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暗闇から手をのばせ

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(2013年/日本 68分)
監督・脚本/戸田幸宏 撮影/はやしまこと 編集/坂本久美子 美術/竹内悦子
出演/小泉麻耶、津田寛治、森山晶之、管勇毅、松浦佐知子、ホーキング青山、モロ師岡

概要とあらすじ
グラビアアイドルで女優の小泉麻耶が、障害者専門のデリヘル嬢を熱演したドラマ。「楽そうだし、体が動かないから怖くなさそう」という軽い動機で障害者専門のデリヘル業界に飛び込んだ沙織は、全身タトゥの入った進行性筋ジストロフィー患者、自らの障害をネタに本番行為を要求する常連客、バイク事故で自由を奪われ殻に閉じこもる青年といった客たちに出会い、衝撃を受ける。しかし「それでも生きていく」ことを選んだ男たちに接するうち、沙織のなかにある変化が訪れる。NHKの番組などでディレクターを務めてきた戸田幸宏監督の長編映画デビュー作。第23回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター・コンペティション部門でグランプリを受賞した。(映画.comより



ホーキング青山がいてよかった

本作のセリフのなかにもあるように
日本全国に18歳以上の在宅身体障害者は348万人いるそうです。
街で見かける車イスの人たちの何百倍もの障害者が
家の中に閉じこもっているわけです。
それはそもそも外出が困難な身体だったり、
外出できるけれども、嫌がっていたりとさまざまでしょうが
近しいひとに障害者がいない限り
その実態を知るのはなかなか難しいものです。

『暗闇から手をのばせ』は障害者の性に焦点を当てた作品です。
もちろん、348万人の障害者のすべてが男性ではないはずですが
障害者だって性欲があってしかるべき。
同様に障害者の欲望を扱った
『おそいひと』はハードな作品でしたが
とくに性の問題に特化したこの作品には高い期待を持っていました。

障害者専門のデリヘル「ハニーリップ」の店長・津田(津田寛治)
まだ誰も手をつけていない市場に目をつけて
儲けようとしています。
かたや新人デリヘル嬢の沙織(小泉麻耶)
「楽そうだし、体が動かないから怖くなさそう」という理由で
普通の(健常者相手の)デリヘルから移ってきた女です。
最初に設定された、このふたりの動機の軽さが
僕にはとても好ましく思えました。
彼らは需要と供給のバランスに従って行動しているだけで
むしろこのような軽さに、
障害者に対する差別や偏見がないように思えるのです。

まず最初に、身体にタトゥのある進行性筋ジストロフィーの男に
全身リップを施すシーンから始まり、
おお、なかなかいいじゃないかと好印象でした。
その後登場する客のホーキング青山の演技が最高で
自虐がひとまわりして、達観しているような態度がさすがです。
あきらかに小泉麻耶がホーキング青山のアドリブに
笑ってしまっているシーンもありましたが
考えてみれば、この作品に登場するなかで
本物の障害者がホーキング青山だけなのは残念です。
せっかくのホーキング青山の説得力が悪目立ちしています。

いやいや、そんなホーキング青山の魅力を語るよりも問題なのが
「障害者ってそんなにヘンかな?
 知らない男のち○こしゃぶってる君らのほうがヘンじゃない?」

なんて、いきなりホーキング青山に
この作品の根幹となる部分を語らせていることです。
これは物語を通じて観客が感じとるべきもので
自己紹介のようにあらかじめセリフでいうようなことではありません。
この時点で、この作品の先行きに真っ黒な暗雲がたちこめました。

その後も、ホーキング青山が登場するとシーンに味わいが増し
「車イスで、カーセックスしようよ」という一言も
とても粋なジョークで笑えるのですが
どんどん気持ちが障害者よりに近づいていく沙織に
どんな心理的な変化があったのかは、まったく描かれません。
沙織というキャラクターは、この作品が伝えるべき葛藤や気づきを
最も体現しなくてはいけないはずですが
ただ作品のテーマを代弁するだけの存在になってしまっています。
忘れたネックレスを取りにいった沙織が
突然キレたようになるのも、彼女がどういう心理なのかわかりません。
彼女がネックレスを忘れていったのは洗面所なのだから
せめて、洗面所にいる沙織がリビングから聞こえてくる会話を聞いて
辛抱たまらなくなったという描写は必要でしょう。

沙織が普通のデリヘルから障害者専門のデリヘルに移ってきた理由には
ストーカー(モロ師岡)の存在があったのかもしれませんが
障害者はヘンじゃない、健常者もヘンだと言いたいのなら
沙織のバックボーンのほうをより丁寧に描くべきだし、
金のためにち○こをしゃぶるだけだった沙織が
心境を変化させていく過程をしっかり描く必要があると思います。
健常者が持つ異常さを描くことで、
障害者の率直さが逆に浮き彫りになると思うのですが。
あまりにも優等生的な沙織の行動が
問題の本質をかえってわかりづらくしています。

店長の津田の描き方も物足りません。
彼は悪い奴ではなさそうですが、
女に身体を売らせて商売していることには変わりありません。
おそらく津田は、彼独自の障害者観を持っているはずで、
津田が抱える複雑な感情を描くことができれば
もっと味わい深いものになったような気がします。

監督と脚本を務める戸田幸宏が主張したいことを
登場人物を通じて言わせたような作品で、
かなり客観性に欠けていると言わざるを得ず
また、その主張の仕方もかなりせっついている印象で
こんなことではデリヘル嬢から「慌てんぼさんねぇ」と言われますよ。
(上映時間が68分と短いのはなにか制約でもあったんだろか)

デリヘル嬢という役柄なのに、
頑なに乳首を隠そうとする小泉麻耶が興醒めだったのも含めて
せっかくいい題材だったのに、もったいないなあという印象です。
劇場公開を逃してしまったのですが
同様に障害者の性を扱った『セッションズ(2013)』
俄然観たくなりましたとさ。





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