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情無用のジャンゴ

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(原題:ORO HONDO,SE SEI VIVO SPARA,DJANGO KILL! IF YOU LIVE SHOOT! イタリア/1967年 116分)
監督/ジュリオ・クエスティ 脚本/フランコ・アルカッリ、ジュリオ・クエスティ 撮影/フランコ・デリ・コリ 音楽/イヴァン・ヴァンドール
出演/トーマス・ミリアン、ロベルト・カマルディエル、ピエロ・ルリ、レイモンド・ラヴロック、マリル・トロ、ミロ・ケサダ、レイ・ラブロック

概要とあらすじ
フランコ・アルカッリとドキュメンタリー映画出身のジュリオ・クエスティの共同脚本を、クエスティが監督したイタリア製西部劇。撮影はフランコ・デリ・コリ、音楽は「悲しみは星影と共に」のイヴァン・バンドールが担当した。出演は「ガンクレイジー」のトマス・ミリアン、「南から来た用心棒」のロベルト・カマルディエル、「殺しのビジネス」のマリル・トロ、ピエロ・ルッリなど。(MovieWalkerより



特盛マカロニ・サラダ

「マカロニ・ウェスタンのシュールレアリズム」と評される
『情無用のジャンゴ』
セルジオ・コルブッチの『ジャンゴ(=『続・荒野の用心棒』)とは
やっぱりなんの関係もありません。
エポックメイキングな作品であることは間違いなく、
シネフィルたちの間では評価が高いようで、
シム・ジャームッシュの『デッドマン』の元ネタにもなっています。
作品紹介の中には、主人公のことを
「ジャンゴ」と表記しているものもあるようですが
トーマス・ミリアンが演じる流れ者の主人公に役名はありません。

残酷な描写の数々によって、
本国イタリアでは上映中止が相次いだそうですが
日本ではフルバージョンで公開されたようです。
こういうところが日本はおおらかというか、無頓着というか
宗教観や倫理観による禁忌の意識が乏しいぶん、
その時代の空気や気分に流されやすいのが特徴ですな。
現在は、なんでもかんでも禁止する空気が蔓延していますが。

この作品も、多くのマカロニ・ウェスタンと同様に
アメリカの荒野に見立てたスペインで撮影された
リベンジムービーとなっております。
赤く染められた砂の大地から
男が命からがら手を伸ばすオープニングがかっちょいいのですが
男(トーマス・ミリアン)は二人のインディアンに助けられ、
うなされて見る夢のような細かい編集のフラッシュバックが
当時としては斬新だったのでしょう。
白人とインディアンの混血である男は
別の強盗団と協力して大量の金(きん)を強奪したものの、
強盗団は仕事が終わると「分け前はやらねえ」とすぐに寝返り、
トーマスたちに自分で墓穴を掘らせ、銃で撃って穴に落としてしまいます。
銃で撃たれた上に、穴に埋められたにもかかわらず
生き延びて地上に出てくるトーマスって……すごいよね!
(役名がないので俳優の名前で呼んでます)

憎たらしい強盗団のボスがこの作品のヒール役だと思いきや、
とある街にたどり着いた強盗団がお尋ね者だとわかると
街の男たちによって強盗団は処刑されます。
その銃撃戦の最中にあとから追いついたトーマスは
ここであったが百年目、強盗団のボスを仕留めるのですが
街を牛耳る黒服集団のボス、ソロ(ロベルト・カマルディエル)が登場し、
「こいつには聞きたいことがあるから殺すんじゃない」と
トーマスに蜂の巣にされた強盗団のボスを治療するよう部下に命じます。

さて、ここからが最初のとんでもないシーン。
トーマスが強盗団のボスを撃った銃弾は
トーマスを助けた二人組のインディアンの手によって作られた
金の銃弾だったのですが
メスで肉を切り裂くクローズアップに続いて
取り出した銃弾が金だとわかったソロの手下たちは
我先にと強盗団のボスの傷口に指をつっこみ、
金の銃弾を奪い取ろうとする
のです。
激しく叫びながら死んでしまうボス。
このシーンだけでなく、全体を通して言えることですが
ゴア表現そのもののリアリティーは現在の技術には及びません。
それでも、傷口に指をつっこんで金の銃弾を取ろうと群がる
手下たちのおぞましさが損なわれるものではないのです。

強盗団のボスを助けようとしたソロは
強盗団が持っている大量の金のありかを知りたかったのですが
酒場のオーナー、テンプラー(ミロ・ケサダ)
ハガーマン(ピエロ・ルリ)
ソロが現れる前に強盗団の金を奪っていたのです。
そしてテンプラーとハガーマンの二人も分け前を巡って内輪もめ。
金に目がくらんだバカばっかりなのです。

妖艶な女性がふたり登場しますが
この作品でヒロイン(?)ともいうべき存在は
テンプラーの息子である美少年のエヴァン(レイ・ラブロック)です。
愛情に飢え、父親の愛人の強欲さに嫌気がさしているエヴァンは
この作品中、唯一の無垢の象徴でもあります。

テンプラーが隠し持っている金と引き替えに
ソロたちによって人質に取られるエヴァン。
制服のような黒シャツで揃えたソロの仲間たちは
ファシズムの表現のように思えますが、あきらかにホモソーシャルな集団で
捕らえたエヴァンを舐めるように見つめる男たちの視線は
性的な意味を持ちます。
直接的な描写はありませんが
翌朝ソロたちが酔って眠りこける中、
ひとり眼を覚ましたエヴァンのシャツの前がはだけていることから
エヴァンが性的暴行を受けたことは容易に想像できます。
そして、エヴァンは自らの命を絶ってしまいます。

エヴァンが死んだことで、人質の意味がなくなったソロたちは
金をよこせとばかりに、テンプラー宅を襲撃。
(それなら、はなから人質なんて必要ないじゃん)
息子が誘拐されても死んでしまっても、
あくまで金は持っていないと言い張るテンプラーは
エヴァンの棺桶の中に金を隠すというゲスの極み。
そして、それをあとで掘り起こそうとする連中もゲスの極み。

そのころトーマスは、ハガーマンの家に泊まり込み、
ハガーマン公認(?)でハガーマンの奥さんといい仲になって
一緒にベッドで眠りこけている間に銃を奪われるという
ぞっとするほどマヌケな展開に。
トーマスを捜す悪党どもは、最初に登場した二人組のインディアンを見つけ、
なにを思ったか、ひとりの頭皮をナイフで剥ぐという
『マニアック』なことに。

頭皮を剥がれる最中にインディアンが叫び声も上げず、
全く無言なのはどうしたことかと思いましたが
それをみてニヤニヤするつるっぱげのあいつは一体何が嬉しいんだよ!
剥いだ髪を被る気かよ!

ソロたちに捕まって磔にされたトーマスが
イグアナとコウモリで責められる
というのは
どう解釈していいものか、なんとも言い難いのですが
「俺をなめるなよ! 絶対に口は割らないぞ!」と言っていたトーマスが
動物攻撃に負けて「墓だ! 墓だ!」と金のありかを叫んでいるのには
ずっこけます。優柔不断なトーマス。

墓に行ったソロの仲間たちは
罰当たりにも、手当たり次第に墓を掘り起こして金を探すものの
すでにハガーマンがすべての金を奪ったあとなので何も見つからず。
怒った黒シャツたちはトーマスの元へ戻ってくるのですが
頭皮を剥がされてないほうのインディアンに助けられたトーマスは
馬の身体にダイナマイトを括り付け、黒シャツ集団に向かって走らせるのです。
え? 馬も死ぬよ? と思った直後にダイナマイトが爆発。
当然のごとく、馬も黒シャツたちも木っ端微塵なのです。
そして、累々と重なる黒シャツたちの死体に混ざって
バラバラになった馬の首や手足、
そして臓物までが散乱している
ようすが映し出され、
突然のリアリティに困惑します。

街に戻ると、ハガーマンの奥さんが家に火をつけて
炎に包まれるハガーマン邸。
慌てて戸棚に隠した金を取り出そうとしたハガーマンは
熱で溶けた金を頭から浴び、
まるでいにしえの恐怖映画のような阿鼻叫喚
で最後を迎えるのです。

主人公である流れ者=トーマスは
なんだかあっちこっちへふらふらしているだけのようにも思えましたが
マカロニ・ウェスタンというフォーマットの中に
金満主義にはじまって、猟奇殺人、ホモセクシャル、ゴア表現にSMと
あらゆるものを入れ込んだ作品です。





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