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四十九日のレシピ

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(2013年/日本 129分)
監督/タナダユキ 原作/伊吹有喜 脚本/黒沢久子 撮影/近藤龍人 照明/藤井勇 録音/小川武 美術/林千奈 編集/宮島竜治 音楽/周防義和
出演/永作博美、石橋蓮司、岡田将生、二階堂ふみ、原田泰造、淡路恵子、内田慈、荻野友里、中野英樹、小篠恵奈、執行佐智子、赤座美代子、茅島成美

概要とあらすじ
NHKでドラマ化もされた伊吹有喜の人気小説を、「百万円と苦虫女」「ふがいない僕は空を見た」のタナダユキ監督が映画化。母が残したあるレシピによって、離れ離れになっていた家族が再び集い、それぞれが抱えた心の傷と向き合いながら再生していく姿を描く。妻の乙美を亡くして生きる気力を失っていた良平のもとに、夫の不倫で結婚生活が破たんし、離婚を決意した娘の百合子が戻ってくる。そして、そんな2人の前に、派手な服を着た不思議な少女イモが現れる。イモは、乙美から頼まれていた四十九日までの家事を引き受けにやってきたと言い、乙美が残したというレシピの存在を伝える。百合子役で永作博美が主演。父・良平役の石橋蓮司、イモ役の二階堂ふみらが共演。(映画.comより



ふがいないぞ、タナダユキ

あたかも、涙腺用アダルトビデオみたいなタイトルの
『四十九日のレシピ』
普段なら、このタイトルをチラ見しただけで
自分の人生には関係のない映画だと、完全スルーするところですが
監督がタナダユキだと聞けば、そうもいきません。
『百万円と苦虫女』はそれほどでもなかったけど、
『ふがいない僕は空を見た』でノックアウトされた僕にとって
タナダユキ監督は要注意な作家なのです。
(思えば『ふがいない僕は空を見た』も
 雰囲気しかないクソみたいなタイトルだった)

暗幕のなか、電話の声で始まるオープニングで
百合子(永作博美)の亭主・浩之(原田泰造)
浮気相手を妊娠させてしまい、その浮気相手の女が
相当ずうずうしい女であることがわかるのは
たしかに、その電話のセリフの内容によるものではあるけれど
百合子が不妊治療中であり、
介護が必要な義理の母親と同居していることなどなどの
基本的な説明を映像で知らしめるあたり、
さすがとも言える演出。
いいたかないが、これが日本製の映画にはなかなか見られないのです。
実家の百合子の父・良平(石橋蓮司)
まさに死んでしまったかのように抜け殻となって
部屋に横たわっているシーンの照明なども
観ていて本当にワクワクさせてくれます。
説明のために回想として折り込まれる時間軸をずらしたカットも
唐突かつ、さりげなく、映画を観る喜びに溢れています。
タナダユキ監督は、観客を一瞬騙してから
すぐに納得させる演出が本当にうまいなあと思うのです。

そして、われらが二階堂ふみちゃん、登場。
(われらって?)
これまでの二階堂ふみといえば、
『ヒミズ』『悪の教典』のような、強さを内に秘めた女の子や、
『地獄でなせ悪い』などの男前なイメージが強かったのですが
今回のイモ役は、物語を引っ張っていく狂言回しの役どころで
ロリファッションの超天然に明るい(表面上)女の子の仕草や
バカっぽい喋り方まで、見事に役が乗りうつったかのようで
なんだか空恐ろしいくらいの存在感でした。
実家に戻った百合子が、
亭主と住んでいた家に帰らなければならなくなったとき、
父・良平に「イモを連れていけ」と言われたあとの
「トーキョー……」と小声で嬉しそうに言ったのが
もう、たまりません。

イモ(=イモト)がガラスに書いた文字「IMOTO」
ガラスの反対側から読むと「OTOMI」となっていて
イモは死んだ乙美の生まれ変わりかもしれないというエピソードは
原作からだそうですが
映画上ではなんの意味もありませんでした。
このエピソード以降、
イモを中心とした物語になっていかないのであれば
このような言葉遊びには鼻白むだけでしょう。
そもそも、百合子の母・乙美の名前は
春日八郎『お富さん』に由来するのではないか、なんて
勘ぐってみたくなります。
もちろん、『お富さん』の歌詞は
与話情浮名横櫛という歌舞伎の演目をモチーフにしているそうなので
本作とはまったく関係がありませんが
「死んだはずだよ、お富さん〜」という有名な一節から
イメージを膨らませたといっても
過言ではないような気がしないでもないのですよ。
なにしろ、乙美は
死んだあとでも(むしろ死んでしまってから)
その存在の豊穣さを周囲にしらしめているのですから。
ま、邪推ですけどね。

父・良平の姉、珠子に扮する淡路恵子
この作品が遺作となってしまいましたが
自分だけが正しいと思い込んでいるクソババア役は見事で
不妊に悩んでいる百合子に対して
「早く子供を産んどけばよかったのよ」なんて平気でいうのですが
このようなことは日常でもよくあることで
「子供はまだなの?」なんて無遠慮な言葉が
不妊に悩む女性にプレッシャーを与えているのでしょう。

ほらみろやっぱり、タナダユキ監督作品に間違いなし!
なんて思っていたら
日系ブラジル人ハル(岡田将生)が登場してから
あれあれ〜と、おかしなことになっていきます。
「ワタ〜シワァ〜」と、いかにも外人風の発音で喋る岡田将生の
浮きっぷりが半端ない
のです。
地方の工場で働く出稼ぎの南米人は多いそうなので
こういうキャラが登場しても不自然ではないのですが
物語上、そのことにさほど重点を置いているようにも思えないので
いっそのこと、ボビー・オロゴンみたいな黒人か、
本当にほとんど日本語が話せない本物の南米人のほうが
よかったのではないでしょうか。
まったく言葉は通じないけど、いつもニコニコしている、とかさ。
よりによって、そんなわざとらしいカタコト日本語で喋る岡田将生が
やたらと、いわなくてもいいような説明ゼリフを垂れ流すのには
辟易いたしました。
なにやら岡田将生は、この役を演じるに当たって
ポルトガル語の指導を受けたそうですが
問題はそこじゃないから! 意味ないから!


やがて迎える四十九日の「大宴会」でも
珠子(淡路恵子)は、あいかわらず好き放題言い放ったあと帰ってしまい、
やっと帰ったよ、あのクソババアと思っていると、
フラダンスのチームを連れて戻って来て、
なんだか、ほっこりみんないい人な雰囲気になるのですが
あれほど傲慢な珠子が、突然心変わりするとは思えず、
弔う気持ちがあるなら最初からそうしてろよ、このクソババア!
と、余計に腹立たしくなるばかりです。
だってさ、「あんたんちに送る年賀状には
子供の写真を載せないように気を遣ってるんだからね!」
って、さ
不妊で悩んでいるうえに、気を遣わせてすみません、なんて
謝れとでもいうのかよ。ほんと、クソでしょ。
でも、これが現実。

父・良平の妻・乙美に対する後悔が
穏やかにしか描かれなかったのは残念で
四十九日での珠子の罵詈雑言に対しては
自分のためにも、百合子を守るためにも
感情を露わにして反論してほしかったところ。
あの四十九日の「大宴会」がただハッピーに終わらず、
もうひとつ胸を締めるつけられるような山場があれば
岡田将生のカタコトなど、気にならなかったかもしれません。

文字通り「大宴会」が終わったあと、
百合子の亭主・浩之(原田泰造)がまたや登場。
土下座しつつも、父・良平にはほとんど目を向けず
「女とは別れたから、これからどうするか一緒に考えてくれ!」
というクズっぷり。
良平が浩之に魚を届けにいったときも、
気づきながらも追うことはせず、
電話で百合子に「謝っといてくれ」という始末。
浩之は、おぞましいほど優柔不断で覚悟のない男ですが
結局、百合子は浩之のもとに戻ってしまいます。
せっかく新たな人生の価値を見出したかにみえた百合子だったのに
腐れ縁から離れることができないようで
この結末は非常に不可解、かつ不快です。

母の死によって結ばれる家族の絆、みたいな仮面をかぶりながら
親子、夫婦、出産、子育てなどを内包した
ビターな作品にすることもできたはずなのに
結局、上から甘い甘いシロップをぶっかけられて
せっかくのレシピが台無しになったような作品でした。





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