るものの借金を返すアテもなく、
再び現れたモート一味に脅されて、コズモは殺人を引き受けます。
大勢のイカツイ男たちが乗り込んだ暗い車の中で
拳銃を渡され、手順を説明されるシーンが恐ろしく、
緊迫感満載です。

モート一味に与えられた盗難車で
チャイニーズ・ブッキー宅へ向かうコズモでしたが、
なんと車がパンク!
トランクから予備のタイヤを出そうにも
なにしろ盗難車だからキーがない。
車を置き去りにしてタクシーを呼ぶコズモの
災難っぷりを見ていると、いたたまれなくなります。
それでもショーの出来を気にして店に電話をかけるコズモは
自分を落ち着かせようとしているのか。
なんとかチャイニーズ・ブッキー宅へたどり着き、
首尾良く浸入したものの、
チャイニーズ・ブッキー=ノミ屋のじいさんは寝ているはずなのに
がっつり起きていて、女と一緒に風呂に入ったのです。
全然、話が違うのです。コズモ、哀れ!

なんとか目的を達成したコズモでしたが
モートは真相を知っているコズモを始末しようと企みます。
しかし、誰もいない駐車場に連れ出されたコズモは
すでに人がいいだけの男ではなくなっていました。
身を隠したコズモを、一人の追っ手が警戒しながら追跡する
静かで長いシーン
が圧巻です。
暗闇のなかでついに対峙した追っ手とコズモ! と思ったら
いきなりストリッパーのシャワーシーン!
そしてコズモがゆっくりと現れ、
どうやらコズモが勝負に勝ったことがわかるという
大胆な編集が見事です。

脇に傷を負ったままのコズモが店に行くと
ステージには誰も登場せず、ショーが始まっていません。
楽屋に行くと、ミスター・ソフィスティケーションが
「俺のジョークなんて誰も聞いてないし、
 盛り上がるのは女たちがおっぱいみせたときだけだ」

という、いまさらな不満を訴えてごねているのです。
そんな話、出番直前に言い出すことじゃないだろと思うものの
憔悴仕切っているはずのコズモは
ジョークを交えてミスター・ソフィスティケーションをなだめ、
準備が整うまで自らステージに立って場を繫ぎます。
客にお詫びの一杯を振る舞い、
バーテンやウェイトレスたちにひとりひとりスポットライトを当てて
紹介していく姿から
彼がこの店を誇りに思い、愛していることが伝わるし、
深い傷を負っている彼の別れの言葉のようにも聞こえます。

機嫌を取り直したミスターとストリッパーたちが
ステージに登場したのを見届けると
ひとり店の外へと出て、わき腹を押さえるコズモの
不安な行く末を感じさせながら、ジ・エンド。
「幸せな人間とは、気楽になれた人間だ」というコズモが
気楽になれる日はやってくるのでしょうか。

フィルム・ノアールといえば、そうなんでしょうが
マフィアの側ではなく、
マフィアの抗争に不本意にも巻き込まれていく男の
悲哀を描いた、なんとも味わい深い作品です。





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