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ココシリ

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(原題:Kekexili: Mountain Patrol 2004年/中国 88分)
監督・脚本/ルー・チューアン 撮影/カオ・ユー 美術/ル・トン、ハン・チュンリン 
音楽/ラオ・ツァイ 編集/テン・ヤン
出演/デュオ・ブジエ、チャン・レイ、キィ・リャン、チャオ・シュエジェン、マー・ツァンリン

概要とあらすじ
海抜4700メートルの無人地帯ココシリで、チベットカモシカの密猟を防ぐ民間のマウンテン・パトロールの姿を描くスリリングなドラマ。監督は「ミッシング・ガン」のルー・チューアン。「Red Valley」で第17回チャイナ・ゴールデン・チキン・アワード(中国で最も有名な映画賞)で助演男優賞を受賞したデュオ・ブジェ、舞台で活躍するチャン・レイとキィ・リャンほか。第17回東京国際映画祭審査員特別賞を受賞。(映画.comより



まさに不意打ち。容赦ない大自然。

若い男が泥と埃で汚れきった車でうたた寝していると
数人の男たちが銃を構えて取り囲んでいた。
夜になると、男たちは逃げるカモシカを車で追い、銃で仕留め、
即座にカモシカの皮を剥ぐ。
男たちに捕らえられ、縄で縛られていた若い男が
「警備隊か?」と聞かれて「そうだ」と答えると
「縄をほどいてやれ」といわれた別の男が
ナイフで縄を切ろうとした瞬間、至近距離からの銃殺。
動かなくなって横たわった若い男をそのままにして
男たちは夜の闇の中へと消えていく……

というオープニングを観ただけで度肝を抜かれ、
すっかりハートを捕まれてしまった『ココシリ』
これからなにが始まるんだろうと考えている矢先の銃殺で
完全に不意を突かれてしまいました。

「ココシリ」とは、
チベット語で「青い山々」、モンゴル語で「美しい娘」
を意味する
海抜4700メートルの無人地帯というか砂漠のような場所。
そこでレイヨウというチベットカモシカ
毛皮目的の密猟者たちによって乱獲され、数が激減。
それに対して、中国政府や自治体がまったく対処しなかったために
現地住民たち有志が自警団をつくって
密猟者たちを取り締まり、レイヨウを守ろうとしていたのです。
オープニングで射殺された若い男はこの自警団のメンバーで
密猟者たちとの戦いは命がけなのです。

そこへ自警団の活動を取材するために
北京からガイ記者(チャン・レイ)がやってきて
パトロールに同行することになり
観客と同様に観察者としての役割を担うことになります。

リータイ隊長(デュオ・ブジエ)をリーダーとした自警団が
車に食糧を積み込み、パトロールへと出発するのを見送る
リータイ隊長の美しい娘ロンシエ(チャオ・シュエジェン)
涙を流しているのをみると
このパトロールが日常的な夜回りのようなものではなく、
最後の別れになるかもしれない過酷なものであることが
わかります。

とにかくバックを覆う大自然が圧巻です。
地平線はあくまで真っ直ぐで、
道なき道が続く広大な大地と切り立った山々。
目眩がするような果てしない空の広さが人間の存在を矮小化させます。
銃を片手に、ジープで砂漠を走り抜ける自警団の姿は
まるでならず者を追跡する西部劇の保安官ようです。

砂埃と共に吹き荒れる強風でカラカラに乾燥してそうな空気と
延々と続く薄茶色の地面をみていると
ものすごく暑いんじゃないかと思うのですが
ここは富士山より遥かに標高が高い海抜4700メートル。
寒いのです。しかも空気が薄い。
密猟者たちとの戦いも命がけですが
この場所にいることそのものが命がけなのです。
自警団のメンバーも密猟者を走って追いかけるうちに
急性高山病となり、肺気腫で病院に運ばれることに。
そもそも、この作品の撮影自体が命がけで
スタッフとキャストは高山病と闘いながら
180日にも及ぶ現地ロケを敢行したそうですから
木村大作が聞いたら「俺が行く!」って言い出しそうです。

肺気腫になった仲間を病院まで送り届けたリウ(キィ・リャン)
飲み屋のホステスといい仲で(こんなところにも飲み屋はある!)
ちょっと軽そうなキャラクターが彩りを与えていましたが
ガソリンと食糧を調達したリウが
パトロールに戻ろうとする途中で
流砂に飲み込まれてしまうシーンがなんとも切ない。
痛い死に方も嫌だけど、この死に方も相当嫌だわ。

中国政府からも自治体からも
まったく支援を受けられない自警団たちは
武器から食糧まですべて自腹でまかなっているのですが
やがて、苦しい活動費用と生活のために
密猟者から没収したレイヨウの毛皮を売っていたことが判明します。
もちろん、悪徳保安官のように搾取しているわけではないのですが
レイヨウの毛皮を売ることは違法行為。
リータイ隊長は、レイヨウとココシリを守るという大義のために
苦渋の選択を強いられているのです。

食糧が途絶え、ガソリンもなくなりするうちに
自警団のメンバーがひとりまたひとりと脱落していき、
最後にはとうとうリータイ隊長とガイ記者の
ふたりになってしまいます。
密猟団のボスをあと少しのところまで追い詰めているとはいえ
自警団がぼろぼろになっても追跡をやめようとしないリータイ隊長には
生還する気はさらさらない
ように見えます。
すでにリータイ隊長の目的は
レイヨウとココシリを守ることではなく、
追跡そのものになっているようです。

ついに、密猟団のボスと対峙するリータイ隊長。
といっても、密猟団を追い詰めたというよりは
むしろリータイ隊長が追い詰められた状況。
わずかなやり取りのあと、密猟団の手下がリータイ隊長に向けて突然発砲。
銃撃戦も殴り合いもなく
オープニング同様に不意を突かれるアンチクライマックス。
しかもリータイ隊長は即死ではなく、まだ息があるところが残酷です。
密猟団のボスは発砲した手下を叱るものの、叱った理由は
「ばかやろう! 俺に当たったらどうするんだよ!」
地面に倒れてうめくリータイ隊長にいとも簡単にとどめを刺すのです。
まったく話が通じない密猟団の冷酷さを表すこの描写と
決め台詞や口上をまったく語らせない演出が素晴らしい。

この作品は実話を元に作られているそうで
ガイ記者(に相当する実在の記者)が書いた記事が話題を呼び、
やっとこさ記事の一年後に自然保護区として指定され、
政府が警備に乗り出してからはレイヨウの数は回復しているようです。

壮大な自然は大きな魅力のひとつですが
だからといって自然頼みの眠たい感動大作ではなく
ジャンル映画の匂いも感じる素晴らしい作品です。





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