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複製された男

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(原題: Enemy 2013年/ カナダ・スペイン合作 90分)
監督/ドゥニ・ビルヌーブ 原作/ジョゼ・サラマーゴ 脚本/ハビエル・グヨン 撮影/ニコラ・ボルデュク 美術/パトリス・バーメット 衣装/レネー・エイプリル 編集/マシュー・ハンナム 音楽/ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ
出演/ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ、ジョシュ・ピース、ケダー・ブラウン、ダリル・ディン

概要とあらすじ
主演のジェイク・ギレンホールが1人2役を演じ、「灼熱の魂」「プリズナーズ」のドゥニ・ビルヌーブ監督のメガホンで、ポルトガル唯一のノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説を映画化。自分と瓜二つの人物の存在を知ってしまったことから、アイデンティティーが失われていく男の姿を描いたミステリー。大学の歴史講師アダムは、DVDでなにげなく鑑賞した映画の中に自分とそっくりの端役の俳優を発見する。驚いたアダムは、取り憑かれたようにその俳優アンソニーの居場所を突き止め、気づかれないよう監視するが、その後2人は対面し、顔、声、体格に加え生年月日も同じ、更には後天的にできた傷までもが同じ位置にあることを知る。やがて2人はそれぞれの恋人と妻を巻き込み、想像を絶する運命をたどる。(映画.comより



結婚、それは蜘蛛の巣

また、めんどくさい映画をみてしまった。
ちょっとひねくれたスリラーでしょ〜なんて
さほど注目していなかった『複製された男』
軽〜い気持ちで観に行ったら……
めんどくさい。……考えるのがめんどくさい。
さりとて、理解できるか?と観客を挑発しているような作品なので
考えないわけにもいかないでしょ?
しかも、町山智浩氏が最近始めた
『映画その他ムダ話』という有料サイトで
『複製された男』の解説をしているではないか。(なんと55分!¥200!)
僕みたいなチンカスがレビューを書いたところで
一体なんになるというのか。
みんなで町山さんの解説を聞けばいいじゃないか。
下手にレビューを書いて全く見当外れだったら、
どうするつもりだ? 恥をかくだけじゃないか。
あ、わかった! 観なかったことにしよう! って、バカ!!
なにが町山だよ、知らねえよそんなやつ!!
……というわけで、自分なりに考えてみることにします。
恐る恐る。

原作はノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴ、23冊目の小説。
英題は『The Double』、ポルトガル語では『O Homem Duplicado』
これを翻訳すると『複製された男』となるそうですから
映画の邦題は原作に沿ったもののようです。
とはいうものの、映画の原題が『Enemy(=敵)』となっているのは
大きなヒントになるのではないでしょうか。
むしろ『複製された男』というタイトルは
あえてミスリードしようとする意図的なものを感じます。

デカダンな秘密クラブのような暗がりに集まった人々。
どうやら全裸の女たちが身体を重ね、あえぎ声を挙げています。
ステージに置かれたクローシュ(トレーの丸いふた)の中から
蜘蛛が出てくると、その周りを歩いていたハイヒールの女性が
蜘蛛を踏みつぶします。
顔を手で覆って指の間からそれを見ていたジェイク・ギレンホールの
左手薬指で光る結婚指輪
物語の重要な鍵を握っているのは一目瞭然です。

大学で歴史を教えているアダム(ジェイク・ギレンホール)
「支配」についての講義をしていたのも象徴的です。
先に結論めいたことを言ってしまいますが
指輪に象徴される「結婚」と「支配」
この作品のメインテーマでしょう。

高層マンションの一室に暮らすアダムは、
かなり経済的に恵まれているようにみえますが、
ときおりカメラが映し出す町並みはどれも無機質な高層マンションで
異様なほど均質化された世界を表現しています。
それぞれの部屋の窓が整列している光景は
それ自体が繰り返し複製されたもののようにもみえます。
また、アダムが屋外で行動するときには
ほとんどの場合、人気がないのも
異空間の不気味さを醸し出しています。
アダムにとって、自分と無関係な人間は
目に入っていない(存在しない)ことの表現だという
深読みもできそうです。
アダムにはメアリー(メラニー・ロラン)という恋人がいて
それなりに二人の関係はうまくいっているようにみえるものの、
ことセックスにおいては、微妙なすれ違いをみせています。

ある日、大学の同僚から不意に映画の話題をふられたアダムは
映画に特別の興味がないにもかかわらず、
薦められた映画『道は開かれる』のDVDをレンタルします。
なんとまあ、意味深なタイトルじゃこと。
その映画の中の端役に、自分と瓜二つの
「ダニエル・センクレア」という名の俳優を発見し、
アダムの日常が少しずつ狂い始めます。

アダムに映画を薦めた同僚はこのあと登場しませんが
『道は開かれる』という意味深なタイトルからも窺えるように
これはアダムに対する明らかな啓示です。
アダムは啓示に導かれてDVDを観たのでしょう。
さらには、映画という虚構の世界であること、
加えて、俳優という職業が他人の人格を演じる仕事であることなども
必然的に用意されたものではないでしょうか。
恋人のメアリーが「酔っちゃったみたい」なんつって
ベッドに誘っていたのを相手にしなかったくせに
映画を観た後のアダムは
なかばレイプのように眠っているメアリーを求めて、拒否されます。
これはアダムが、映画をきっかけにして
触れてはいけないなにかに影響された
のではないでしょうか。
そのなにかとは、アダムが抑圧していた「もうひとりのアダム」です。

正直にいって、
「ダニエル・センクレア」=アンソニー(ジェイク・ギレンホール)
発見したアダムの動揺ぶりは理解できませんでした。
もしも、映画で自分にそっくりな人物を見つけたら
「こいつ、オレにそっくりじゃね?」って、知り合いにみせて
「ああ、いわれてみればそうかもね」って、返されて
おしまいのような気がしないでもありませんが
そんな半端なそっくりじゃなかった、てことですかね。
とにかく、アダムはアンソニーに会いたいという気持ちを
抑えることができなくなります。
まずはアンソニーが所属する芸能事務所に
探りを入れようとするアダムは
変装するためか安いサングラスを購入しますが
そのサングラスのフレームについていた
なんちゃってブランドみたいなマークが
これまた模造品をイメージさせるし、
その事務所が入っているビルの手前が工事中だったのも
気になります。……いや、深追いはよそう。

ついにアダムはアンソニーに電話をかけ、
物語が大きく動き始めます。
声がそっくりな男から電話がかかってきて
動揺するアンソニーでしたが、
妊娠中の妻ヘレン(サラ・ガドン)の言動が
さらに謎を深めます。
あとから思えば、ヘレンだけが
現実的な存在のように思えなくもありませんが
アダムが講師をしている大学をヘレンが訪れるシーンの
ふたりのやりとりは、いかようにも解釈できる絶妙さ。
ベンチで他人行儀な挨拶を交わしたあと、
(ていうか、一応他人なんだけど)
ヘレンが確認するためにアンソニーに電話すると
アンソニーは応答するのですが、
その瞬間アダムの姿は建物の中に消えようとしていて、
アダムとアンソニーが別人なのか同一人物なのかを
確定できないように仕向けています。


ついに対面したアダムとアンソニー。
なぜか、アンソニーはアダムと会う前から
ヘレンと寝ただろ! という、いちゃもんをつけて
アダムの恋人メアリーを寝取ろうと企てています。
アンソニーの理不尽な申し出に、やっぱりなぜか従うアダム。
このあと、終盤にかけて
アダムとアンソニーを分ける境界は
徐々にあやふやになっていきますが
ここは奥ゆかしく、詳細を語ることは避けようと思います。
アダムの母キャロライン(イザベラ・ロッセリーニ)
「全く同じだなんてあり得ないわ」というセリフや
アンソニーと共通するブルーベリーに対するこだわり、
または、アンソニーがアダムになりすましている間、
逆にアンソニーになりすましたアダムと会話するヘレンの
「(今日は)学校はどうだった?」というセリフに
この作品を読み解くヒントが山ほど隠されているように感じます。
そして、虚を突くようなラスト。

自分なりに総括してみれば、この作品は
結婚、そして父親になるということの重責を前にした男が
現実および自由に対する欲求とどのように折り合いをつければいいのか
葛藤する、という男目線のマリッジブルー
描いているのではないでしょうか。
父親になることの恐怖でいえば『イレイザー・ヘッド』だし、
性欲版『ファイト・クラブ』のようでもあります。
結婚に限定するのが狭小なら
社会的規範という支配=蜘蛛の巣に囚われた人間が
自分を自分で騙しながら人格的に引き裂かれていく過程の
苦悩を描いているということはできないでしょうか。
社会の一員として生きる人間は、必ずやなにかに支配されていて
誰しも自分の中のある部分を抑圧し、
その支配のシステムの中で生きることを
やむを得ず選択しているのではないでしょうか。
アダムとアンソニーは、本来同一人物である人間の
引き裂かれた別人格である
、というのが僕の解釈です。

さて。こんなところにしておきましょう。
チンカスなりに考えてみました。
さてと……ここで

町山智浩氏の『映画その他ムダ話』を聞いてみることにします。
断じて、この記事は町山さんの解説を聞いてから書いていないし、
聞いた後で記事を修正したり、書き加えたりしません。
こればっかりは信用してもらうほかないけれど。
どきどき。わくわく。
(ちょっと面白いね、こういうの)

……
『映画その他ムダ話』、聞きました。
知識の量では到底かなわないけど
大方、見当外れではなかった! ほっとした!
そっかー、6ヶ月か! ちぎった写真か! バイクねぇ!
さすがのクオリティでした〜





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コメント

恋人役がメラニー・ロランで、妊婦の奥さん役がサラ・ガドンですよ。

2016/04/17 (日) 23:40:49 | URL | #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 役名含め逆になっていましたね。ご指摘ありがとうございます。

2016/04/18 (月) 19:09:07 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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