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スパルタの海

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(1983年/日本 105分)
監督/西河克己 製作/天尾完次 原作/上之郷利昭 音楽/甲斐正人
出演/伊東四郎、平田昭彦、小山明子、牟田悌三、原ひさ子、山本みどり、辻野幸一、横田ひとみ

概要とあらすじ
家庭内暴力を起こした少年・俊平が、非行少年や不登校児の更生施設として知られる愛知県美浜市の戸塚ヨットスクールに送り込まれる。入校初日から校長の厳しい体罰を受けても反抗を止めない俊平だったが、嫌々ながらもヨットの訓練に参加するようになる。俊平はそこで、壮絶なしごき、突然の仲間の死、卒業していった仲間アッコへの恋など、さまざまな経験を積んでいく。1982年、生徒の相次ぐ死亡事故で校長ら関係者が逮捕される事態に発展した「戸塚ヨットスクール事件」の影響で公開が中止された青春映画。2011年劇場初公開。(映画.comより



子供には、権利も自由も尊厳もないっ!

いやはや、これはもう間違いなく怪作です。
『スパルタの海』は1983年に完成し、公開される予定でしたが
1982年に戸塚ヨットスクールで生徒が死亡した件は事故ではなく、
傷害致死であるとされ、関係者が逮捕されたために
公開直前にお蔵入りとなっていたところ、
28年の時を経て2011年に劇場公開された、
ま、有り体に言えば問題作です。

当時、社会問題となっていた戸塚ヨットスクールを題材にし、
しかも企画がスタートした段階で
すでに「死亡事故」が起きているのも係わらず
映画化に踏み切った判断自体が凄まじいのですが
この作品を問題作たらしめているのは
基本的に、戸塚ヨットスクールと校長の戸塚宏を
肯定するような表現になっている
ところ。
じゃあ、体罰教育を盲信する頭のおかしい人たちが
自己肯定を喧伝するプロパガンタ映画なのかと言われればそうでもなく、
絶え間なく繰り出される暴力や
生徒たちが置かれた過酷な生活環境もしっかりと描写されています。
それでいて、熱血教師によって不良が更正し、すがすがしい結末を迎える
まるで『スクール・ウォーズ』のような、はたまたスポ根もののような
淡い恋愛エピソードまで盛り込んだ青春映画となっているのです。

原作者の上之郷利昭は、
戸塚ヨットスクールの合宿所に泊り込んで取材したそうで
ロケ地も実際の場所とほど近く、描写は事実にそれなりに忠実そうですが
戸塚ヨットスクールに対して表面的にはあきらかに肯定的な態度が
作り手の本意かどうかは微妙なところ
です。
先にも述べたような暴力描写など、
戸塚ヨットスクールのカルト的な一面も隠すことなく表現しているし、
西河克己監督は、不登校と家庭内暴力の問題児だった息子を
交通事故で亡くすという経験もされているそうなので
体罰教育を単純に賛美するとは考えにくいのではないでしょうか。

もちろん、戸塚宏リスペクトで作られている可能性も捨てきれないのですが
この作品の微妙な立ち位置が、
そのまま観客の受け取り方に居心地の悪さを与えていると思います。
とかくクレームに対して及び腰の現在では
このような手法を用いて本質を訴えかけるような表現は
不可能になってしまったのではないでしょうか。
このような表現は、作り手はもとより、
観客の知性を前提にしないと実現しないわけで、
噛んで含ませるような「わかりやすい」表現に対して
観客はバカにしてんのかと起こるべきなのです。

生徒に対する教師の体罰が問題となり、
角界の「かわいがり」による死亡事件が起こったりすると
暴力と体罰の境界線を問う以前に、
腕力によって統制を保とうとする考え方そのものが非人道的であり、
決して許されるべきものではないという世論に到るのは至極真っ当ですが
そうなると今度は、親も教師も子供を叱ることすらできなくなり、
手出しができないことを知った子どもたちは増長し、
ひたすら自分勝手な自己主張を繰り返すように
なってしまったのではないでしょうか。

DVDの特典映像に収録された戸塚宏の舞台挨拶のなかの
「子供には、権利も自由も尊厳もない」という言葉に対して
まるっきり賛同するつもりはさすがにありませんし、
「東京都知事(当時)石原慎太郎推薦!!」というこの作品の惹句を見れば
なおさら警戒心が強くなるのですが
体罰に反対する保護者の態度に、子供に対する愛情よりも
リスクをできるだけ少なくしようという保身が窺えるのも事実です。
安易な体罰反対は、保護者責任の回避であり、
リスクを背負っても子供と対峙するだけの愛情が欠如しているとも感じます。
持論を言えば、自由とは常に自己責任を伴うもので
誰にでも自由を行使する権利はあっても
誰にでも自由を行使する資格があるわけではないと考えています。
そして、古くからいわれるように、
従順だろうがグレようが子供は大人の映し鏡だと思いますよ。

理屈を理解できないようなバカガキは
殴ってでもわからせるほかないと思うのは僕だけではないでしょう。
でも、できればそんなことはしたくないからこそ
この作品を観た観客の心は揺れるのだと思います。

脇を固める役者陣は亡くなってしまった方も多いけれど個性派揃いだし、
なにしろ戸塚宏に扮する伊東四郎が怪演でした。







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