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バーニー みんなが愛した殺人者

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(原題:Bernie 2011年/アメリカ 99分)
監督/リチャード・リンクレイター 脚本/リチャード・リンクレイター、スキップ・ホランズワース 撮影/ディック・ポープ 美術/ブルース・カーティス 衣装/カリ・パーキンス 編集/サンドラ・エイデアー 音楽/グレアム・レイノルズ
出演/ジャック・ブラック、シャーリー・マクレーン、マシュー・マコノヒー

概要とあらすじ
「スクール・オブ・ロック」のリチャード・リンクレイター監督とジャック・ブラックが再タッグを組み、1996年に米テキサスで実際に起こった殺人事件をブラックユーモアと悲哀を込めて描いた犯罪コメディドラマ。テキサス州の田舎町で葬儀屋を営むバーニーは、誰にでも優しく慈愛に満ちた人柄で町民から慕われていた。一方、金持ちの老未亡人マージョリーは偏屈な嫌われ者だったが、心優しいバーニーはひとり暮らしのマージョリーを気遣い、たびたび家を訪問して相手をするようになる。やがて心を許したマージョリーはバーニーに銀行口座まで預けるほどになるが、ある日、バーニーはマージョリーを殺してしまう。バーニーはその後もマージョリーが生きているかのように演出を続けるが……。(映画.comより



悪いのは誰? 罪ってなに?

『スクール・オブ・ロック(2003)』以来8年ぶりとなる
リチャード・リンクレイター監督とジャック・ブラックのコンビによる
『バーニー みんなが愛した殺人者』
劇場公開を取りこぼし、やっとDVDで観ることができました。
公開規模も小さかったので、小品と呼んで差し支えなさそうなこの作品は
まさに、山椒は小粒でなんとやら。
コメディらしい軽快なテンポに乗せられつつ、
最後には居心地の悪さを感じるような作品です。

日本人なら誰もが『おくりびと』を思い浮かべるオープニングに始まって
カーラジオから流れる曲に合わせて朗々と歌いながら出勤する
葬儀ディレクターのバーニーの姿には
ジャック・ブラックの芸達者ぶりがいかんなく発揮され、
彼の明るさと親しみやすい風貌は
バーニーのキャラクターにぴったりです。

この作品の特徴は
ドキュメンタリーのように行なわれるインタビュー
街の人々にバーニー(とマージョリー)の人柄を語らせるという構成です。
インタビューに答える人たちは、
実在の住人と俳優とが混在しているそうで
モキュメンタリーと言ってしまうのはちょっと違うような気もしますが
ともかく、この手法を選んだことは
後述する作品のテーマと深く拘わっていると思います。

バーニーは、オープニングの死に化粧のみならず、
葬儀の司会進行の腕前にも長け、自ら賛美歌まで歌う万能ぶり。
さらには、お値段高めの棺桶をさりげなく売り込むという
優秀な営業マンの一面も。
しかも、遺族に対する手厚いアフターケアで
街中の人々から愛されている、非の打ち所のない善人です。
地元のラジオ番組に出演するシーンでは、
死んだ人間がどうしようもないクズだったとしても、
あくまで上品に表現してみせるあたりに、
調子の良さを感じないわけではありませんが
バーニーの言動はその場限りではないため、
いつもこうなんだから、こいつは本心からそう言っているという説得力があり、
だからこそ周囲の人たちは彼を愛してやまないのです。

バーニーとはうって変わって、街中から嫌われ者ているのが
未亡人のマージョリー(シャーリー・マクレーン)
どこをどう切ってもいけ好かないクソババアです。
しかも大金持ちだから、なおさら可愛げがなくタチが悪い。
そんなマージョリーとバーニーは徐々に親密になり、
やがて年の離れた恋人同士となるのですが
バーニーがいつもの親切心(と思われる)から
マージョリーに接近し始めた当初、
バーニーに腕をちょっと触られるだけでも
身体をよじって避ける
ようにしていたのをみると
マージョリーは極度の警戒心から
性格をこじらせてしまったのではないか、と思います。
バーニーが信用に値する人間だと理解してからのマージョリーは
まさに恋する乙女の柔和な表情となり、
強欲な家族を差し置いてバーニーに相続権を譲るまでになります。

しかし、ふたりの密月は長くは続かず。
手に入れた以上は手放したくないと考えたのか、
マージョリーの独占欲は次第に強くなり
バーニーはマージョリーの束縛に耐えられなくなっていきます。
そしてついにバーニーは、マージョリーの背中に
4発の銃弾を撃ち込んでしまいます。


やがて冷蔵庫の中からマージョリーの遺体が発見され、街は大騒ぎ。
逮捕されたバーニーはすぐに犯行を自白し、
容疑は確定しているのですが
街の人々から聞こえてくるのは
「バーニーは悪い人間じゃない」
「他の奴がとっくに殺していてもおかしくなかった」
「たった4発しか撃っていない」
などなど
バーニーを擁護する声ばかり。
頭を抱えたダニー検事(マシュー・マコノヒー)
裁判を違う街で行なうことで公平を保とうとします。

さて、ここからは法廷劇となり
バーニーが財産目当ての殺人者なのか
それとも情状酌量の余地があるのかという論争となっていきます。
バーニーが殺人の罪に問われることは疑いようもないのですが
ダニー検事が目立ちたがり屋
法と正義を守るためだけに行動しているわけでもないところがミソです。
マージョリー殺害後のバーニーが
マージョリーの財産を使っていたのは事実ですが
その使い道は教会への寄付や街の人たちへのプレゼントだったりと
私欲によるものとは言えず、
寄付やプレゼントを街から取り上げる検察の姿が
十分な悪意を持って描かれています。

とはいえ、バーニーが否の付け所がまったくない善人だと
言い切るのも躊躇われるのが面白いところで
バーニーには、地元の劇団を演出するほど演技の素養があることが
彼の人当たりの良さは芝居だったのではないかという疑念を
完全には捨てきれない重要な要素となっています。

この作品に寄せたネット上の感想の中には
バーニーは計画的に街の住人の心を掴み、
やがて大金持ちの未亡人に眼をつけて犯行に及んだサイコキラーであり、
詐欺師だというものもありましたが
劇中の裁判にあった通り、ではなぜバーニーは犯行後に偽装もせず、
逃亡もしなかったのかが甚だ疑問。
バーニーが財産を奪う目的でマージョリーに近づき、殺害に及んだのなら
料理の心得もある彼であれば
自然死もしくは病死を装うことはいくらでもできたはずです。
また、殺人そのものが目的だったとしたら
さっさと殺して姿をくらましていたのではないでしょうか。

おそらく重要なのは
バーニーは善人なのかそれとも悪人なのか、ということではなく
誰が見ても善人だといわれるような人間が
誰が見ても悪人だといわれるような人間を殺したとき、
周囲がそれをどう判断するのか
ということではないでしょうか。
だからこそインタビューの手法を取り入れたのだと思うのです。

人殺しはどう考えてもやっぱり罪。ダメ、ゼッタイ。
それでも、語弊を恐れずに言えば
誰からも忌み嫌われ憎まれている人間が殺されて
一体、誰が悲しみ、誰が困るのか。

喜んでいる人だっていやしないか。
ならば、そもそもバーニーの行為は罪と呼べるのか……

いやいや、みんなが喜ぶからって人を殺してもいいわけないだろう。
たとえどんなに悪人だろうとも、ひとの命は等しく同じ。
問答無用で殺人は罪。法の前には倫理がある……

てな具合に、バーニーの存在自体が
あたかもサンデル教授の意地の悪い設問のように
あきらかになにかが釈然とせず、答えを探す前に
そもそも問題はなんなのかを問いかけてくるのです。

コメディという表面上の体裁が
まるでバーニーのキャラクターそのもの
のようで素晴らしい作品でした。
しかも、事実って。事実って。
しんどいわ。





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