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青春の殺人者

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(1976年/日本 132分)
監督/長谷川和彦 脚本/田村孟 原作/中上健次 製作/今村昌平、大塚和 撮影/鈴木達夫 美術/木村威夫 音楽/ゴダイゴ 録音/久保田幸雄 照明/伴野功 編集/山地早智子 助監督/石山昭信 記録/浅附明子 スチル/伊藤昭裕
出演/水谷豊、内田良平、市原悦子、原田美枝子、白川和子、江藤潤、桃井かおり、地井武男、高山千草、三戸部スエ

概要とあらすじ
一九六九年十月三十日、千葉県市原市で実際に起こった事件に取材した芥川賞作家中上健次の小説『蛇淫』をもとに、両親を殺害した一青年の理由なき殺人を通して、現代の青春像を描き上げる。脚本は元創造社のメンバーの一人で、作家に転向以来五年ぶりに脚本を執筆した田村孟、監督はこれが第一回監督作品の長谷川和彦、撮影は「祭りの準備」の鈴木達夫がそれぞれ担当。彼、斉木順は二十二歳。親から与えられたスナックを経営して三カ月になる。店の手伝いをしているのは、幼なじみの常世田ケイ子である。ある雨の日、彼は父親に取り上げられた車を取り戻すため、タイヤパンクの修理を営む両親の家に向った。しかし、それは彼とケイ子を別れさせようと、わざと彼を呼び寄せる父と母の罠だった……(映画.comより抜粋



時代と才能の奇跡の結晶

「ゴジ」の愛称で親しまれる長谷川和彦監督
初監督作品の『青春の殺人者(1976)』
『太陽を盗んだ男(1979年)』の2本しか作品がないのにもかかわらず
いまだに評価・人気ともに高い監督です。
映画を撮らなくなった理由には、古い付き合いのスタッフが
映画界を辞めてしまったことだそうですが
「本当に自分の作りたいものしか作らない」という完璧を目指す姿勢が
寡作にさせているように思います。
作家には、作品をじゃんじゃん作りながら自分を高めていこうとするタイプと
これぞという作品をここぞというタイミングで作りたいタイプと
大きく分けて二通りあると思いますが、
長谷川監督はまさの後者でしょう。
そうはいっても、35年という月日はさすがに長いよねえ。
新作を作ろうという気はあるみたいですが。

悶絶するほど懐かしい「光るはオヤジのハゲ頭!」を歌いながら
じゃれ合う順(水谷豊)ケイ子(原田美枝子)を捉えたオープニングは
じつはまったく別のシーンが用意されていたそうですが
結果的にふたりの幼児性を表現することに成功しています。
(気になって「光るはオヤジのハゲ頭!」をググって調べ始めたら
 山ほどバリエーションがあって、
 とにかく最後は「光るはオヤジのハゲ頭!」で終わることはわかったものの
 その発祥はよくわからず。こんなことを調べたりしているから
 映画の感想を書くのにえらい時間がかかってしまうのだよおれのばか)

当時24歳の水谷豊は、TVドラマ『傷だらけの天使(1974)』のイメージを
さらに鬱屈させたような雰囲気で
脆さと凶暴さを併せ持った顔つきがかっこいい。
そして、ケイ子に扮する17歳の原田美枝子がなんともかわいくて、エロい。
幼さが残るあどけない表情と豊満なおっぱいとのギャップが素晴らしいのです。
その堂々とした脱ぎっぷりは、
現在の日本人女優に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらい。

土砂降りの雨の中を、女物の傘を差した順が
車を取り返しにいくために実家へと歩くタイトルバックのあと、
順が思いがけず父(内田良平)を刺し殺してしまってからのシーンが
凄まじい緊張感
に溢れています。
買い物に出かけていた母(市原悦子)が帰宅して、
殺害現場を目撃してうろたえはするものの、
「警察なんかにいうもんか。これはうちの家族の問題なんだから。
 法律がなによ! 誰にも迷惑かけてないじゃないか!」

と、順と一緒に事件を隠蔽して死体を遺棄し、実家を売り払って金を作り、
順が時効を迎えるまでのあいだ、知らない街でふたりで暮らそうと
父の死体を横目に嬉々として将来を語るのです。
母は、あたかもこの時が来るのを待ち望んでいたかのようだし、
男との駆け落ちに胸躍らせる女の一面も垣間見えます。

モデルとなった実際の事件では、
殺害現場から母親の血液が発見されていないことが疑問として挙げられていて
そのことから、脚本の田村孟
シーツにくるまれての殺害を発想したそうですが、
シーツをかぶせられ、まわりが見えない状況で包丁を振り回す
順と母の格闘シーンは壮絶です。
順が自分を捨ててしまうと考えて、ふたりの逃避行を断念した母は
「痛くしないでね」といい、順に自分を殺させますが
包丁で胸を刺された途端、「痛い! 痛い!」と連呼する姿が
恐ろしくも悲しい。
最後に「もう働かなくていいんだあ……」という言葉を残して息絶える母。

すべてが解放されたかのような祭のシーンを経て、
順とケイ子の逃避行が始まります。
いまひとつ腹が据わらず、うじうじと苦悶する順とひきかえに、
幼いせいかつねに陽気で、達観した女の恐ろしさまで感じさせるケイ子。
順と幼なじみのケイ子の左耳が聞こえないのは
順の家に植えてあったいちじくを盗んで食べたのを、順の母にとがめられ
左耳を殴られたのが原因だとケイ子は説明するものの、
順の両親はイチジクの木なんてなかったといい、
ケイ子の母親の愛人を横取りしたからだといわれます。
それを順に問いただされると「なあんだ。知ってたんだあ」
あっけらかんとしているケイ子。女は怖い。

順が親に任されていたスナックに火をつけて自殺を試みるシーンでは
水谷豊は燃えさかる炎の中でギリギリまで実際に吊されていたとか。
撮影自体も無許可で、周囲に集まった消防車は本物だそうです。

原作は中上健次の小説『蛇淫』ですが、
その小説のさらにモデルとなった事件があることを知った長谷川監督は
半年にも及ぶ綿密な取材を行ない、当事者にも会ったとか。
犯人とされ逮捕された息子は、死刑判決を受け、
2014年現在、東京拘置所に収監されながらも
一貫して無罪を訴えているそうです。

実際の親殺しをモチーフにして、
子供の通過儀礼としての親殺しがテーマですが
学生運動や成田闘争を経ても、
国も世間もなにも変わらない、変えられないという絶望と無力感
作品全体を覆っています。
また、英語で歌う日本のバンド、ゴダイゴの素晴らしい音楽が
ここがどこかわからなくなるような異次元の映画世界を彩っていますが
燃えてしまう前のスナックのシーンで、カメラが360度回転したその流れのまま
回想シーンへといたるトリッキーな演出は
ゴダイゴの曲のアレンジを聞いていて思いついたそうです。

時代背景や、監督、スタッフ、キャストなどのすべてが
最高のタイミングで重なり合ったからこそできあがった
奇跡の結晶のような作品です。





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