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父の秘密

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(原題: Despues de Lucia 2012年/ フランス・メキシコ合作 103分)
監督・製作・脚本/マイケル・フランコ 撮影/チューイ・チャベツ 編集/マイケル・フランコ
出演/テッサ・イアアレハンドラ、ヘルナン・メンドーサ、ゴンザロ・ヴェガ、タマラ・ヤズベック、ジャビエ・フランシスコ

概要とあらすじ
2012年・第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞した心理ドラマ。監督は、弱冠31歳で長編2作目となる本作を撮り上げたメキシコの新星マイケル・フランコ。母親を失った父娘がすれ違い、いつの間にか日常から逸脱していく姿を静かに描き出していく。妻ルシアを交通事故で失った喪失感から抜け出せないロベルトと娘のアレハンドラは、新しい土地でやり直すためメキシコシティへ引っ越してくるが、2人は心の傷を直視することができず、他愛ない言葉を交すだけの関係になっていく。アレハンドラは新しい学校で友だちもでき、楽しく過ごし始めるが、酔った勢いで関係を持った男子生徒に行為を盗撮されたことをきっかけに、いじめの標的になってしまう。父親にいじめを相談できないアレハンドラは、ある日突然姿を消してしまう。(映画.comより



「娘の秘密」じゃなくて?

あいかわらず、上映期間を逃しての
DVD鑑賞となった『父の秘密』ですが
これは観たい! と思っていたにも拘わらず
DVDをトレイにのせる頃には
その概要さえ覚えていませんでした。
近親相姦の話じゃなかったけ? という完全に的外れな
予備知識で鑑賞に挑んだ次第です。

車内の後部座席に据え置きされたカメラの視点で始まり、
自動車工場の工員の話からすれば、
ほぼ総取っ替えの修理を施した車に男が乗り込んで
しばらく走ったあとで車を乗り捨てるまで
ワンカットでみせているのが好印象。
この時点では、物語の行方はなにもわかりませんが
ロクなことにはならないのは一瞬にして理解でき、
冒頭でカマしてきたな、という感じです。
この、車の後部座席からの視点で長回しというのは
このあとも何度も登場します。
学校の教室のシーンなどでもフィックスされた映像が多く、
手持ちカメラによる臨場感よりも
主体から一歩離れた客観(傍観)性を重要視しているように思います。

説明的なセリフはなく、
日常の会話にさりげなく情報を織り交ぜながら
観客が自然と物語を理解できるように努めているのには好感が持てます。
高級住宅街プエルト・ヴァラルタからメキシコ・シティへと
車で10時間かけて移動する父と娘には
空路などでもっと早く目的地に到着する方法もあったはずですが
母を交通事故で亡くしたあと、
哀しい現実から逃げるように新天地へと旅立つ親子には
10時間という時間が必要だったのかもしれません。

転校生のアレハンドラ(テッサ・イア)
彼女を迎え入れる仲良しグループたちの
ちょっともじもじした関係が微笑ましい。
順調に新生活に馴染もうとしているアレハンドラ。
かたや、料理長としてレストランに雇われた
父親ロベルト(ヘルナン・メンドーサ)
妻の死のショックから完全には立ち直ってはおらず、
イライラを募らせては、キレやすくなっています。
とはいえ、そのいらだちが娘のアレハンドラに向かうことはなく、
努めていい父親を演じているように見えるし、
アレハンドラのほうもいい娘を演じているようにみえます。
このあたりが「父の秘密」という邦題の表現となり、
その後の「娘の秘密」ともつながっていくのです。
アレハンドラに、尿検査によってマリファナの陽性反応が出たことも
父の知らない娘が存在していることの前哨でしょう。

友人のパーティーに参加したアレハンドラは
ドラ息子と不意に盛り上がり、
一夜限りのセックスに興じることになるのですが
その模様をスマホで撮影した動画が
何者かの手によってすかさずネットにアップ
され、
アレハンドラの地獄の日々が始まるのです。

そんなこととは露知らず、パーティーから帰宅したアレハンドラが
パソコンを開いたとたんにその動画が再生されたのは
一体どういうことなのか甚だ疑問ではありますが
それはともかく、翌日からアレハンドラに対するいじめが発生。
その後、いじめはどんどんエスカレートしていくのです。

前日まで仲間だった友人グループは、手のひらを返したように
アレハンドラに対する幼稚で陰湿で醜悪な攻撃をしかけます。
もう、だめだ! こんなものは観ていられない!
ぼかぁもう、怒りに身体が震えてテレビ画面に殴りかからんばかりです。
こういう映画をみると、いつも腹が立って腹が立って
いてもたってもいられなくなるのです。
そもそもアレハンドラは被害者であるはずなのに
誰一人として彼女の側にたつ者がいないのです。
(ま、そこは描いていないわけだけど)
集団心理だかなんだか知りませんが
こいつらは全員無能なクズです。

細かい嫌がらせが毎日繰り返され、
女子トイレに押し入られてやらせろと襲われ、
女友達に髪の毛を切られるアレハンドラ。

なぜここまでアレハンドラが我慢しているのか
僕には理解できません。
公式サイトの監督のインタビューによれば
「アレハンドラは、母を失った父親の心配事を
 これ以上増やしたくないからいじめを我慢していた」

とのことですが、とっくに度が過ぎているでしょう?
厳格そうな学校も父親ロベルトも
アレハンドラの異変に全く気がつきません。
つーか、張本人のドラ息子はなにやってんだよ!
アレハンドラがなにをされているか知らないわけないだろ!

これまた、行かなきゃいいのに
林間学校(遠足?)に参加したアレハンドラは
一日中バスルームに閉じ込められた挙げ句にレイプされ、
その上、砂浜で無理矢理酒を飲まされて横になっているところに
小便をかけられます。

「小便臭いと先生にバレるから、海に入って洗ってこい」
「ひとりだけ濡れてると怪しまれるから、みんなで海に入ろう」
さんざん、思いつく限りの下劣な暴力を振るいながら
「先生にバレたくない」という、この能無しゴミどものみみっちさ。

僕の怒りのタコメーターの針は完全に振り切っていましたが
ひとり沖へと進み、そのまま姿を消してしまうアレハンドラ。
そうだ、それでいいんだ、アレ!
彼女がサーフィンをこなし、プールで泳ぐシーンが何度もあったことから
これは自殺ではないと確信しておりました。

やっと事態に気がついた学校と父親ロベルト。
クズどもは押し黙って、保身に懸命です。
警察はクズどもが未成年だという理由でなかなか動いてはくれません。
時折、法というやつは、何の役にも立たないどころか
罰するべきクズを守ってしまう代物です。

かくなるうえは、法も倫理も道徳も関係ありません。
クズは必ずや罰せられるべきで
それができるのは父親ロベルトだけなのです。
ドラ息子を誘拐し、ボートで沖までたどり着いたロベルトは
手足を縛られたドラ息子を無言であっさり海に放り捨てます。
僕は思わずテレビに向かって拍手拍手!! そうだ、そうこなくっちゃ!
映画は不吉な余韻を残しつつ、ジ・エンド。

結果的に、アレハンドラは生きていました。
ロベルトはそのことも知らないのですが
アレハンドラが生きていたからといって
ロベルトの行為がやり過ぎだとは思えません。
もちろん、いかなる場合でも殺人が許されるべきではないのは
理解していますが、自分が当事者になったとき、
本当にそんな悠長なことを言っていられるでしょうか。
また、こんなことをしても根本的な問題の解決にはならない、
という意見もあるかも知れませんが
根本的な問題が解決するまで
被害者は指をくわえて待っていればいいのでしょうか。
決して、ロベルトの判断が正しいというつもりはありませんが。

やはり公式サイトで、マイケル・フランコ監督
「いじめ問題を描こうとしたわけではない」と言っているし、
おそらくは、コミュニケーションのすれ違いや
不可抗力を含む人間の隠された暴力性のようなものを
描こうとしているのは感じられるものの、
なにしろ露悪的ないじめ描写が作品の大半を占めている以上、
いじめを描いた作品だと評価されても致し方ないのではないでしょうか。
随所で、父親ロベルトのキレやすさが強調されていますが
娘がこんな非道い目にあっていたら、
キレやすいとかいう問題ではないでしょう。
よく似たシチュエーションの
『ふがいない僕は空を見た』を思い起こして比較してみても
いじめ描写以外の部分で、より複雑な心理を描くことができれば
さらに深く心をえぐる作品になったのではないでしょうか。

あんなクズどもは、自分たちがひどいことをしたことなど
どうせケロっと忘れてしまうのでしょうから、
忘れたくても忘れられないように
あのデブには、額に「I am RAPIST」とタトゥーを入れてやり、
女友達は頭皮をやけどさせて二度と髪が生えないようにしてやり、

えーっと、それから……

やること、いっぱいあるな!





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