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アデル、ブルーは熱い色

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(原題:La vie d'Adele 2013年/フランス 179分)
監督/アブデラティフ・ケシシュ 原作/ジュリー・マロ 脚本/アブデラティフ・ケシシュ、ガーリア・ラクロワ 撮影/ソフィアン・エル・ファニ 編集/ガーリア・ラクロワ、アルベルティーヌ・ラステラ、カミーユ・トゥブキ、ジャン=マリー・ランジェレ
出演/アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥー、サリム・ケシュシュ、モナ・バルラベン、アルマ・ホドロフスキー、バンジャマン・シクスー、オーレリアン・ルコワン、カトリーヌ・サレ

概要とあらすじ
2013年・第66回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。フランスの人気コミックを原作に、「身をかわして」「クスクス粒の秘密」などで注目を集めたフランスの新たな才能アブデラティフ・ケシシュ監督が、青い髪の美大生エマと出会い、運命的な恋に落ちた女性アデルの情熱的な人生を、大胆な性愛描写とともに描いた。文学を愛する高校生アデルは、青い髪をした美大生エマと運命的な出会いを果たし、2人は激しく愛し合うようになる。しかし、時の流れとともに2人の気持ちは次第にすれ違っていき……。カンヌ映画祭では、審査員長を務めたスティーブン・スピルバーグの計らいによって、ケシシュ監督とともに、エマ役のレア・セドゥーとアデル役のアデル・エグザルコプロスに対してもパルムドールが授与され、カンヌ史上初めて俳優がパルムドールを手にした。(映画.comより



人生はずっと続く!

アカデミー会員の投票によって決まるアカデミー賞ほど
内輪感がないぶん、
カンヌ映画祭は、そのときの審査員長の好みによって
結果が大きく違ってくるんだそうですな。
ま、数ある映画の中からひとつだけ一番を決めようとするんだから
なんかしらの齟齬がでてきても致し方ないこと。
そんな齟齬込みのお祭りとして楽しむのが
映画祭の嗜み方なのかもしれません。

なんていうと、スピルバーグ審査員長によって
監督のみならず主演のふたりにもパルムドールが授与されたことで話題の
『アデル、ブルーは熱い色』
揶揄しているように聞こえるかも知れませんが
そりゃあ賞のひとつやふたつ、多めにあげたくなるのも納得の作品でした。

ストーリーはいたってシンプル。
運命かと思えるような相手と出会い、恋に落ちて
やがて破局するまでのお話です。
これをストーリーと言ってしまうのも躊躇されるほどシンプルで
劇的な何かが起きるわけではありません。
それでもこの作品に惹きつけられるのは
誰もが経験しているのに誰も正解を知らない恋愛というものを
むき出しにして描いているからです。
あぁ、なんかいいこと言っちゃった。おれ。
おれ、今、なんかいいこと言っちゃったよ。

主人公のアデルという役名は
アデルに扮するアデル・エグザルコプロスからの名前をそのまま使ったそうで
本人はさぞかし辛かったでしょうが
そういうことも含めて、ドキュメンタリー・タッチとは違った
非常に差し迫った表現で貫かれています。
その最たるものが、至近距離の映像の連続でしょう。
たまに差し込まれる引きの構図は
アデルが自宅から出てきたり、学校の建物に入っていったり
場面を説明のために短く使われるのみで
ほとんどが登場人物たちの肩から上の映像ばかりです。
最初は、なんだか息苦しいように感じたものの
だんだんと、自分もその場にいて
目の前でアデルたちの話を聞いているような気分になります。
とくに、青い髪のエマ(レア・セドゥー)が登場してからは
カメラはさらに一歩前へと進み、
アデルやエマの頬や唇をスクリーンいっぱいに捉えます。
まだお互いの気持ちを探り合っているアデルとエマが見つめ合い、
キスしてしまいそうになりつつ、心理戦を繰り広げているシーン

もう、たまらんの一言。
お前らがやらないんならオレにチューさせろ! と叫びそうになりました。
吸い込まれそうになるほど官能的な肌の魅力は筆舌に尽くしがたく
「映画的」という表現は好きではありませんが、
「映画ならでは」の表現といえるのかも知れません。

また、この作品にはシーンを盛り上げるような劇判がありません。
パーティーやクラブで踊るときのBGMがそのかわりを担っているのも
巧みだと感じました。

そしてなんと言っても、強烈なのは
アデルとエマのセックス・シーンでしょう。
全裸のふたりが、まさに組んずほぐれつ絡み合うベッドシーンは
なんと7分以上!

ついに結ばれたふたりはベッドで一緒に朝を迎えましたとさ……
なんていうご想像にお任せします的な表現ではなく、
徹底的に、そして執拗にセックスを映し出します。
至近距離の映像と同様に、二人のあえぎ声だけではなく、
肌がこすれ合う音まで聞こえる臨場感
お互いの股間に顔を埋めて交互にクンニしあい、
スパンキングしながらやはり交互に相手の陰部をまさぐる映像は
ポルノすれすれにもかかわらず、これが全然ポルノではないのです。
「ちっともいやらしくないの」などとアホみたいなことは言いません。
しっかりいやらしいです。
それでもポルノを観ているような感覚にならないのは
制御不能なほど互いを求め合う情熱が
ふたりからほとばしっている
ように感じるからではないでしょうか。
このシーンには「プラトニックなラブなんぞクソ喰らえ」という
強い意志まで感じました。
愛情と性欲は区別されたりもしますが
好きな相手を触りたいし、キスしたいし、抱きしめたいと思うのは
当然のことでしょう。
……なんていいつつ、あれだけ激しいセックス・シーンが
ポルノにならないのは、やっぱり女性同士だからかな……
なんて思ってみたり。

とはいえ、レズビアンの恋愛を描いてはいるものの
トランスジェンダーやマイノリティーの存在を訴えかけるような
内容にはなっていないと感じました。
エマは自他共に認めるレズビアンですが
アデルに関しては、
愛してしまった相手がたまたま女性だったというふうにみえるし、
語られる恋愛もレズビアンだから成立する物語ではなく
誰でも自分の身に置き換えてみることができると思われるので
レズビアンという設定にした理由のひとつには
女性同士のほうが画的に美しいというのがあるような気がします。

原作はバンドデシネだそうで
エマの青い髪や、スギちゃんみたいな袖無しジージャンは
たしかに漫画的記号のように思えて
一歩間違えばダサくなるところですが
邦題にあるブルーは、当然エマの青い髪のことであり、
この作品においてブルーは恋の色なのです。
洋服やバスの手すりから小物に到るまで
必ずなにかブルーのものが写り込んでいます。

ところが、エマの個展パーティーのあと
なんの説明もなく、エマは髪を青く染めるのをやめています。
この時点で、エマの心からは
恋の青い炎が消えてしまっているということなのでしょう。
アデルに求められて、明らかに男役のエマが
生理を理由にセックスを拒むのをみて
レズも断り方は同じなんだ! と、ヘンな関心をしてしまいました。

ふたりが破局に向かうのは
表面的には、嫉妬や些細な独占欲の行き違いによるものですが
根本的には、ふたりの住む世界が違いすぎたこと
あるのではないでしょうか。
それを象徴するのが、生牡蠣とパスタです。
互いの家に招待して家族に会わせるふたりですが
エマの家では新鮮な生牡蠣と選りすぐりの白ワイン。
アデルの家ではいつものようにミートソース・スパゲッティ。
同じように父親が料理して、同じようにもてなそうとしているのに
感覚の違いは歴然としています。
また、エマの家でアデルは将来の夢を聞かれますが
アデルの家でエマが聞かれるのは
絵描きで食べていけるのかという生活のこと。
人生における優先順位がまったく違うのです。
文学が好きだけど哲学が苦手なアデルと
哲学が好きなエマというのも同じ対比でしょう。
エマは、アデルの持つ自分との発想の違いを面白いと感じて
アデルに惹かれていったはずでしたが
芸術家仲間が集まったパーティーで
アデルが作ったパスタを「ミミズの乱交パーティ」と馬鹿にされる姿を見て
急にアデルをつまらなく感じてしまったのではないでしょうか。

主役を演じたアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥーの
すさまじい演技の魅力とか、あとホドロフスキーの娘とか、
言いたいことは山ほどあるけれど、キリがないのでやめておきます。

ラストでブルーのワンピースを着ていつもよりおめかしするアデルは
復縁の淡い期待を抱いていたのかもしれません。
エマも、もうちょっと歳をとれば
普通に生活するってことがどれだけ素晴らしいか
わかるときがくると思うんですけどねえ。
この作品の原題「La Vie d'Adele, chapitres 1 & 2」
「アデルの生涯 第1章、第2章」とのこと。

アデル、君の生涯はまだ第2章が終わったばかりだ。
人生はずっと続く!





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