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恋の罪

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(2011年/日本 144分)
監督・脚本/園子温
出演/水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉、津田寛治、大方斐紗子

概要とあらすじ
「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」の鬼才・園子温監督が、水野美紀、冨樫真、神楽坂恵を主演に迎え、実在の事件をもとに描く愛の物語。21世紀直前に起こった、東京・渋谷区円山町のラブホテル街で1人の女性が死亡した事件を軸に、過酷な仕事と日常の間でバランスを保つため愛人を作り葛藤(かっとう)する刑事、昼は大学で教え子に、夜は街で体を売る大学助教授、ささいなことから道を踏み外す平凡な主婦の3人の女の生きざまを描く。(映画.comより)


園子温のSはドSのS。

この作品は、有名な「東電OL殺人事件」をベースにした物語です。
先日(2012年11月7日)、この事件の犯人として
15年間拘束されていたネパール人のマイナリさんの冤罪が確定し、
無罪判決を受けました。
このマイナリさんの視点からの映画も観てみたい気がします。

園子温監督は極端な(過激な?)描写が持ち味ですが
実際の事件を扱う場合には
『冷たい熱帯魚』でもそうであったように、
意外にも(失礼か?)多くの取材を重ねて脚本へ反映させています。

『恋の罪』に登場する女性の中で
事件の被害者である「東電OL」を最も直接的に反映させているのが
大学助教授の尾沢美津子(冨樫真)です。
裕福な家庭に育ち、役職に就き、金に困っているわけではないのに
夜は売春をしている。しかも金額は5,000円。これは事実だったようです。
在籍していたSMクラブは「マゾっ娘宅配便」。
(映画では「魔女っこ俱楽部」)
拒食症で身体はガリガリだったという証言もあるようで
冨樫真をキャスティングした根拠のひとつとなっているのではないでしょうか。
道に座り込んで小便をするという奇行に走ることもあったそうです。
(このエピソードは後半の菊池いずみ(神楽坂恵)の行為に投影されているのかと)

本来なら、「東電OL殺人事件」を題材として映画を作るときに
この大学助教授のエピソードを掘り下げて描けば十分でしょう。
しかし、この作品では実在の人物がモデルとなった大学助教授のほかに
退屈な日常を過ごす作家の妻、菊池いずみ(神楽坂恵)と
事件を追う刑事、吉田和子(水野美紀)という3人の女性が登場します。
おそらくこれは、大学助教授の話だけにしてしまうと
「そういう変な人がいたとさ」と片付けられてしまうのを避けるために
つけ加えたとしか思えません。
なにしろ、「普通の人間が日常的に抱えている狂気」をさらけ出すのが
園子温なのですから。

園子温監督はインタビューで
「前作の『冷たい熱帯魚』が“油ギッシュな男の映画”だとしたら、
 今回の『恋の罪』は“大胆な女の映画”。
 大人の女性の映画を撮ってみたかったんですよね」

と、語っています。また、
「男性目線で映画を撮らないようにしようと決めたんです。」
とも、おっしゃっておられまするよ。

……んが、しかし……僕が感じた限りでは
メチャクチャ男目線の女性像でしたよ!
(男の僕が言うのもなんですが)

普段は貞淑な妻、普段は仕事に真面目な女性に対して
「本当はヤリたくてたまんねんだろ〜?」というのは
昔から綿々と続く男の願望の典型でしょう。
性的抑圧に耐えて日常を送っている女性が
いつしか心の闇に触れて男を漁るというのは本当に女性心理なのでしょうか。
男にとって女とは「永遠にわけのわからない生きもの」ですから
園監督が女性を描ききれなかったとしても
致し方ないのかもしれませんが
「男性目線で撮らないようにした」といわれちゃうとねぇ…
本当の自分をさらけ出す手段がセックスなのはいいとしても
それなら、男に激しく突かれるだけでなく
バイブやディルドを使ってもいいでしょう。
せめて、レズシーンは入れてほしかった!

詩を原動力に発想するのは園作品ではおなじみですが
この作品では、田村隆一の詩『帰途』カフカの小説『城』
物語を進める重要なモチーフになっています。
(タイトルの『恋の罪』はマルキ・ド・サドから)

「言葉なんか覚えるんじゃなかった」という『帰途』の一節が繰り返し登場し、
犯行現場の壁にも書かれていた「城」は
「みんな、城の周りをぐるぐる回っているいるだけで、
 どうしても城にたどり着けない」という場所であると。

これは「定義」「本質」というふうに捉えていいでしょう。
ものすごーく陳腐な表現をすれば「自分探し」ですな。
(嫌な言葉だね「自分探し」って)
「定義」という殻に閉じ込められた「本質」は
つかんだと思った瞬間に手から離れていってしまう。
それでも「定義」から逃れ、あくまで「本質」を探し求めるのが
園監督がずっと作品で表現してきたことでしょう。

しかーし! 「言葉なんか覚えるんじゃなかった」というわりには
「言葉」=「説明」だらけです。
いや、「言葉」だけでなく「記号」にも頼りっぱなしです。
とくに菊池いずみ(神楽坂恵)のシーンはセリフも演技も
まるでコントのようでした。
いずみがモデルにスカウトされ、なしくずしにAV出演をする場面は
いくらなんでもありきたりで古すぎます。
いまや、AV女優がグループで人気アイドルになるというのに、
だまされてAVに出演してしまうシチュエーションは
やはり一昔前の男の幻想といわざるを得ません。
(スーパーでいずみが売るソーセージがどんどん大きくなっていくのは
 ふざけてて面白いけど)

園作品では定番の、マインドコントロールする教祖役は
大学助教授の尾沢美津子(冨樫真)が務めていますが
この大学助教授の尾沢美津子は心に闇を抱えているというより
四六時中狂っています。だはは。
メイクと衣裳以外はまるで昼夜のギャップなし。
職場である大学キャンパスのベンチに座って
いずみの乳揉んだり、脚触ったり、トイレで生徒とやったりしてたら
全然隠された一面じゃないじゃん! バレバレじゃん!

むしろ、隠された一面を表現していたのは
刑事の吉田和子(水野美紀)でした。
仕事中の男勝りでぶっきらぼうな感じが
女としての別の顔とのギャップを持たせてよかったと思います。

そして、突然登場する尾沢美津子の母(大方斐紗子)!
「売春のほうはうまくいってるの?」
上品で美しい台詞回しでいうところはまさに怪演で、
ベテランとはこういうものか!と思いました。
リンチ作品のような不気味さが漂うテーブルを囲んだシーンは
がぜんテンションが上がりましたよ。

やがて、物語は事件の謎解きへと向かうのですが……
なぜ死体を切り刻んで2体のマネキンにくっつけたのか?
壁に「城」と書いたのは誰なのか?
なぜ白いコートの男は首を吊って(吊らされて)いるのか?
疑問だらけです。
そもそも刑事の吉田のシークエンスでも
事件の真相へと近づいている感じがまったくしないし、
園監督にとって事件の真相などどうでもいいことなのですから
もういっそのこと事件の真相には一切触れないでほしかったです。

『愛のむきだし』や『ヒミズ』のように
突飛な設定、過剰な演出でありながら、
役が役者に乗り移ったように感じる作品もあれば
この作品のように、園監督の主張が先行しすぎて
役者が操り人形にしか見えない作品もあり……
いまひとつ「園作品なら間違いなし!」と言えないところも
魅力の一つでしょうかねえ。

ていうか、自分のかみさん(神楽坂恵)のおっぱいを
ほかの男に揉ませて、いたぶられてるのを見たいだけじゃねえの?
この、変態ヤロー!!





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コメント

監督の名前

「園子温」の表記は「温」が正しく、「音」では、ありません。

2013/07/08 (月) 18:11:22 | URL | 園組の者です #- [ 編集 ]

Re: 監督の名前

> 「園子温」の表記は「温」が正しく、「音」では、ありません。
わ! ほんとだ!! 全く気づいていませんでした。。。失礼しました。
他の記事も全て修正いたします。ご指摘ありがとうございました。

2013/07/08 (月) 20:18:21 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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