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地獄(1960)

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(1960年/日本 100分)
監督/中川信夫 脚本/中川信夫、宮川一郎 撮影/森田守 美術/黒沢治安音 楽渡/辺宙明 録音/中井喜八郎 照明/石森浩
出演/天知茂、三ツ矢歌子、沼田曜一、中村虎彦、宮田文子、林寛、徳大寺君枝、山下明子、大友純

概要とあらすじ
中川信夫・宮川一郎の共同脚本を、「女死刑囚の脱獄」の中川信夫が監督したもので、死後の世界として想定されている地獄を、幻想的にえがいたスペクタクル映画。「黒い乳房」の森田守が撮影を担当した。仏教大学の学生清水は悪魔的な雰囲気をもった学友田村のため、悩まされていた。彼には、恩師矢島教授の娘である幸子という婚約者がいた。ある日、幸子の許を訪れ楽しい時を過ごしていたが、田村が来、不快な気持ちにさせられた。田村と自宅に帰る途中、酔漢を轢殺してしまった。清水は良心の呵責と、つきまとう田村の存在に苦悩した……(映画.comより抜粋



地獄って、わりと自由ね

世界中にあるいろんな宗教が
死後の世界として天国と地獄を設定しているようですが
こと地獄に関しては、今生における悪事を戒めるとともに
死に対する恐怖を反映しているように思います。
なにしろ死に関しては、
死んでみたらこうだったよと教えてくれる証人がいないもんだから
(証人はいるって言い張るひともいるけど)
生きている人間はとにかく想像をたくましくするほかないのです。
ま、天国にしろ地獄にしろ、
死後の世界があると考えたほうが
死に対する恐怖は幾分和らぐのかもしれません。

タイトルに『地獄』を冠する作品はいろいろとあるのですが
これは中川信夫監督の『地獄(1960)』です。
オープニングタイトルが
時代を感じさせるグラフィカルな演出なのはいいとしても
本編の内容とかけ離れたセクシーさが気にはなります。

当然と言えば当然ですが
前半は、この世でこんなことしてると地獄に堕ちるよというべき
後半へ向けての大いなるフリとなっています。
大学生の四郎(天知茂)は、教授の娘幸子(三ツ矢歌子)と婚約し、
どうやら将来も順風満帆と思われていた矢先に
悪友だかなんだか、とにかく四郎につきまとっている田村(沼田曜一)
いつも忽然と現れては嫌味なことをいい、
四郎を翻弄します。
赤がトレードマークの田村はあきらかに死に神的な存在
さらにいえばメフィストをモチーフにしているようですが
一応はこの世に生きる人間にもかかわらず、
なにからなにまでお見通しで
四郎も知らない幸子の妊娠まで知っているという万能ぶり。

田村が運転する車に四郎が同乗しているときに
ひき逃げ事件を起こしてしまい、
それを機に四郎は転落人生を歩むことになるのですが
ひき逃げを目撃した被害者の母親とその娘が
母親が覚えていた車のナンバーから
警察にも頼らずに四郎の身元から実家まで探り当ててしまったり、
そしてなぜか運転していたひき逃げの張本人である田村に対しては
一向に責める様子がなかったり

ストーリーとしての辻褄合わせを度外視しているとしか思えないほど
疑問だらけの展開が続きます。

「ハハキトク」という電報を受け取った四郎は実家に急ぎます。
その実家というのが、これまた「天上園」という名の養老院
死ぬのがわかりきっているようなネーミングなのです。
病に倒れた母親は死んでしまうのですが
なぜか田村や教授夫婦が続々集結。
母親が死んだ悲しみはどこへやら、
「天上園」の10周年ということでドンチャン騒ぎが始まり、
ぷかぷか浮いたまま流れてきた川魚を食べた養老院の入居者たちも含めて
登場人物の全員が前半で死んでしまいます。
いくら後半の地獄を描くためのフリだからって
別に全員が死ぬことないだろうとは思うものの、
そんなことより、ひき逃げされた被害者の情婦が
突然つまづいたかと思うと吊り橋から落下したり、
やっぱり吊り橋から落ちて死んだはずの田村が突然登場し、
拳銃で幸子そっくりのサチコ(三ツ矢歌子の二役)を殺したりと
理屈もへったくれもない展開で
とにかくみんな死にましたとさ。


そして、待ちに待った後半の「地獄」シーン
怒濤の残酷描写が続くのかと思いきや、
地獄に堕ちてもまだうじうじ苦悩している四郎。
ていうか、四郎は地獄でものすごく責められるわけですが
四郎が保身のためにひき逃げを通報しなかったのは
たしかに罪なのかもしれないけれど
それ以外は、不可抗力というか現場に居合わせたくらいのことなので
なんで四郎はこんなに責められないといけないのか納得がいかず、
地獄でもあいかわらずへらへらと四郎につきまとう田村の自由さに
いらいらするばかり。

随分大きなスタジオで撮影されたと思しきシーンも多く、
地獄に堕ちた亡者たちのモブシーンの迫力はそれなりにあったし、
おそらく当時としては強烈だったであろうゴアシーンもありましたが
いかんせん散発という印象で、
じつはサチコは四郎の妹だったとかいうメロドラマが急に出てきたり、
地獄の恐ろしさを描くというよりも
現世に対する死者の未練を描く表現のほうが多いように感じます。

上、下、斜めと、凝りに凝ったカメラアングルや
極端なズームアップなど、随所に面白味はありましたけどね。
ま、怪作というのは間違いありません。





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