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ムーンライズ・キングダム

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(原題:Moonrise Kingdom 2012年/アメリカ 94分)
監督・製作/ウェス・アンダーソン 脚本/ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
出演/ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・シュワルツマン、ボブ・バラバン

概要とあらすじ
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督が、1960年代の米東海岸ニューイングランド島を舞台に、12歳の少年と少女が駆け落ちしたことから始まる騒動を、独特のユーモアとカラフルな色彩で描いたドラマ。周囲の環境になじめない12歳の少年サムと少女スージーは、ある日、駆け落ちすることを決意。島をひとりで守っているシャープ警部や、ボーイスカウトのウォード隊長、スージーの両親ら、周囲の大人たちは2人を追いかけ、小さな島に起こった波紋は瞬く間に島中に広がっていく。ウェス・アンダーソン作品常連のビル・マーレイ、ジェイソン・シュワルツマンをはじめ、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントンら豪華キャストが出演。(映画.comより)



諸君! ロマンスが肝要だよ!

正直に告白すると、僕にとって
この作品が初めてのウェス・アンダーソン監督作品なのです。
ですから、彼のキャリアの中でこの作品が
どのように位置づけされるのかということはわかりません。
もろもろの情報に従えば、「通好み」といわれる、
個人的にはあまり感心しない評価のされ方をする作品を作ってきた
ウェス・アンダーソン監督が
コアな(訳知り顔の)映画ファンが住むキングダムから
自らの作品と共に「駆け落ち」し、
メインストリームへと飛び出すであろう
エポックメイキングになりうる作品だということです。
『ムーンライズ・キングダム』を見終わった今となっては
彼の過去の作品を見ないわけにはいかないと、
恥と悔いにまみれながら一杯やっている次第でございまする。

細かいカット割りや被写体を正面から捉える構図などが
三木聡や堤幸彦などに代表されるような
ある時期ある分野の日本映画で流行したものと
どちらが先か知らないけれど一種の類似性をみせてはいるのですが
ある時期ある分野の日本映画で流行した作品群の
「はい、ここが笑いどころですよ」という
押しつけがましい演出に辟易していた僕にとって
似たようなアプローチで演出されているのにも拘わらず
この作品を気分よく受け入れることができたというのは
そういった演出や編集がこの作品において必然だったからだ、
というのが、いまのところ自分を納得させている理由です。

完全デジタル移行が常識の現在の映画界で
わざわざ16mmフィルムで撮影された、全体に黄色がかった映像が
1965年という時代設定ともあいまって
ある種のノスタルジーに支配されているのは
容易に見て取れるでしょう。
しかも、「12歳の恋人たちが駆け落ちする物語」とくれば
一定の年齢を重ねた大人にとって
ノスタルジーとファンタジーを感じないわけにはいきません。
「淡い初恋の物語」なら誰もが経験済みのノスタルジーのみですが
そのうえ両想いで駆け落ちですからね、そりゃあもう
みんな大好き夢見るファンタジーですよ!

オープニングにおける、一軒の家を2階から1階へ、
そしてそれぞれの部屋へワンカットでセットをカメラが移動する映像や
ボーイスカウトの隊長(エドワード・ノートン)が
キャンプのチェックをしながら状況を説明していくシーンは
一気に映画の世界に連れていってくれます。
なんか、何度も同じことを言っているような気もしますが
これが演劇でも文学でもない映画特有の愉悦なのです。

そもそも、舞台となるニューペンザンス島というのが
限定された空間なのですが
オープニングのスージー(カーラ・ヘイワード)が暮らす家が
まるでドールハウスのようであることからも
箱庭的空間で繰り広げられるドラマはRPGゲームのようでもあり、
いやいや、そもそも「恋は盲目」というではないか、
恋に落ちた二人の視野などせいぜいこの程度なのだともいえるでしょう。
いい年こいたおっさんが、なにを恋について口角泡して
語っているのだといわれそうですが、
そういう良識ぶった態度こそがこの作品の主人公たちから
鼻で笑われるような言い分なのですよ。ふっ。

共に映画初出演という主人公の恋する二人は
サム(ジャレッド・ギルマン)とスージー(カーラ・ヘイワード)。
サムは、アライグマの帽子にメガネという出で立ちで
かなり強めにキャラ設定されています。
スージーはミニのワンピースで青いアイシャドー。
スージーは、望遠鏡がわたしの魔法のようなものと言っていますが、
二人とも周囲から同じような疎外感を感じていることが
彼らが恋に落ちる導火線となっているし、
メガネや望遠鏡などのフィルターをひとつ間に挟まないと
世間をみることはできないのだと深読みもしたくなります。
これは、監督自身の世界観といってもいいのではないでしょうか。
さらに、ボブ・バラバンが演じるナレーターというメタレベルな存在
この作品の寓話性を高めています。

「駆け落ち」とはいっても、
本当の両親がいないサムはさておき、
スージーは弟から無断で借用したレコードプレーヤーを
「10日以内に返す」と手紙で書き残しているし、
二人の決心がやっぱり子どもっぽいところがかわいいところ。
親に無断で外泊するなんて言うに及ばず、
普段は行かない隣町に行っただけで
見知らぬ景色に不安になった子どもの頃を思い出しますの〜。

心通じて文通を交わしたとはいえ、
まだお互いをよく知っているわけではないサムとスージーは
逃避行をするうちに徐々にわかり合い、
ちょっとした喧嘩もしながら
(この「ちょっとした喧嘩」のうらやましいったら、ない!)
ついに初キッス! ああ、初キッス!
快楽の頂点にいるかと思いきや、ペッと唾を吐くサム!
ええ〜〜? 砂があったというけども、砂ぐらい飲み込めよ!
おまえ、さっき小石ほおばってたじゃねえかよ!
大好きな彼女との初キッスだぞぃ! だぞぃ!
とはいえしっかり勃起したサムに対して、
「固くなってる」というスージーは、オ・ト・ナ?
二人が12歳だからいいものの(いいものの、の意味がわからんが)
15歳くらいだったら、また違う関係になったでしょう。
とくに、もしもサムが15歳なら抱き合うだけで満足するわけもなく、
否が応にもセックスを描く必要が発生するのですが
この作品においては、スージーがサムに
ピアスの穴を開けてもらうという行為が
セックスを代替していると言えるのではないでしょうか。

そんな純粋無垢な二人の逃避行と対をなして描かれるのが
島でただ一人の警察官シャープ警部(ブルース・ウィリス)と
スージーの母親ローラ(フランシス・マクドーマンド)の不倫関係です。
シャープとローラの関係を恋愛といっていいかどうかは
意見の分かれるところだと思いますが、
サムとスージーの「好きなんだから一緒にいたいじゃん!」という
ドがつくシンプルな行動に比べて、
シャープとローラは当然のことながら
コソコソしてウジウジして、もろもろにがんじがらめです。
一旦、捕まえたサムを引き取ったシャープは、
サムに「恋をしたことあるの?」と聞かれ、
「あるよ。片思いだったけど。」と答えます。
それに対してサムは「あら、残念」とでもいうように
肩をすくめてみせるのです。
もう、どっちが大人かわかりませんな。ははは。
というより、恋愛について
大人が子どもに教えられることなどなにもないのです。
強いて言えば、大人が子どもに教えられる「恋愛」とは
「うまくいかなかった事情」を語る言い訳だけ
なのです!

……や、やめよう、これ以上自分を追い詰めるのは。。。

それはともかく、
サムとシャープが語り合うトレーラーハウスで不思議だったのは、
一瞬だけ、テーブルを挟んだ二人が
トレーラーハウスの壁をぶち抜いた方向から映されたカット。
あのカットさえなければ、トレーラーハウスのセットは
室内限定でよかったのに、わざわざ壁を取り払ってまで
あのショットを撮影した意図はなんなのか……
だからといって、作品上なにも問題はないのですが
だからこそわざわざそうするには何らかの意図があるのだろうと
勘ぐりたくなるのですが……
なんで? オセーテ、エロイシト。

素人同然の主人公二人が瑞々しい演技を見せてくれているわけですが
脇を固めるのは名優揃い。
ブルース・ウィリスやビル・マーレイは言わずもがな、
コーエン兄弟作品でおなじみフランシス・マクドーマンド
全然「ファイト」しないエドワード・ノートン
ひげ面でわかりにくいハーヴェイ・カイテルも。
そして、福祉局員のティルダ・スウィントン
「福祉」っつってんのに、あからさまにナチスをイメージした
セットとコスチュームは最高です。

最終的に、サムの里親となったシェパードが
スージーの家で「密会」するサムを送り迎えしているのは
ニヤっとするところ。
これからローラとの関係はどうすんの、シェパード?
スージーは全然笑わなかったけど、サムとはどうなんの?

えっと、そういえば、自分の恋愛はどうなったんだっけな……





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