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アメリカの影

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(原題: Shadows 1959年/アメリカ 82分)
監督・脚本/ジョン・カサベテス 撮影/エリック・コルマー 編集/モールス・マッケンドリー 音楽/チャールズ・ミンガス
出演/ベン・カルーザス、レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、アンソニー・レイ、ルパート・クロス、デビッド・ポキティロウ、デニス・サラス、トム・アレン

概要とあらすじ
「ローズマリーの赤ちゃん」などの個性派俳優として知られ、後に「ニューヨーク・インディペンデント映画の父」と称され多くの映画作家たちに影響を及ぼすことになるジョン・カサベテスの記念すべき監督第1作。マンハッタンで暮らす白人と黒人の血を引く3兄弟が、白人社会の中でそれぞれ葛藤を抱えながら日常を生きる姿を描く。オールロケと台本なしの即興演出で俳優たちのリアルな表情を捉え、映画の新しい方向性を示した。(映画.comより



奏でるように撮る

もともと俳優だったジョン・カサベテス
監督第一作『アメリカの影』
舞台の即興演技を持ち込んだのは当然の成り行きのように思います。
ジョン・カサベテスに関する詳しい評論をされている方は
数多くいらっしゃると思いますので
ここではあくまで個人的な印象を語るほかないのですが
作られたセットの中でスタアが演技するそれまでの映画に
リアリティを感じられず、というか、
虚構の中で夢を見るのに飽き飽きして
むしろドキュメンタリーのほうに親近感を抱くような
時代のメンタリティー
があったのでしょう。
さらには、予算などなく、
なにからなにまで手持ち弁当の若手作家にとっては
思想的な問題と金銭的な問題が一気に解決するような
即興演出という手法は
願ったり叶ったりだったのではないでしょうか。

もちろん、ほかにやりようがなかったとも言えるのですが
全編に流れるジャズのアドリブ演奏と同様に
即興=アドリブというは
その場の思いつきでありながら
じつは全体の構造を想定しながら演奏しないと
成り立たないものです。
台本を作らず、その場その場で演技をつけていったという演出は
決して行き当たりばったりなものではなく、
全体をイメージして作られていることは
この作品をご覧になった方ならおわかりになると思います。
ジム・ジャームッシュヴィム・ヴェンダースに与えた影響を
誰しも感じることでしょう。

即興というと場当たり的な印象が強いと思いますが
ミュージシャンといいながら
実態はただのチンピラのベン(ベン・カラザース)を筆頭に
本来は歌手なのに、
不本意な仕事を任されるヒュー(ヒュー・ハード)
夢見がちで世間知らずなレリア(レリア・ゴルドーニ)の三兄弟が
それぞれに苦悩を抱え、人種差別などを乗り越えながら
結束している関係性が
後半にいくに従ってどんどんドラマを濃くしてきます。
3人とも自身が抱える問題は少しずつ違うのですが
結局のところ、みな「不本意」であることに
憤っているように感じました。
これには身につまされる思いでした。
自分の「本意」のまま、生きている人っているんでしょうかね。
……いるんでしょうねぇ。

じつは一番深刻な悩みを抱えているのはベンで、
彼は人種差別だとか言う前に
自分が何者なのかということに向き合うことなく
気を紛らわすためだけにチンピラのまねごとをやっているのです。
ヒューとレリアはそれなりに現実と向き合い、
なんとか一歩でも前へ進もうとあがいていますが
ベンだけはずっと自分自身をはぐらかしています。
そんなベンも無益な日常にやっと愛想を尽かし、
ひとりニューヨークの街に消えていくビターなエンディングで
映画は幕を閉じます。

前半は、ベンのエピソードから始まって
長兄のヒュー、妹レリアと断片的に映像が連なりますが、
これがあたかも一曲の構成のようです。
やんちゃなBメロで始まって、Aメロで一端落ち着き、
Cメロに展開するようなかんじです。
やがて後半になるとそれぞれのパートが一体化してひとつのテーマを奏で、
Bメロのマイナーに転調して終わるのです。

当時を反映する様々な文化に影響されて
この作品が作られたのは間違いないと思いますが
この作品で描かれる鈍い鬱屈は
現在においても当然解消されているようなものではなく、
むしろ増幅しているんじゃないかと思えるほどですが
世の中を呪うより、新しい世の中を作れ
と言われているような気がして
襟を正している次第です。





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