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新しき世界

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(原題:新世界 New World 2013年/韓国 134分)
監督・脚本/パク・フンジョン 撮影/チョン・ジョンフン 編集/ムン・セギョン 音楽/チョ・ヨンウク 美術/チョ・ファソン
出演/イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン、パク・ソンウン、ソン・ジヒョ、チェ・イルファ

概要とあらすじ
「ラスト・プレゼント」のイ・ジョンジェ、「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシク、 「甘い人生」のファン・ジョンミンが豪華共演し、韓国で470万人を動員した大ヒット作。韓国最大の犯罪組織に潜入捜査して8年がたつ警察官ジャソンは、自分と同じ中国系韓国人で組織のナンバー2であるチョン・チョンが自分に対して信頼を寄せていることを知り、組織を裏切っていることに複雑な思いを抱く。しかし、警察の上司カン課長の命令には従うしかなく、葛藤する日々を送っていたある日、組織のリーダーが急死。後継者争いが起こる。カン課長はその機に乗じて組織の壊滅を狙った「新世界」作戦をジョンソンに命じるが……。(映画.comより



新しきキャラ、チョン・チョン!

風の噂で評判を聞きつけた『新しき世界』
韓国では470万人を動員する大ヒット、
すでにハリウッドでのリメイクも決定しているというわりには
東京都内で2館だけの上映とは淋しい限りですな。
ちなみに、舌の根も乾かないうちに俳優業へ出戻った
水嶋ヒロの『黒執事』はなんと24館……ま、ほっとくか。

『インファナル・アフェア』+『ゴッドファーザー』
という惹句に偽りはないものの、
登場人物たちに血縁関係はないので
『ゴッドファーザー』よりも『アウトレイジ』を推したいところ。
とはいえ、「ゴールド・ムーン」という企業系やくざの
ドンの座を巡る内部抗争には
「朝鮮族」対「華僑」という民族間の対立構造も含まれ、
一筋縄ではいかない人間関係が物語に深みを与えているので
血縁と等しく、またはそれ以上に
身内のつながりを重要視する韓国社会においては
これこそが『ゴッドファーザー』というべきなのかもしれません。

8年ものあいだ「ゴールド・ムーン」に潜入している
警察官ジャソン(イ・ジョンジェ)
組織のリーダーが事故死(?)したことで役目を終えられるはずでしたが
カン課長(チェ・ミンシク)をはじめとする警察の上司たちが
跡目争いを利用して組織を壊滅させるべく目論んで
ジャソンは任務の継続を余儀なくされます。
よく考えれば、潜入捜査官というやつは難儀なもので
潜入捜査官の任務を終えるということは、
自分が潜入捜査官だったことをやくざに宣言するようなもので
任務を終えたからといって、やくざが許してくれるはずもないので
完全に姿をくらましてしまうほかなく
その後も復讐に怯えながら暮らすことになるのですから
もともと割に合わない仕事ですな。

順当に行けば、ドンの座を引き継ぐのは
2番手のスギ理事(チェ・イルファ)になるはずが
スギ理事は人望もなく、なかば隠居状態。
そこで3番手のチョン・チョン(ファン・ジョンミン)
4番手のジュング(パク・ソンウン)というイケイケのふたりが
跡目を継ぐ有力候補となるのです。
このふたりの相反するキャラクターと
人心掌握術の違いが見物
です。

ダークサイドのつぶやきシローみたいなジュング
いつも余裕綽々で、蛇のように相手を威嚇して従わせる
恐怖政治的なやり口。
一方、チョン・チョンは持ち前の陽気さで
子分達を可愛がる、まさにガキ大将的な存在です。
真っ白なスーツにグラサン姿で初登場したときからインパクト大で
このキャラは演じてて楽しいんだろうなあ、なんて思っていましたが
食事の席で立ち上がって子分に酒をついでやったり、
飛行機の搭乗口に向かうときに振り返って可愛く手を振ったり、
会議中にジュングに凄まれたあとでウインクしてみせたり、
どう考えても憎めないキュートな立ち振る舞いは
今後語り継がれるかもしれないほど魅力的なキャラなのです。

とはいえ、ただ気のいいだけのガキ大将が
ドン候補にまで登り詰めるはずもなく、
チョン・チョンは、このようなチンピラキャラにありがちな
猪突猛進型の単細胞ではなく、ちゃんと頭もキレる人間であることは
子分達を前にしたときとはうって変わった、
弁護士と会話するときにみせる思慮深い表情でわかります。

ジュングとチョン・チョンのいがみ合いの火に油を注ぐために
チョン・チョンに接触してきたカン課長でしたが
その賭けの代償として、警察のPCがハッキングされ、
連絡係のシヌ(ソン・ジヒョ)の身元がばれてしまいます。
捜査官ジャソンの囲碁の先生だったシヌのことを
僕はすっかりジャソンの奥さんだと思い込んでいたので
ボコボコにされてドラム缶に入れられたシヌを見て
「ああ、赤ちゃんができたばっかりなのに……」なんて考えてましたが
なんと、別人……似すぎでしょ。
こればっかりはミスキャストかと。
(同じ病院で整形したんだろ、なんて勝手なことをいうやつは誰だ!)

潜入捜査官ものの面白味は、やっぱり正体がバレるかどうかというところ。
スクリーンの中で繰り広げられる騙し合いの真実を
観客だけが知っているというのが魅力なのです。
かと思うと、観客もいっしょに騙されていたりするので楽しいのですが
シヌ入りのドラム缶を囲んだチョン・チョンと捜査官ジャソンの
ついにバレた! いや、全部はバレてない……
どこまでバレてる? ええっ、そっち!? それはオレも初耳っ!

という緊張感溢れるやり取りが素晴らしい。
嘘がばれたときは自分から喋らない、というのは実生活でも使えるかも。

クライマックスのひとつ、チョン・チョンが襲撃される
駐車場のシーンの迫力も見事でしたが
真俯瞰でとらえたエレベーター内での
チョン・チョン一人対4〜5人の格闘シーン
は名場面でした。

瀕死の状態で病院のベッドに横たわるチョン・チョンが
ジャソンを呼びつけて最後の会話を交わすシーンは
医者が「心の準備をしてください」と言ったあとだったので、
意識あるのかよ! とズッコケるほど都合のいいくだりでしたが
それはともかく、これでジャソンは
警察官ではなく、組織のドンとして生きていくことを決意するのです。
警察のPCがハッキングされた時点で、
チョン・チョンはジャソンの正体を知っていたのですが
本当の弟のようにかわいい「ブラザー」
責めることはできなかった、ということでしょう。
また、カン課長がジャソンを守るために
警官としてのジャソンの記録をすべて抹消したことが
かえって、ジャソンが警官でいなければならない根拠を失わせ
組織の人間として生きていくために好都合だったことが皮肉です。

すっかり忘れていたスギ理事
ジャソンとカン課長の前に現れたときには心地よい驚きがあったし、
最後に一杯喰わそうとしたスギ理事が
逆に一杯喰わされる展開も予想を裏切る見事なものでしたが
ジャソンが組織の一員として生きていく決意をしてから
ラストに向かうまでが冗長でテンポが鈍った印象です。
ここまできたら、腕時計などの細かいエピソードを積み重ねるより
覚悟を決めたジャソンの変貌ぶりを
突き放したように見せて欲しかったところではあります。

ラストの「6年前」というのも
蛇足なような気がしないではありませんが
あきらかにまだ下っ端の服装をしたチョン・チョンとジャソンによる
コミカルなカチコミのあと、タバコに火をつけようとするものの
ぜんぜんライターに火が付かないのは
ジャソンの自然な笑い方をみるに、NGテイクを採用したんじゃないかと
勘ぐってみたくなるのですが、どうでしょうね。

じつはこの作品は『スターウォーズ』よろしく
長い物語の中編にあたるそうで
そのうち、この前日譚と後日譚が作られるかもしれません。
タイトルは「それまでの世界」と「それからの世界」あたりに
なるんでしょうか。
もしそうなったら、「それまでの世界」を観たいな。
チョン・チョンがいるから。





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