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熱波

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(原題:Tabu 2012年/ポルトガル・ドイツ・ブラジル・フランス合作 118分)
監督/ミゲル・ゴメス 脚本/ミゲル・ゴメス、マリアナ・リカルド 撮影/ルイ・ポッサス 編集/テルモ・シューロ 音楽/バスコ・ピメンテ
出演/テレーザ・マドルーガ、ラウラ・ソベラル、アナ・モレイラ、カルロト・コタ、エンリケ・エスピリト・サント、イザベル・カルドーゾ

概要とあらすじ
ポルトガルの俊英ミゲル・ゴメス監督の長編第3作で、第62回ベルリン国際映画祭でアルフレッド・バウアー賞、国際批評家賞をダブル受賞。仏映画誌「カイエ・ドゥ・シネマ」が選出する2012年のベスト10にも名を連ねるなど、各国批評家筋から高い評価を獲得したメロドラマ。短気でギャンブル好きの老女アウロラは病に倒れ、世話を焼いてくれる隣人のピラールと、無口なメイドのサンタに、「消息不明のベントゥーラという男を探してほしい」と頼む。ピラールとサンタは、アウロラの願いをかねるためベントゥーラを見つけ出すが、彼はすでに正気を失っていた。やがてベントゥーラとアウロラが、ポルトガル植民地戦争が始まって間もない50年前に交わしたという、ある約束が明らかになっていく。モノクロ&スタンダードで描かれる映像美にも注目。(映画.comより



過ぎ去った日々は、夢か幻

早稲田松竹で併映された『わたしはロランス』『熱波』
どちらも新しい映画なのに、画面はスタンダードサイズ
若い作家たちはこの古い画面サイズに
むしろ斬新さを感じているのでしょうか。
時代は繰り返すものよのう!
とはいえ、作品全体がノスタルジーに包まれている『熱波』の場合は必然で、
画面サイズのみならず、30mmと16mmのフィルムを使用して撮影され、
色褪せた過去の熱狂を描くことを目的としているようです。
原題の「Tabu」とは、映画の中では山の名前ということになっていますが
『TABOU(1931)』というF・W・ムルナウの無声映画のタイトルにも
引っかけられているようで、
ミゲル・ゴメス監督のシネフィルぶりが窺えます。

制止画から始まったのか、それともそう見えただけなのかわからないけど
絶妙な姿勢で草むらにたたずむ男の姿ではじまるプロローグは
記録映像のようであり、夢か幻のようでもあり、寓話的です。
全編にアイコンとして登場するワニは
水面下に常に潜む破滅の象徴のようにも見えるし、
死んでもなお男を追い続ける妻の亡霊は愛そのもののようにも感じます。

第1部「楽園の喪失」第2部「楽園」に分けられたこの作品は
簡単に言ってしまえば、年老いた女性が若かりし頃、
恋し焦がれたあのひとにもう一度会いたいと願うという
メロドラマです。
物語はいたってシンプルですが、聲高に主張しないものの
作品の背景となる1960年代は最後まで植民地を持ち続けたポルトガルの
政治的な狂気の時代
にあたるそうで、
そのような時代背景が主人公たちの熱狂と失意に投影されているようです。

モノクロで語られるメロドラマは、一見退屈なようですが
その映像は、惹きつけて放さない不思議な魅力に溢れています。
カジノですっからかんになったアウロラ(ラウラ・ソベラル)
隣人のピラール(テレーザ・マドルーガ)が迎えに行き、
テーブルを挟んでお茶を飲んでいるシーンで
カジノにきた言い訳や良好な関係とはいえない娘に対する愚痴を
長々と独白するアウロラの背景がゆっくりと回り続けている不思議な演出。
ふたりのいる場所は客観的に映されないので
遊園地のティーカップのような構造なのか、わからないけど
アウロラと同じようにこちらまで夢心地になりそうです。

敬虔なカソリック教徒のピラールは、
なんとか人の役に立ちたいと考えているようですが
彼女の善意は報われているともいえず、アウロラと同様に失意の中にいます。
なんの映画を観ていたのかわかりませんが
映画館で「Be my baby(ザ・ロネッツ)」を聞きながら涙を流す彼女が
後半で同じ曲を聴きながら涙する若きアウロラと重なります。

死期が迫ったアウロラの願いに従ってピラールが探し出した、
アウロラのかつての恋人ベントゥーラ(エンリケ・エスピリト・サント)
語る思い出話が第2部「楽園」です。
とはいえ、養護施設に入っていたベントゥーラは認知症の兆しがあるらしく、
彼が語る過去がすべて真実かどうか定かではありません。
熱にうなされたようなノスタルジーを描こうとするこの作品にとっては
それが真実かどうかは重要な事ではないのです。

ベントゥーラのナレーションによって進行する第2部は
まるで無声映画のように、登場人物たちのセリフが聞こえません。
聞こえてくるのは、風の音や虫の声、車のエンジン音や音楽です。
これがまさに夢のようであり、頭の中で記憶を辿るときの感覚に似ています。
唯一、登場人物の声が聞こえたのは(僕の記憶が正しければ)
駆け落ちした臨月のアウロラとベントゥーラが、追いかけてきた親友を殺し、
アウロラがまるで親友の命と引き替えのように子供を出産して
悲しみに泣き崩れるベントゥーラの嗚咽だけでした。
嗚咽は言葉ではない、ということでしょうか。

映画を観終わると、うたた寝から目覚めたような感覚になる
おだやかで奇妙な作品でした。





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