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奪命金

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(原題:Life Without Principle 2011年/香港 106分)
監督/ジョニー・トー
出演/ラウ・チンワン、リッチー・レン、デニス・ホー、ロー・ホイパン

概要とあらすじ
香港の鬼才ジョニー・トー監督が、世界経済危機を背景に、金への欲望から起こった事件に巻き込まれる人々の姿を描く金融サスペンス。妻からしつこく新しいマンションの購入を迫られていたチョン警部補は、仕事を理由にいつも話をそらしていたが、しびれを切らせた妻は夫に内緒で仮契約をしてしまう。銀行の金融商品営業担当のテレサは、成績をあげるため、客にリスクの高い投資信託商品を売りつける。気のいいヤクザのパンサーは、逮捕された兄貴分の保釈金を作るため、同郷の投資会社の社長ドラゴンに相談を持ちかける。そんな中、欧州債務危機で金融資産が下落する事態が発生し……。(映画.comより)



了承しました!

2012年12月にオープンしたばかりの新宿シネマカリテは、
さすがにキレイな館内で、兄貴分の新宿武蔵野館よりも
場内の傾斜が強く、視界を遮る前席の客の後頭部に向けて
呪いの念を送る必要もなく、スタッフの接客も十分。
スクリーンが大きく右に寄っていることを頭に入れておけば
とても心地いい映画館でした。
今後のラインナップもひと癖あって期待できそうです。

「ミルキーウェイ・プロダクション(銀河映像)」という製作会社を
自ら設立し、製作でも活躍するジョニー・トー監督
『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』『エグザイル/絆』などなど、
「香港ノワール」と呼ばれる男臭いクライム・サスペンスが特徴ですが
『奪命金』は、そんなハードボイルドな展開を期待していると
いささか拍子抜けします。ていうか、僕は拍子抜けしました。
だってさ〜、ポスターがあんなにメラメラ燃えてるんだもんな〜
ありゃ、ミスリードでしょう。
必ずや血みどろのバイオレンス・シーンが出てくると待ち受けていると
銃のひとつも出てきません。
だからって、つまんないわけじゃないんですよ。
ちゃんと面白かったんですが、
こっぴどく怒られると覚悟して身構えて謝りに行くと
相手がそんなに怒ってなかった、みたいな。
あ、そっち? みたいな。

炎がメラメラ燃え上がるようなポスターとは裏腹に
どちらかというと静かに闇が忍び寄るような内容で、
北野武作品を思い起こす人も少なくないのではないでしょうか。

とにかく、金、金、金にまつわるお話。
妻がマンションを購入したがっているチョン警部補(リッチー・レン)、
銀行の金融商品営業担当のテレサ(デニス・ホー)、
下っ端ヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)の3組が
直接の交流を持たずに(ちょっとだけあるけど)
それぞれが別の事情で行動するうちに
知らず知らずに一本の線で結ばれていくという群像劇。
時系列を錯綜させながら展開していくものの、
さほどシャッフルされているわけではないので
混乱することはありません。

銀行員のテレサは業績不振を挽回するため、
リスクの高い投資商品、その名も「一攫千金」
年を食った山田花子みたいなおばちゃんに売りつけます。
このふたりのやり取りがコミカルであればあるほど
欲に負けた人間が墜ちていくさまを見せつけられて
笑いながらも背筋がぞっと寒くなるのです。
商品の説明に対して、年を食った山田花子がひととおり
「了承しました」と言えるまで会話の録音をやり直すくだりは
責任を回避するために言質をとっているだけの詐欺同然。
銀行を揶揄する表現はいたるところに出てきますが
二言目には「手数料」と言いたがる銀行に対しては
誰しも似たような憤りがあるんじゃないでしょうかね。
もちろん、年を食った山田花子が
人の良さそうな顔をしていても金に目がくらんでいるからこそ、
甘い話に引っかかるんですけどね。

そうそう、忘れないうちにお伝えしておきますが
テレサに扮するデニス・ホーは、僕の好みのタイプですからね。
ちゃんとお伝えしましたからね!!
(「了承しました」)

それはさておき。
なんといっても、この作品の最大の見どころは
下っ端ヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)の顔芸です。
おまえ、ふざけてるだろ? って言いたくなるほどの
ハイスピードまばたき!!
チンピラ特有の柄シャツに斜めがけの集金ポーチという出で立ちが
絶対に出世しないだろうなと思わせる小者感満載で
ラウ・チンワン劇場とも言うべき存在感です。
このラウ・チンワンを観ているだけでも存分に楽しめるのですが
その突出したキャラクターが、かえってこの作品の
シリアスムードを削いでしまっているのではないかと思いました。

チョン警部補(リッチー・レン)は
妻がマンションの契約にまつわるお金で右往左往するものの
大筋ではストーリーに関係ありません。
警察がパンサーたちを取り締まったりするのは重要な要素ですが
チョン警部補が個人的に
金銭問題に関わっているわけではないので、蚊帳の外の印象です。
マンション購入のために、妻が銀行で融資を受けるのではなく、
チョン警部補が保釈金に手をつけてしまうとかのほうが
よかったのではないか、と思ってしまいます。
というよりチョン警部補の、病床に伏す父親に幼い隠し子がいて
(つまりチョン警部補の妹)
その子を引き取る引き取らないのエピソードは
これといってチョン夫妻の人格や背景を物語ることもなく
どっかへふわ〜といってしまいましたが、ありゃ必要かしら?

脚本のクレジットが見あたらないのですが
ジョニー・トー監督自身の脚本ということにしておくと
駐車場でのシーンなど巧みだと思わせる部分はあったものの
3組の登場人物たちが織り成す群像劇としては
幾分緻密さに欠けていると言わざるを得ません。
ギリシャ債務危機による世界金融危機を背景にしているとはいえ、
クライマックスが株価の数字の上がり下がりでは
いまひとつ盛り上がりません。
とくに僕のような貧乏人の金融弱者にとっては
株価に一喜一憂する心境がさっぱりわからないので
ますます感情移入できませんでした。

面白いのは面白かったけど、
「数字に振り回された結果がこんなことに!」というような
もうひと盛り上がりほしかったな〜といったところでしょうか。
いっそのこと、ラウ・チンワンが一人でじたばたするところを
観てみたかったです。

最後に、500万HK(香港ドル)を手にして姿を消すテレサ。
現在(2013年2月)のレートを見てみると
1HK=約12円ということなので
500万HK=約6000万円ですか。
……う〜ん、やっぱ持って逃げるかぁ。逃げるかな!? ね?
いやっ、う〜ん……結構、ビミョ〜?





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コメント

はじめまして

同じようなイラストと映画の感想のブログをやらせてもらっている、
スパイクロッドと申します。

この映画に関するのほうずさんの感想、
激しく同意いたします!
いつものジョニー・トー節を期待すると肩透かしを喰らっちゃうんですけど、
これはこれでおもしろかったですよね。

そしてなんといってもラウ・チンワン!!
この映画は間違いなくチンワンの映画でしょう!
もうキャワいすぎです!!!
イラストもそっくりで爆笑です!

これからもちょくちょくお邪魔させてもらいますので、
よろしくお願いしますね♪

2013/10/20 (日) 23:55:29 | URL | スパイクロッド #- [ 編集 ]

Re: はじめまして

>スパイクロッドさん
コメントありがとうございます。
チンワン、最高ですよね!
こちらこそ、よろしくお願いいたします!

2013/10/21 (月) 03:14:33 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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