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巨人と玩具

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(1958年/日本 95分)
監督/増村保造 脚色/白坂依志夫 原作/開高健 撮影/村井博 美術/下河原友雄 音楽/塚原晢夫 録音/渡辺利一 照明/米山勇
出演/川口浩、野添ひとみ、高松英郎、信欣三、伊藤雄之助、藤山浩一、小野道子、山茶花究、伊藤直保

概要とあらすじ
文学界所載開高健の同名小説を、「結婚のすべて」の白坂依志夫が脚色、「氷壁」の増村保造が監督、同じく「氷壁」の村井博が撮影した異色ドラマ。主演は「命を賭ける男」の川口浩、「氷壁」の野添ひとみ、「大阪の女」の小野道子、高松英郎。色彩はアグファカラー。(映画.comより



現代の人間は赤ん坊以下です、犬以下です!

wikipediaによると
日本経済が飛躍的に成長を遂げた、いわゆる高度経済成長期は
1954年から1973年の19年間を指す
そうです。
開高健による原作『巨人と玩具』が書かれた1957年には
すでにその状況のいびつさから来る
未来への懸念が予見されていたわけですが
それからおよそ半世紀経ってすっかり成長が望めなくなった今、
僕たちは過去を反省して新たな価値観を見出すだすわけでもなく、
あいかわらず高度経済成長期の亡霊を追いかけ、
溺れそうになりながら水面から口だけ出して、
なんとか息継ぎをしているだけのような気がします。

そんな大量消費社会のいびつさを描いた『巨人と玩具』は
青空をバックにしたヒロイン島京子(野添ひとみ)が明るく振り返り、
そのスチール写真がモザイク状に拡がって反復される
グラフィカルなオープニングで始まります。
この演出が、アンディー・ウォーホールの作品同様に
商品の陳列棚を連想させ、大量消費社会の価値の均質化と
商品と謳えばなんでも商品にしてしまうマスコミへの批判が窺えます。
オープニング・クレジットのバックに流れる、
「足音たてず、刺し殺せ!
 足取り軽く、ぶち殺せ!
 ジャカボン、ジャカボン! 葬式だ!」

という曲が強烈です。

キャラメルの売り上げを競い合う三大菓子メーカーのひとつ、
ワールド製菓に務める営業部の新米・西洋介(川口浩)
「宣伝の鬼」とも言われる課長の合田(高松英郎)
憧れを持っています。
このワールド製菓、とにかく役員との血縁かコネが出世するための条件で
合田も出世のための策略として部長の娘と結婚しています。

キャラメル戦争を繰り広げる三大菓子メーカーが競うのが
景品であるところが皮肉です。
西洋介の学生時代からの親友、横山(藤山浩一)がいるジャイアンツ製菓
景品が「生きた動物」、ワールド製菓は「宇宙服」。
これで他社に勝ったぞと思ったら、
もうひとつのアポロ製菓は「乳母車からご婚礼までの生活費」
キャラメルの景品として、どう考えても度が過ぎている景品が
おいしいキャラメルを作るという本質を見失っていることを
滑稽に表現しています。
現在でも、○○とコラボしたオマケでパンパンにふくれあがった女性誌などは
このキャラメル戦争と全く同じ貧困な発想に基づいたものでしょう。
(とはいえ、そんなオマケを目当てにして
 女性誌を買う客が存在することがミソ)

この作品が古い日本映画だから
どうせのんびりしてるんだろうとあなどるなかれ、
とくに前半は、まくし立てるような速いテンポ
物語が展開していきます。
そして、なかなか火が付かないライターと
オートメーション化された工場のラインの映像がオーバーラップ
する
トリッキーな演出も楽しめます。

イケイケどんどんの合田課長が
なぜか目につけた通りすがりの女の子が島京子。
合田は島京子をワールド製菓のイメージ・キャラクターとして
一から育て上げようと目論んでいるのですが
天真爛漫さが島京子の魅力なのはわかるけれども
がさつで「カッパみたいな顔」をしているうえに
前歯が虫歯でかけている女の子

キャラメルのイメージキャラクターとしてどうなのよと誰しも思うはずですが
馬鹿げた広告戦争のかたわらで
マスコミによって作り上げられる虚飾にまみれたスター像を強調するには
もってこいなのです。

とにかく、マスコミの力を過信する合田。
かつてはやり手の営業マンだった義理の父親でもある部長に対して
「あなたはずれている。知らないんだ、マスコミの時代を。
 現代の人間は赤ん坊以下です、犬以下です!
 彼らは考えないからです!」

と、力説するのです。
いまや、合田が心酔するマスコミも、
「マスゴミ」と揶揄されるまで信用をなくしましたが
まったく自分の頭でものを考えない人間はあいかわらず存在するので
「現代の人間は赤ん坊以下です、犬以下です!」
という言葉には全面的に賛同します。
要は、このセリフはマスコミの力を盲信する合田を揶揄すると同時に
マスコミに踊らされている消費者をも揶揄しているのです。
そんな合田は、批判した義理の父親と同じく
徐々にストレスによって身体が病んでくるのです。

最初の出会いで、ナンパしてきた西洋介を袖にした島京子は
じつはずっと西洋介のことを好きだったのですが
(その後、実生活では川口浩と野添ひとみは夫婦に)
西洋介がまるっきり自分に興味がないとわかると
島京子は開き直ってどんどんスターダムをのし上がります。
すっかり虫歯も治した京子の変貌ぶりが見物。
この京子の変貌(=変態)は
京子が飼っていたおたまじゃくしに象徴されているでしょう。
しかも、西洋介の親友だった横山がジャイアンツ製菓を辞め、
島京子のマネージャー兼恋人になっていたのですから
西洋介の憤懣やるかたなし。

青臭い正義感に火が付いた西洋介ですが
島京子を「おい、虫歯!」と呼び、
「調子に乗るなよ!」と
自分の都合で島京子を道具に使おうとする姿は
どっからどうみても正義などではなく、ただの傲慢な社畜です。

合田に対して不満をぶちまけた西洋介は
ラストシーンでキャンペーン用の宇宙服を着て街を歩きます。
おそらくは、自分の理想が正しく、
世の中が狂っていると考えている西洋介にとっては
異星にたどり着き、宇宙人の間をぬって
歩いている気分だったのかもしれません。
しかし、西洋介を見かけたアポロ製菓に勤める恋人に
「もっと笑顔で」といわれると、素直におどけてみせる西洋介は
なにかを諦めて、宇宙人に囲まれて生きていく処世術を
悟ったようにも見えます。

コメディとしても観ることができる作品ですが
ここで描かれているジレンマは
今後も永遠になくなることはないんじゃないでしょうかねえ。

)



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コメント

このレビュー、内容はともかく何気なく女性蔑視のコメントが含まれてるのが不快。
Twitterならそれなりに炎上しそう。
最近はツイッターレディースという危険な方々もいるみたいだし…

2017/01/05 (木) 08:11:53 | URL | #HGK.Niao [ 編集 ]

Re: タイトルなし

↑偽名すら名乗れないようなチキンが
「内容はともかく」だとか「何気なく」だとか寝ぼけた状態で
なにかを言ったつもりになってんじゃねえよ。バーカ。

2017/01/06 (金) 20:30:35 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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