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マタンゴ

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(1963年/日本 89分)
監督/本多猪四郎 脚本/木村武 原作/ウィリアム・ホープ・ホジスン 原案/星新一、福島正実 撮影/小泉一 美術/育野重一 デザイン/小松崎茂 編集/兼子玲子 音楽/別宮貞雄 特技監督/円谷英二
出演/久保明、土屋嘉男、小泉博、太刀川寛、佐原健二、水野久美、八代美紀、天本英世

概要とあらすじ
7人の若者を乗せたヨットが、嵐のため無人島に漂着した。その島を探索した結果、彼らより先に、一艘の難破船が漂着していたことが判明する。だが乗員の姿はどこにもなく、ただあたりは奇妙な形状のキノコが群生しているのみだった。やがて食料の残りが少なくなり、彼らは恐る恐るそのキノコを食し始める。そしてそのキノコを口にした者は、人間の姿を失い、奇怪なキノコ・マタンゴへと変身していくのだった……。ウィリアム・ホープ・ホジスンのホラー小説「闇の声」を脚色した恐怖映画。エゴの果てにマタンゴに変身していく人間の姿を描く。水野久美の妖しい演技と驚愕のラストが必見。マタンゴのデザインは小松崎茂。(allcinemaより



楽しいなら、オレ、キノコでいいや

ストレートかつ駄菓子テイスト満載のタイトルが
魅力的な『マタンゴ』
このすがすがしさが素晴らしい。
現在なら『マタンゴ〜禁断の毒キノコ〜』なんつって
説明的な副題をつけているに違いありません。
客をバカにするんじゃないよ。

窓の外に拡がるギラギラした夜の東京のネオンをバックに
ひとりの男の回想で始まりますが
この最初のショットがこれから始まる物語の全てを
暗喩しています。

時代を感じさせるマンガチックなトランジションで
シーンは突然、海上のヨットへ。
絵に描いたようにちゃらけた男5人と女ふたり。
世界中のホラー映画でいつもそうであるように
こういう親のすねをかじって遊び呆けているクソガキは
必ずや罰を受けなければなりません。

この時点で7人のほぼ全員がロックオンされているといって
いいでしょう。
撮影はあきらかに合成だとわかるものではありますが
十分に許容範囲です。
その後、ヨットは当然のように嵐にみまわれるのですが
荒波に翻弄されるヨットはおそらく特撮でしょうね。
特技監督に円谷英二が名を連ねているから
というわけではありませんが
素人目に見ても見事だなあと思います。
『ライフ・オブ・パイ』に全くひけをとりません。
……ていうのは、ちょっと言い過ぎかもしれん。

マストが折れ、無線も壊れ、ラジオの電池もなくなって
着実に孤立無援のシナリオを驀進する7人。
ベタかもしれないけれど、こういうのを律儀に描写してくれると
観ているほうもノッてくるというもんです。

やがてどこかの無人島に漂着した7人は
船核実験の海洋調査船の残骸を発見し、
そこを基点にしたサバイバルが始まるのですが
怪物マタンゴがじわじわと彼らを恐怖に陥れるわけではなく、
欲望を露わにした彼らの人間ドラマが中心なのです。
最も誠実な教師の村井(久保明)
自分からは何も行動しないボンボンの笠井(土屋嘉男)
職人肌の船長の佐田(小泉博)
ちゃらんぽらんな作家の吉田(太刀川寛)
色欲禁欲に従順な小山(佐原健二)
色気を振りまくビッチ麻美(水野久美)
村井の教え子でカタブツお嬢の明子(八代美紀)
という、巧みに振り分けられたキャラクターが
醜い争いを繰り広げます。

どうやらマタンゴというキノコを食べると
大変なことになるのがわかって、
もちろん怪物マタンゴも登場するのですが
襲いかかってくるというふうでもなく、
ていうか、怪物マタンゴに扮しているのが
天本英世
っていわれてもまったく顔がみえないよ。

難波していた船が核実験の海洋調査船ということからもわかるように
この作品は『ゴジラ(1954)』とも繫がる放射能の恐怖を描いています。
そしてそれは、わけのわからない未知の生物ではなく、
人間自身が創り出した恐怖であり、
空腹に耐えかねた者はみずからマタンゴを食べてしまい、
醜いキノコの怪物と化すのです。
それはまさに、現代人の愚かさを象徴しているのでしょう。
深読みすれば、「海洋調査船から鏡がなくなっている」というのも
キノコ(=被曝)によって
醜く歪んだ自分の顔を見たくないからだけではなく、
自分を省みようとしない現代人に対する揶揄ということも
できそうな気がします。

余談ですが、
劇中で出演者たちが食べるキノコは、
東宝撮影所のある世田谷区砧に近い成城学園前にある
和菓子・洋菓子店の「風月堂」に特注で作らせた餅を
美術部が食紅などで着色したものという説もあるのだとか。(*)

また、この作品は
アナタハン島事件を参考にして構想されたといわれているそうです。
アナタハン島事件とは、
戦時中にサイパン島から北方約117キロに位置する島で
32人の男性とひとりの女性が共同生活をするうちに
女性を巡るサバイバルが勃発、死者行方不明合わせて
13名の犠牲者が出たというもので
これを直接的にモデルにしたのが
『東京島(2010)』というゴミ映画です。

ま、そんなことはともかく、
ラストシーンで、再び冒頭のシーンに戻り、
キノコと東京のネオンの極彩色があからさまに対比され、
ただひとり生き残った村井が
「あの島で暮らしていた方が幸せだったんですよ」
と、被曝してただれた顔をこちらに向けるのです。

たとえ化けキノコになろうとも
快楽にまみれて朽ちていくほうが
虚飾に彩られて腐っていることに気がつかない都会生活よりは
まだましだ、ということでしょうか。
敏感な作り手たちは50年以上前から
作品を通じて警鐘を鳴らし続けているのですが
現実の社会には一向に響くことがないようです。
怪獣映画のファンタジーのなかに
このような社会的なメッセージを込めざるを得ない
かつての作り手たちの切実な問題提起の態度をみるにつけ、
昔は大人がちゃんと大人だったんだよな、
なんて思ってみたりします。

参考にさせていただいたブログ
「Food Watch Japan」





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