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ムカデ人間

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(原題:THE HUMAN CENTIPEDE(FIRST SEQUENCE) 2009年/オランダ・イギリス 90分)
監督・脚本/トム・シックス
出演/ディーター・ラーザー、アシュリー・C・ウィリアムズ、アシュリン・イェニー、北村昭博

あらすじ
ヨーロッパを旅行中の若いアメリカ人女性、リンジーとジェニー。ドイツの郊外でレンタカーがパンクしてしまい、森の中の一軒家に助けを求める。ここに独りで暮らす外科医のヨーゼフ・ハイター博士に招き入れられ、リビングで一息つく2人だったが、気づかぬうちに睡眠薬を飲まされ意識を失う。目を覚ましたときには、2人とも地下室のベッドに拘束されていた。その後、博士は日本人男性カツローを拉致して同じようにベッドに拘束すると、それぞれの肛門と口をつなぎ合わせて“ムカデ人間”をつくる実験の開始を宣言するのだった。(allcinemaより)



カルトをなめんなよ!

「肛門と口をつなげてムカデ人間を作る」という馬鹿馬鹿しい設定が
公開前から話題となり、B級ホラーファンが心を躍らせていたこの作品。
僕も、観たくて観たくて、そりゃあ、もうワクワクして
「あんまりグロかったら、しんどいな〜」とウキウキしていましたよ。

そんなわけで、好意的な期待を抱きつつ観てみると……
期待は無残に裏切られ、とんでもない駄作でした。

そもそも「肛門と口をつなげてムカデ人間を作る」という着想は
あまりに馬鹿馬鹿しくて、まるで小学生が言いそうなことです。
それでも、多くの人が期待を寄せたのは
馬鹿馬鹿しいことを思いっきり過剰にやられたら、
面白くなるからです。
つまらない駄洒落でも、くそまじめに大声で言われたら
違う面白さが出てくるんです。
それを知ってるホラー映画ファンは期待に胸を膨らませたのです。

ところが、この作品には過剰さも真面目さもありません。

先述したように、つまらない駄洒落そのものは
あくまでつまらないものであって、
それを過剰に言ったり、くそまじめに言うから面白いのです!
「肛門と口をつなげてムカデ人間を作る」という着想だけでいけると思ったのか
「カルトムービーってこんな感じだよね—」と映画ファンを馬鹿にしているのか
作品づくり、および観客に対する不誠実さを感じます。

この作品の全体の構成は、
「ムカデにされた人間」という部分を除けば異常者に拉致・監禁されて、
そこからどうやって脱出するのかというサスペンスです。
犯人に抵抗したり、知恵を絞って逃げだそうとしたり、
途中で、警察やら近所の人やら郵便配達やらがピンポ〜ンとやってきたりして
見つけてもらえるのか? 助かるのか? ヒヤヒヤドキドキという
とてもありふれたフォーマットの物語です。
「イスに縛られている」のか「ムカデ人間にされている」のか
という違いがあるだけでその基本的な構造は同じです。

ありふれたフォーマットだからダメなんじゃありません。
フォーマットがありふれているからこそ、
「ムカデにされた人間」を最大限に活用しなければならないんです!
だのに! ああ、それだのに!

「ムカデ人間」はマッド・サイエンティストによる手術で
口と肛門をつなげられているのですが
この接合部分は包帯で縛られて、隠されています。
本編の大部分の時間にこの姿で登場するにしては、デザインが雑すぎます。
特殊メイクでもなんでもいいから、こういうふうにつながっているということを
せめて一瞬でも見せないとダメでしょう。
ホワイトボードに書いたイラストで説明されただけで、
「つながってますよ」という体(テイ)では観ててもその気になれません。

口と肛門がつながっているわけですから
当然二人目と三人目は前の人のうんこを食べることになります。
このスカトロ的な設定は「ムカデ人間」をやるからには
もっと徹底的にこだわる必要があるでしょう。

一度だけ、先頭の日本人(北村昭博)が
「あ〜出ちゃう、ごめんな〜」というくだりがあったほかには
真ん中の女が三人目に気遣って便秘気味になってるというセリフのみ。
……そんなことではダメだろう!

もっと、こう……
嫌がりながらもうんこを飲みこときに
ゴクゴク動く喉をアップで映すとか(ちょっと長めの一本グソ)、
接合部分がゆるんでて、うんこがこぼれちゃうだとか、
三人目が出したうんこはスカスカだな、とか…
あと、二人目と三人目はずっとう〜う〜喚いているので
その吐く息が前の人の腸を圧迫して…とか

見た目で言うなら、
飼い犬に着せるようなニットの衣裳をムカデ人間に着せるとか
ひっくり返して、手足をバタバタさせるとか、さ。

ホラー映画の観客は、この設定の矛盾、そもそも感染症が…とか、
大腸菌が…とかの野暮な疑問には目をつぶっているのですから
重箱の隅をつつくような
松本人志的ディティールの膨らませ方をしてほしいものです。

ホラー映画で餌食になる女性は、
だいたいチャラくてエロい馬鹿女が定番なので
(ざまあみろと思わせることで一種の大義名分を観客に共有させる)
そこは踏まえているつもりなのかもしれませんが
彼女たちはこれからクラブに遊びに行こうとして、
ホテルで電話をしているだけなので、
これから起こる恐怖体験の前振りとして十分ではありません。
せめて、食事のシーンは絶対に必要でしょう(口元のアップで)。
もしくは、クラブで気に入った男とトイレにしけこんで
フェラチオして、ザーメンをゴックンしたあとに
「あたし、こういうの全然平気なの、むしろ好きなくらい」とか言わせれば
予告編や前情報で内容を知っている観客に
その後、彼女たちがうんこしか食べられない体になることを
予感させるでしょう。

車がパンクするのなんてクラブの帰り道でいいんです。
どうせ、ハイター博士の家に誘導するための
理由付けでしかないんですから、なんでもいいんです。
ドイツ語でからんでくるおっさんのシーンは全く必要ないので
(パンクを直せなくて立ち往生するんだから、
 そもそも道に迷うという設定自体が必要ないな)
無駄な上映時間を費やすくらいなら
「さっきまで楽しかったのに、今はこんなことに…」という落差を
きちんと表現してほしかったです。

後半出てくる二人組みの警官の大根ぶりもなかなかですが
ハイター博士をめちゃくちゃ疑ってるのに
捜査令状を取りにふたり仲良く帰っちゃうって、どういうことでしょう。
どちらか一人はその場に残るか、誰かに持ってきてもらうかすればいいのに
「20分後にまた来るから」っていなくなっちゃったら
間違いなく逃亡するか証拠隠滅するでしょうに?
(ていうか、薬を飲んじゃった警官、薬の効き目が遅っ)

そして、ラストは警官との相打ちでハイター博士は死んでしまいますが
これもいかがなものかと。
ハイター博士は生き残り、
「次はあなたがムカデになるかもしれませんよ」的な
余韻を持たせて終わるか、
死んでしまうなら、自分が作った薬品もしくは仕掛けによって
自らの命を奪うことになってしまうというような
因果応報自業自得的な教訓めいたものを示して
観客の心に得体の知れないわだかまりを残してもらいたいものです。
つーか、ピストルじゃダメ! そんな離れて戦う武器じゃ絶対にダメ!
血みどろスプラッターにできるラストチャンスを
みすみす逃してしまいました。

ハイター博士(ディーター・ラーザー)は、
マッド・サイエンティストですが
狂気を伴った頭脳明晰さに空恐ろしい思いになることはなく、
終始脇が甘く、用意周到さはみじんも感じられませんでした。
犬を使って実験したときの写真を眺めたりしてますが、
長年準備と研究を重ねて考え抜かれたという感じがなく、
急に気が狂ってなんとなくムカデを思いついたようにしか見えません。
これも、最初の着想だのみと同様に
ディーター・ラーザーの容姿の気味悪さだけに頼り切ったという印象です。

アイデアを思いついたまでは良かったものの、
脚本が全く練られていないのが残念でした。
挽肉を食ったからって、ハンバーグを食ったことにはならないんだよ!

この作品、三部作だそうですよ。
「ムカデ人間 2」ではムカデの人数が増えるそうですよ。
……どうしましょうかねぇ。





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