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アブダクティ

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(2013年/日本 95分)
監督/山口雄大  脚本/牧野圭祐 撮影/岡雅一 照明/緑川雅範 美術/福田宣 録音/西條博介 音楽/森野宣彦
出演/温水洋一、麻亜里、仁科貴、播田美保

概要とあらすじ
個性派俳優の温水洋一が主演、「地獄甲子園」「デッドボール」の山口雄大監督がメガホンとり、密室に閉じ込められた男がたどる顛末を描くシチュエーションサスペンス。家族にも見捨てられ、借金を抱えた中年のダメ男・千葉厚志は、目を覚ますとコンテナの中に閉じ込められていた。コンテナは船に積まれてどこかへ運ばれていき、やがて千葉と同じように拉致され、コンテナに閉じ込められている被害者が何百人もいることがわかる。千葉は隣り合うコンテナの壁越しに他の被害者と会話し、誰が何のために千葉たちを拉致したのか、情報を集めるが……。 (映画.comより



なんでこうなるの? ねえ?

「ヌックン」こと温水洋一主演のシチュエーション・スリラー、
『アブダクティ』という映画の情報を耳にしたときには
これは面白いに違いないと期待に胸躍らせていたのですが
なんやかんやで劇場公開を逃してしまい、DVDでの鑑賞となりました。
5.1chサラウンドという環境を考えれば、映画館で観てこその作品なのですが
仕方ない。オレにもいろいろあるのだよ。

数少ない出演者による卓越した演技と脚本の巧妙さ、
舞台が限られた空間だからこそ、
観る側の想像力が試される密室劇というものがもともと大好きで
たとえるとすれば枚挙にいとまがありませんが
『CUBE(1997)』ももちろん好きな作品だし、
空間の狭さでは『[リミット](2010)』でしょうか。
この作品の場合、温水洋一が閉じ込められるのがコンテナということで
閉じ込められた密室が移動するという点において、それはそれは魅力的なのです。
ましてや、テレビではからかわれてばかりのベテラン俳優・温水洋一が
ここぞとばかりに役者魂を炸裂させ、テレビのイメージを逆手にとって、
シリアスなひとりガンバルマンをやってのけ、
恐怖と笑いの絶妙な綱渡りを見せてくれるはずだと思っておりました。

思っておりました、と言っている時点で
期待はずれだったと言っているようなものですが
映像や照明、SEだけで状況を伝える演出はよかったものの、
とにかく脚本がどうしようもなく出来が悪い。
シチュエーション・スリラーで脚本の出来が悪いというのは致命的です。

突然、理由もなくコンテナに閉じ込められた千葉(温水洋一)
困惑するところから始まるのはいいのですが
結末から考えても、ビニール袋を頭にかぶせられている理由が
よくわからない。ま、ビニール袋もあっさり取れるのですが。
そして、携帯電話を発見、というか金融業者から電話がかかってくるのですが
この金融業者の関西弁にげんなり。借金取りはいつも関西弁という、ね。
「やかましいわい、だまらんかい」って……自分から電話をかけてきたのに。
ひたすら借金返済が遅れていることを謝る千葉は
一応、この時点ではこの金融業者に拉致されたと思い込んでいるとはいうものの、
手足を縛られて閉じ込められている状況なら
「なんでこんなことするんですか!? これじゃ返せる金も返せないでしょう?」
というのが自然でしょう。
それで初めて「こんなことってなんや?」となるわけで
もう、このへんのセリフのやりとりからグダグダなのです。
まだ、映画が始まって5分ほど。

110番したシーンの会話も不自然きわまりなく、
「さっきから同じような電話ばかりなんですよ。いたずら電話ですよね」
って、いくらなんでも警察が言わないでしょう。
同じような電話ばかりかかってくるなら、なおさら事件性を疑うはずだし、
もうとにかく千葉が孤立無援であることを表現するために
用意されたディティールが不自然すぎて都合よすぎるのです。

このように、映画が始まって間もない時点で
がっかり要素が盛りだくさんで、不満を漏らすよりも、
なんで僕のようなバカにでもわかるような欠点に気がつかないのか、
という疑問のほうが大きくなってきました。

その後、隣のコンテナに閉じ込められている人間が次々に(声で)登場し、
謎解きおよびほっこりストーリーへと展開していくのですが
なるほど、そういうことだったのか! と観客が感情移入して
物語に身を任せられるようなことは一度もありません。
すべて観客が悩む前に全部セリフで勝手に展開していくのです。
身体に入れられた番号が
10年前に事故のあった飛行機の座席番号だという重要なヒントにしても、
そこに至るまでにおよそ100人いるという拉致された人間たちに
なにか共通点があるんじゃないかという推理の過程がまったくないので
「それ、10年前に乗った飛行機ですよ!」っていわれても
ふーん、そうなんですかとしかいいようがありません。
これはもう、観客に対して謎を提供したり共有することなく、
設定を小出しに説明しているだけです。

コンテナのなかに正体不明の石がある時点で
いや〜な予感がしていたのですが
(突如、隣のコンテナに石に詳しい学者が登場し、
 くどくどと設定を説明するシーンの酷さったら)
やっぱり、石にまつわる超常現象を巡る展開に。
嘘をついたり、いいわけをするときは話がどんどん大きくなるものですが
なぜわざわざメタな状況を設定してまで、
なりゆきの根拠を説明しようとするのかさっぱり理解できません。

根拠なんていらないのです。
なぜ閉じ込められたかなんていう説明は必要ないのです。
理不尽に閉じ込められた状況から脱出しようともがく中年男性を描くだけで
社会的な閉塞感を表現することだってできるし、
その理由なんて観客がそれぞれ自分に当てはめて考えればいいはずです。
それが普遍ということであって、だからこそそのような作品は
多くの人の心を打つのではないでしょうか。

ラストは「新しい種の起源が……」とか
本当にどうでもいい、むしろ卑怯だとも言える終わり方をします。
DVDにはもうひとつのラストシーンが収録されていて
映画祭などでは、その「もうひとつ」のほうが採用されていたようですが
「もうひとつ」のほうが終わり方としてはまだましです。
コメンタリーでは「まだ別のラストシーンのアイデアもあるんですよ」
なんて、うれしそうに監督が語っておられましたが
ラストシーンのバリエーションなんて考えなくていいんだよ。
ラストシーンに至るまでが、ず〜〜〜〜っと問題だらけなんだから。

温水洋一の熱演は認めるけれど、
本当に期待してただけに、もうほんと、がっかり。





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千葉厚志(温水洋一)は家族に捨てられ、借金を抱えた哀れな中年男。ある日、目が覚めると、そこはコンテナの中だった。コンテナごとトラックから船へと移されたものの、どこへ向かっているかもわからない。やがて、同様の状況に置かれた者たちとコンテナ越しに会話を始めた千葉は、元妻と娘も拉致されているかもしれないと気付き……。 (シネマトゥデイより転記) ~・~・~・~・~・~・~・~・~・...

2015/12/06 23:24 | ひま~ん字倶楽部~MOVE館~

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