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塀の中のジュリアス・シーザー

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(原題:Cesare deve morire 2012年/イタリア 76分)
監督/パオロ・タビアーニ、ビットリオ・タビアーニ 脚本/パオロ・タビアーニ、ビットリオ・タビアーニ、ファビオ・カバッリ 撮影/シモーネ・ザンパーニ 編集/ロベルト・ペルピニャーニ 音楽/ジュリアーノ・タビアーニ、カルメロ・トラビア
出演/コジモ・レーガ、サルバトーレ・ストリアノ、ジョバンニ・アルクーリ、アントニオ・フラスカ、フアン・ダリオ・ボネッティ、ビットリオ・パレッラ

概要とあらすじ
「父 パードレ・パドローネ」「サン★ロレンツォの夜」などのカンヌ受賞作で知られるイタリアの巨匠タビアーニ兄弟が、2012年・第62回ベルリン国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞したドラマ。実際の刑務所を舞台に本物の服役囚たちを起用し、シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」を演じることで起こる囚人たちの変化を描き出していく。ローマ郊外にあるレビッビア刑務所では、囚人たちによる演劇実習が定期的に行われており、ある年、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」が演目に選ばれる。オーディションでブルータスやシーザー、キャシアスなどの役が次々と決まっていき、本番に向けて刑務所の至るところで稽古が行われる。すると囚人たちは次第に役と同化し、刑務所はローマ帝国の様相を呈していく。(映画.comより



演じる囚人を演じる囚人

タビアーニ兄弟といえば、
僕にとっては『グッドモーニング・バビロン!(1987)』
さらにいえばグレタ・スカッキの美しさなのですが
80歳を越える兄弟監督が撮った新作
『塀の中のジュリアス・シーザー』を観てみたいと思った動機は
巨匠監督の経歴とは関係なく、
雑誌の紹介記事を読んでのことでした。
記事を斜め読みした僕はピンと来たのです。
これは、ものすごいドキュメンタリーに違いないと!

演劇実習で「ジュリアス・シーザー」を演じることになった
刑務所に服役中の実在の囚人たちが
演技に喜びを見つけ始めたと思ったら
役を忘れてケンカを始めたり、
やってらんねえぜと芝居をやめる奴が出たりしながら
他人を演じることで少しずつ本当の自分の姿に向き合うようになる過程を
カメラが冷徹にあぶりだす……
というような展開を予想していたのですが
どうも、違う……なんか、おかしい。
あきらかに計算された照明……
あきらかにキューがかかってフレームインしてくる囚人たち……
会話のシーンで何度も切り返すカメラ……
こ、これは、ドキュメンタリーじゃない!!

この作品は、
「ジュリアス・シーザー」の舞台を演じることになった囚人たちが
練習を重ねていざ本番に到るまでを描いたドラマを
本物の囚人たちが演じている
という
非常にややこしくもまぎらわしいフィクションなのです。
先入観とは恐ろしいもので、
すっかりドキュメンタリーだと思い込んで観ていた僕は
しっかりした画面の構図や囚人たちの演技をみて
うまいこと、撮ってるな〜なんて、ちょっと感心していたくらいです。
これぞ、マインドコントロールの恐ろしさ!
(ちがう、ちがう)

さすがに途中でフィクションだと気づいたわけですが
気づいたら気づいたで、これまたややこしい。
登場するのは、たしかに本物の囚人たちなんだけれども
「ジュリアス・シーザー」の稽古をするうちに
実生活がオーバーラップして動揺したり、
普段の刑務所暮らしの遺恨がわいてきて取り乱したりするのは
演技なのです。
ブルータスを演じてたら、昔の友達を思い出してしまうという
囚人を演じている囚人なのです。

このようなメタ構造というか
クラインの壺にメビウスの輪を巻きつけたような仕掛けを
面白いと言えばそうかもしれませんし、
演技をしている囚人たちにとっては
自分の置かれた状況を演じることに
意義を見出す人もいるのかもしれませんが
観客としては、どういう視点で観ればいいのか戸惑ってしまいました。
このようなややこしい設定にすることによる効果が
どれほどのものなのか疑問です。

オープニングとエンディングで、
「ジュリアス・シーザー」を刑務所に鑑賞するためにやってきたお客たちが
立ち上がって拍手をする
のも
ドキュメンタリーなら、素晴らしいといえるものの
フィクションで演出されたのであれば
なんだか、むず痒くなるばかりで、まったく感動を呼びません。
もしかしたら、勝手にドキュメンタリーだと思い込んでいた僕に
問題があるのかもしれませんが
構成の仕方は、むしろドキュメンタリー的で
ドラマにグッと感情移入するようには作られていません。
映画.comの紹介文には
「囚人たちは次第に役と同化し、刑務所はローマ帝国の様相を呈していく。」
とありますが、そんなサスペンスな展開にはなりません。
なにしろ、普段の彼ら(の演技)と
「ジュリアス・シーザー」を演じているときの彼ら(の演技)に
たいした差がないんですから。

「本物の囚人たち」なんてものは
サイドストーリーとしてあっても構わないけど
普通に役者を使って、普通にドラマとして
作ったものを楽しみたかったよ。





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