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セックス・チェック 第二の性

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(1968年/日本 89分)
監督/増村保造 原作/寺内大吉 脚本/池田一朗 撮影/喜多崎晃 美術/下河原友雄 編集/中静達治 音楽/山内正
出演/安田道代、緒形拳、小川真由美、滝田裕介、笠原玲子

概要とあらすじ
寺内大吉の短編小説『すぷりんたあ』をもとに、池田一朗(後の隆慶一郎)が脚色し増村保造が監督した、異色のスポ根映画。宮路司郎は戦前にスプリンターとして活躍したが、戦争でオリンピックをあきらめ、復員後はすっかり落ちぶれてしまっていた。彼はバスケット選手の南雲ひろ子と出会い、彼女の潜在能力に目をつけ百メートルのスプリンターに育てることにする。宮路はひろ子に男になれとアドバイスし、毎日ひげを剃るよう指導した。ひろ子は日本記録に迫るタイムを出すが、予選会のセックス・チェックで「半陰陽」と診断され、代表選手の候補資格を失ってしまう。宮路はひろ子の「女」を取り戻すべく、昼間はトレーニング、夜はセックスに励むのだった。(allcinemaより



女は女に生まれるのではない、女になるのだ

wikipediaによれば、
『セックス・チェック 第二の性』
1968年10月開催のメキシコシティオリンピックを
意識して作られた映画
、とのこと。
原作の短編小説がどのような内容なのか知らないのですが
原作通りの『すぷりんたあ』というタイトルなら
オリンピックへ向けた盛り上がりに乗じてスポーツ映画が作られるのも
わからないではないものの
それが『セックス・チェック 第二の性』となると
一体どうやってオリンピックと絡めようとしたのか
甚だ疑問でありますな。
ちなみにメキシコシティオリンピックには
短距離走を含めた女子陸上競技全種目で
日本代表選手は一人もエントリーをしていないのだとか。

かつては有能なスプリンターだった宮路に扮する
若かりし緒形拳がのっけから飛ばしまくりです。
この宮路という男、100m走の選手としては実力十分だったものの
自分勝手で恐ろしく傲慢かつ慇懃無礼な性格が災いして
スポーツ界から干された存在で、いまやヒモに成り下がっているのですが
すっかり出世したかつての同僚たちに対して
やさぐれてみせたかと思うと、あいかわらず高慢な態度を見せ、
いつまでたっても全く反省も後悔もしない男なのです。
自由奔放というより傍若無人な宮路の態度は
この作品の仲で最初から最後まで一向に変わることがなく、
あきれて腹が立って、辟易するばかりです。

宮路がどうしようもない人間であることを知っていながら
陸上の才能だけは認めている峰重(滝田裕介)
便宜を図ってやって、実業団の陸上部のコーチに推薦してくれたのに
宮路は峰重の留守中に、
峰重の妻・彰子(小川真由美)をレイプしてしまいます。
その後、一応は反省の色を見せるものの
(反省するとか、そういう問題じゃないのだが)
峰重に対して、
「オレは外国のコーチから獣になれ、オオカミになれといわれたんだ。
 そしたら今度は戦争だ。オレは人を殺して女を犯した」

と、なんの言い訳にもならない自己正当化をやってのけ、
当然ながらコーチ就任の話はおじゃんになり、
峰重とも絶交することになって、一度はしゅんとするものの
その帰り際にバスケット部の練習を覗いているうちに
身体能力が高そうだけど乱暴な性格のひろ子(大楠道代)を発見。
ひろ子を気に入った宮路はさっそく引き返し、
峰重に「おれにコーチをやらせろ!」と迫るという
まったく感情移入する隙を与えないようなデタラメな人間なのです。
緒形拳特有の、満足げなニタ〜とした笑顔が
余計にイライラさせるのです。

ともかく、コーチに就任した宮路は
他の部員たちをほったらかしにして、ひろ子だけを鍛え上げ、
日本記録にあと一歩のところまで成長させます。
もともと女にはすぐに手を出すヤリチンの宮路は
峰重の妻をレイプしたことへの罰としてセックスを断っているので
(つーか、自分の好きなことを我慢するのが
 自分が犯した罪の償いになるとは思えないのだが)
マッサージでひろ子の身体を触りまくりはするものの、
肉体関係は持たず、それどころか嬉々として
「おまえは男になれ」と、ひろ子にひげそりを渡し、
ひげそりを習慣化させることで、男性的なパワーを
身につけさせようとします。
周囲から「おまえ、あの子をもう抱いたんだろ?」といわれると
「なんだとこのやろう、殺すぞ!」と恫喝して返します。
友人の留守中に友人の妻をレイプした男がいうセリフじゃありません。

ひろ子があまりに有能なため、一応念のためにと
セックス・チェック(医学的な性別認定)を受けることになり
ひろ子が半陰陽であることが判明します。
正直、半陰陽の陰部がどうなっているのか興味津々なのですが
当然そこの描写も説明もありません。
とにかく、ひろ子は女性とは認められないとされたわけです。
事実、18歳になるひろ子はまだメンスの経験がありませんでした。

絶望したひろ子が陸上も会社も辞め、実家に帰ってしまうと
宮路はひろ子のあとを追って実家に突撃。
「オレがお前を抱いて女にしてやる!」といい、
ずうずうしくも実家の離れでふたりで暮らし始めるのです。
男になれと指導していたのも、自分に課した罰もすっかり忘れ
毎晩ひろ子とヤリまくる宮路。
好き勝手に生きてらっしゃいます。

ついにひろ子にも初潮がきて、正真正銘の女性だということになり
晴れて選考会に出場したひろ子でしたが、
結果は平凡な記録にとどまり、オリンピック出場は叶わぬ夢に。
わがまま放題で金を出させていた親会社の人間に対して
「ちょっと女にしすぎましたねぇ。僕はこれでコーチを辞めます」
という、最後の最後まで自分の決断にしか従わない宮路は
まったくなんの責任も果たさないまま、
ひろ子の肩を抱いて去っていくのです。

女性のアスリートに対して、
もっと男になれ(=もっと野性的で貪欲になれ)と指導し、
半陰陽が判明すると、毎晩ヤリまっくて「女」にし、
成績が悪いと「女にしすぎた」といってのけるのを見ると
女性であることがアスリートとしての欠点だといわんばかりだし、
気分が悪くなるほど低脳でマッチョな思想です。

原作の『すぷりんたあ』とはかけ離れた
『セックス・チェック 第二の性』というタイトルは
おそらくボーヴォワールの『第二の性(1949)』から
とられているのでしょうね。
有名な「女は女に生まれるのではない、女になるのだ」という言葉が
ひろ子の境遇にぴったりと当てはまります。

映像で語られる表面的なエピソードにカモフラージュされた
生臭いテーマが見え隠れする怪作でした。

[予告編]なぜか埋込不可なのでリンクを↓
https://www.youtube.com/watch?v=FZZYjfanJ4E



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